トリノオリンピックの閉会式で、日本人唯一の金メダリストとなった荒川静香を男子選手が肩車して行進したのは実に粋な計らいだと思ったが、その肩車をする恩恵に与ったのはいったい誰なのか興味がある。
誰が肩車をするかを抽選やジャンケンで決めたのでないとすれば、自ら買って出たのか、それともそうしたくなる衝動にかられたのか、機を見るに敏であわよくば恋人や婿の座を射止めようという作戦に出たのか、いろいろな選択肢が考えられるが、現象だけ見れば実に微笑ましい。
今だから言うわけではないが、荒川静香の演技はまるで最初から金メダルが決まっていたかのように見事だった。銀と銅に留まった二人がメダルを取ろうとしゃかりきになっていたのとは違って、メダルなど眼中にない、まるでプロのような優美な舞を演じたのだから、観客のスタンディング・オヴェイションも当然なら、金メダルも当然。銀と銅の二人が得点に加算される技術だけに走る点取り虫の醜さを露呈させたのに対して、荒川静香は得点に無関係なイナバウアーを取り入れてひたすら美しく舞うことだけを追求したのが効を奏したのだ。
ところで、金メダリストを肩車するという、金メダル以上の好運を得た男子選手はどこの誰なのか、知っている人がいたらぜひ教えてほしい。