「小沢事務所では、こういうのは当たり前になっている」。民主党の小沢一郎幹事長の秘書から公設秘書給与の一部を寄付するよう求められた際の様子について、青木愛衆院議員の公設秘書経験者らは詳細に証言した。このうち一人は「『働いていて(寄付を)強要されるなんて冗談じゃない』という思いがあった。自分から(青木事務所を)やめた」と振り返った。【政治資金問題取材班】
証言者の一人の元公設秘書は、青木氏が一時選挙区としていた千葉12区内で保守系の自治体首長を支援したことをきっかけに政治活動を始めた。05年の郵政選挙で落選した青木氏の地盤を固めてほしいと請われ、青木氏の事務所を手伝うようになった。その後、青木氏は07年7月の参院選に転じて当選。約9カ月後の08年4月、小沢氏の政策秘書に頼まれて青木氏の公設秘書に就任したという。
この元公設秘書によると、秘書就任の決定後に小沢氏の政策秘書から寄付について話があり「最初はもっと手取り額を少なく提示され、3回くらい話をした」という。結局、月10万円寄付することになったが「冗談じゃないという思いがあって」、2回目から勝手に6万円に減額した。
すると、小沢氏の政策秘書から「なぜ決められた額じゃないんですか。青木さんに説明してください」と言われ、青木氏からも「額を上げて(元に戻して)もらえないか」と要請された。これを断ったところ「また小沢氏の政策秘書が出てきて『(民家などに張り出しをお願いする)ポスターの枚数が上がらない』と仕事ぶりに文句を言われた」という。
結局、自ら青木事務所を辞めた元公設秘書は「小沢氏の政策秘書が(青木事務所を)仕切っている。ほかにも寄付金のことで辞めた公設秘書がいる。金で『うん』と言わない人は辞める」と語った。
また、民主党が岡田克也幹事長(当時)名で公設秘書からの寄付禁止を通達した直後の9月29日、小沢氏の政策秘書から携帯電話に連絡があり「『寄付のことで(マスコミなどに)聞かれることがあるかもしれないが自主的、合法的だったと説明してほしい』と言われた」という。10月16日にも「記者が来たら正直に答えておいてください。普通普通に答えておいてください」と連絡があった。
公設秘書として月10万円以上を寄付した別の一人も「小沢氏の秘書から指示された。雇用関係を考えたら『ノー』とは言えなくなる」と明かした。さらに、ほかの元公設秘書がボーナス時に給与の1カ月分を寄付するよう小沢氏の秘書に指示され、寄付をやめたいと申し出ると事務所を辞めさせられたと証言した。
毎日新聞は小沢氏側に(1)なぜ小沢氏の秘書が青木氏の公設秘書の給与についてやりとりしているのか(2)秘書からの寄付について外部から説明を求められた場合の対応を9月下旬に電話で話し合ったか--などと質問。小沢氏の事務所は全質問に対し一括して「そのような事実はない」と答えた。青木氏の事務所は寄付の強要を否定し「総選挙後の9月15日、党より公設秘書からの寄付受領禁止の指導もあり、現在は公設秘書からの寄付は受けていない」と回答した。
==============
寄付者 時期 合計額
(1)男性 04年 150万円
(2)男性 05年 126万円
(3)女性 05年 50万円
(4)男性 07、08年 195万円
(5)女性 07、08年 53万円
(6)男性 08年 28万円
(7)女性 08年 230万円
※金額は1万円未満切り捨て
毎日新聞 2009年11月19日 東京朝刊