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きょうのコラム「時鐘」 2009年11月28日
円高の背景を描く本紙「表層深層」によると、今月14日にオバマ米大統領が東京で行った演説が「くせ者」だったということになる
米国はアジアとの連携を密にするとした演説の中に「アジアへの輸出を増やせば米国の雇用も改善する」とあった。これが、ドル安による輸出増を目指す米国の戦略を明確にしたものだったというのである ドル安とは円高のことである。1ドル90円台で攻防を続けていた円相場は、オバマ演説を境に80円台に突入した。その演説に日本の聴衆は「感銘した」と口をそろえ、大きな拍手を送ったのだった それならそうと、大事なことはその時に指摘してくれと言いたいところだが、政治家も評論家もそしてマスコミも、政治家の発言が経済と密接に関係すると知りながら、オバマ礼賛に流されてしまったのである 「疾風(しっぷう)に勁草(けいそう)を知る」との言葉がある。逆境の時こそ真に強いものが分かるという意味で、14年前の円高不況時によく耳にした。今回の円高の逆風は、政治家の「人気」や「正義」の実態を疑いもせず賛美する、付和雷同の愚を知らせる風になるかもしれない。 |