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きょうの社説 2009年11月28日
◎円高・株安進行 成長戦略なき政権への不信
成長戦略を描けない鳩山政権への不信感の表れだろう。急激な円高と株安が止まらず、
「二番底」懸念が現実味を帯びてきた。このまま需要を喚起する政策が示されないなら、日経平均株価はもう一段の下げを覚悟しなければならないだろう。騰勢を強める円相場の行方も深刻だ。藤井裕久財務相は、このところ、ようやく円高進 行をけん制するようになってきたが、以前の円高容認発言がたたって「口先介入」の効果は乏しい。投機筋に本音を見透かされているなら、こちらも目をむくほどの円高局面が来るかもしれない。 鳩山政権の成立以降、私たちは繰り返し、景気対策の必要性を訴えてきた。しかし、鳩 山由紀夫首相はこの期に及んでなお「景気が二番底に陥らないよう対策を早急に講じる必要がある」などと、以前と同じ発言を繰り返している。口先だけで、本気度がさっぱり見えないから、市場に信頼されない。 菅直人副総理・国家戦略担当相は、「デフレ宣言」で弱気ムードをあおりながら、肝心 の景気対策は検討中というチグハグさを少しも不思議に思っていないようだ。見解を示すのみで、後は日銀頼みというのは、そもそも当事者意識が希薄なのだろう。菅副総理は景気低迷の要因として鳩山政権の経済成長戦略が見えないという指摘に対しても「経済の方向性がはっきりしないとの理由がよく分からない。理解が足りないのではないか」と反論したが、理解不足は、明らかに菅副総理の方である。 連日の事業仕分けで、予算削減効果が強調され、国民の目はそちらにばかり向いている 。だが、円高と株安による「国富」の傷みはケタ違いである。景気対策の策定は、事業仕分けよりはるかに重要な最優先課題であることを、改め指摘しておきたい。 これ以上景気を悪化させたら、回復まで長い時間がかかる。国民の支持率が高い鳩山内 閣が、意外にも短命に終わるとしたら、首相の偽装献金問題より経済運営に失敗したときではないか。「鳩山不況」などと言われないためにも、市場の期待にこたえる対策を網羅し、補正予算に組み込んでほしい。
◎介護職に交付金 確かな処遇改善策が必要
人手不足が深刻な介護労働者の月給を1万5千円引き上げる「介護職員処遇改善交付金
」を申請する全国の介護事業所の割合が、10月の制度開始から1カ月を経てなお72%にとどまっている。厚生労働省のまとめでは、北陸の事業所の申請率は福井県81%、富山県80%、石川県77%といずれも全国平均を上回っているが、介護職員の賃金改善を図るせっかくの制度が十分活用されていないのは残念である。この交付金は前政権がまとめた今年度補正予算で制度化された。経済危機対策の一環と して、10月から2011年度末までの2年半、全額国庫負担で支給される。鳩山政権には、こうした臨時的な交付金だけでなく、介護職員のより確かな賃金改善策を求めたい。各事業所も職員の給与体系の改善に一層努力してほしい。 介護職員の処遇改善をめざす交付金制度が設けられた背景には、今年4月の介護報酬の 改定が、必ずしも職員の給与アップにつながっていないことがある。 引き下げが続いた介護報酬は今年初めて3%引き上げられ、政府はこれによって介護職 員の月額賃金が2万円ほどアップすると見込んでいた。しかし、実際には北陸の事業所を含めて赤字補てんに使われるケースが多く、介護職の労働団体の調査では、報酬引き上げに伴う賃上げ額は平均6400円程度というデータもある。 民主党は、介護事業を成長分野の柱の一つに位置づけ、雇用の受け皿として拡大してい く方針を掲げている。介護職員の不足の一因である低賃金を改めるため、政権公約で月額賃金を4万円程度引き上げると約束した。しかし、財源の確保を含めて実現の見通しは立っておらず、交付金制度後の大きな課題として横たわっている。 一方、石川、富山でまだ2割以上の介護事業所が交付金の申請をしていない主な理由と して▽交付対象が介護職に限られ、他の職種の職員とのかね合いが問題▽処遇改善計画書の提出など手続きが煩雑―などが挙げられる。制度に改善余地がないか、政府はさらに検討を加えてもらいたい。
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