石原知事、事業仕分けに苦言「日本がつぶれる」

【石原知事会見詳報（２７日）】（１）

　東京都の石原慎太郎知事は２７日の定例記者会見で、同日に最終日を迎えた行政刷新会議の事業仕分けについて、「スーパーコンピューターに２位はない！　１位しかない」「この日本はつぶれる。政府がつぶれるだけじゃない」などと批判した。会見詳報は以下の通り。

　「冒頭１つ私から申し上げます。キャップ・アンド・トレードの全国導入についての提言ですけども鳩山総理が２０２０年までにＣＯ２排出を２５％削減するという意欲的な目標を掲げましたが、これを受けて、国は１１月に副大臣級による「国内排出量取引プロジェクトチーム」を設置して、キャップ・アンド・トレード制度の導入の検討を開始しました」

　「東京都は既にキャップ・アンド・トレード制度の導入を決めておりまして４月からの実施に向けて準備を進めております。全国導入に向けた国の取り組みを評価するとともに、国の制度が東京都の経験を生かしてですね、真に実効性のあるものとなるように、これまでの実績を踏まえた提言を国に向かってすることにしました」

　「この提言で都は、新たに導入すべき制度は自主参加型のものではなくて、排出総量の削減を明確に義務付けるとともに、義務違反に対する罰則を導入するなど国際的にも通用する制度とすべきことを求めております。現に東京は、この制度を発表したためにＩＣＡＰに都市として世界で唯一、参加する資格を得てますが、国が直接執行する国家キャップ・アンド・トレード制度と、都道府県政令指定都市が運営する地域キャップ・アンド・トレード制度の２つをですね、国と地方がともに積極的な役割を果たす制度とすることを提案しているわけであります」

　「都は今後、今回の提言に基づきまして、地方自治体やＮＧＯ、先駆的企業などと意見交換を進めて制度案を充実、強化し、真に実効性のある制度が実現するように国に積極的に協力していく考えであります。詳細についてはこの後、環境局から説明いたします。私から申し上げるのは以上です」

　−−円高が進んでいるが輸出企業や下請けの中小企業の業績悪化で都税収入が減少することになるがどう見るか

　「私は専門家じゃないので相対的なことしか申せませんけどね。やっぱり日本の産業形態というものは、輸出依存が大きいわけですから当然、国全体に大きな支障を来すのは間違いないことでして。一方でテレビなんかで、これから海外に出かける人に円高の問題を聞いて、『これを機会に買い物をいっぱいしてきます』とかいってるけども、経済の流動の中で微々たるものでしかありませんしね。これで政府が介入するのかしないのか、日銀を含めて決めることでありましょうけれども。経済産業の形態から申し上げましても円高は決して歓迎することじゃないことは自明だと思いますな。直接、東京都の財政に響いてくることも間違いないと思います」

　「後ね、鳩山総理が言っているアジアの連帯の中での統一通貨なんていうことなどいろんな問題が出過ぎて、そうにわかに簡単になるものじゃないと思いますがね。こんな問題に付随して思いだすのは、かつて、何年前になりますかな、日本が東南アジアの経営にどんどん乗り出して、東南アジア全体の経済が非常に発展して日本の傘下におさまるんじゃないかという懸念で、アメリカは非常に戦略を立て、ヘッジファンドのソロスなんかが暗躍して東南アジアの経済をつぶしましたね、為替の問題で。あのときに台湾とマレーシアだけが固定相場維持して、変動の為替の中でのダメージを食いとめたのを思いだしますけど」

　「ま、私はそっちの専門家じゃありませんから、これからね、国がこの問題にどういうふうに介入していくのかですね。ただ、今度の政権だけじゃなしに、過去の政権というのは何か大きな戦略というのは立てられなかったですね。国家の意思がどこにあるかわからない。それを踏まえて大きな戦略展開というものをつくり得なかった。その場その場の場当たりでしのいできて。結果ですね、国全体が疲弊してきたわけですけども。特に日本はこういうリセッションの中で、これはあくまでも見なきゃわからんことですけど、来年度の予算がどういう形で編成されるかね。それによったら支出されるお金が還流しにくいような形で使われると。まあ、ばらまきでしょうな。ばらまきというのは還流しませんからね。下手をすると二番底が来るんじゃないかという懸念。これは当然危惧（きぐ）されるんじゃないかという気がしますね」

　−−事業仕分けで、鳩山政権が科学技術立国という言葉と反するように、スーパーコンピューターの予算廃止となった。事業仕分けの段階だがそういった判断が出てることについて、どう思うか

　「これは本当に大事な大事な極めて本質的な問題だと思いますね。仕分けの実態を眺めていて思いだしたのは、何年前ですかね、どういうテレビで見たのかも覚えてないけれども、かなり年配のアナウンサーが出てきて。日本の将来を危惧して非常に悲観的な、日本のメディアというのは非常にマゾヒスティック、自虐的でね、『もう日本はだめなんじゃないですか』という言い方をしたら、その人にしかられた。『日本は大丈夫だ、絶対大丈夫だ』と言い切るから、『どうしてそんな自信がおありなんですか』と言ったら『技術だ。日本がどんどん新しい技術を開発していけば、絶対国力は維持される』と。まさにそのとおりですな」

　「人間の文明の進歩というのは全部技術がもたらしたもの。人間が火を得てから、鉄器時代、石器時代、銅器時代、鉄器時代が来て中世で。磁石を使い大航海（時代に）技術が植民地をヨーロッパにもたらした。それから、グーテンベルクの印刷術そして火薬。これは長く続いた中世を終わらせて近世をもたらし、近代に来て、最後の私たちの現代に至って、原子力とか宇宙遊泳の技術とかね。それからＯＡ機器、コンピューター含めて、そういった３つの非常に中世を変えた技術に酷似した技術によって現代が、今、進みつつあるわけだ。さらにそれがどんどんどんどん進化してるわけです」

　「まあ、そういう点から歴史の文明工学というところから眺めて技術というのは絶対に必要だし、これは大事なもんなんですよ。それをね、何か知らんけど、誰かが『スーパーコンピューターがどうして１位じゃなきゃだめなんですか？　２位でいいじゃない』。…２位はないんだ！　スーパーコンピューターに２位はないの！　１位しかないの！　その１位を獲得して続けようと思ってるときに、ああいう全く文明工学的に○○（『物知らず』を意味する言葉）的なね、誰が言ったか覚えてませんけど」

　「新聞の報道読むと、スーパーコンピューターが何で２位でいいのか。２位はないんです。先端技術というのは２位はないんです。これを歴史の原理というものを知らずにだね、ああいうただ金目を減らせばいいということだけね。国家の本当の原動力というものを阻害するような予算組まれたら、これはこの国はもたないと私は思いますな。ノーベル賞をもらった日本の超一流の学者さんたちだけじゃなしに、この間、遺伝子に関する発見した京都大学の山中君。彼なんかも言ってますが、継続を失ったら技術は全然そこでプツンと切れて挫折する。ノーベル賞学者たちが血相を変えて政府に物を言ったのはごく当たり前のこと。それを斟酌（しんしゃく）しなかったら日本はつぶれる。政府がつぶれるだけじゃない。日本がつぶれますよ」

＝（２）へ続く