「エコ亡国――「地球のため」で日本を潰すな」

エコ亡国――「地球のため」で日本を潰すな

2009年11月24日(火)

世界一の国がなぜペナルティを払うのか

鳩山国連演説「25%削減」の舞台裏(上)

1/7ページ

印刷ページ

 鳩山由紀夫首相は就任直後の9月22日に国連の気候変動首脳会合で演説。地球温暖化への対応策として「2020年に日本は1990年比でCO2排出量を25%削減する」と明言した。合計で世界の総排出量の4割を占める米国と中国が同様の大胆な目標を掲げる気配はまだなく、日本だけが突出した国際公約を掲げて自らを縛った格好だ。

 今、問題になっているのは、この目標を達成できる現実的な可能性と、そのためにはどれだけの負担が必要になるかということ。1世帯当たり年間数十万円の負担増になり、企業の国際競争力も大きく削がれるという見方もある。そもそも、鳩山政権が掲げた数値目標はどのようなプロセスと根拠の下に策定されたのか――。

 櫻井よしこ氏が理事長を務める財団法人、国家基本問題研究所は10月20日に「CO2 25%削減は可能か」と銘打ったシンポジウムを開催した。地球温暖化対策基本法案の提案者の1人である前田武志・民主党参院議員、日本経団連の坂根正弘・環境安全委員会委員長(コマツ会長)、電力中央研究所の杉山大志・社会経済研究所上席研究員の3氏が出席。櫻井氏が進行役を務めた。

(文・構成は谷口徹也=日経ビジネスオンライン副編集長)

国家基本問題研究所理事長、櫻井よしこ(さくらい・よしこ)
 ベトナム生まれ。ハワイ大学歴史学部卒業。クリスチャン・サイエンス・モニター紙東京支局勤務、NTVニュースキャスターを経て、現在フリージャーナリスト。2007年国家基本問題研究所を設立し、理事長に就任。第26回大宅壮一ノンフィクション賞、第46回菊池寛賞を受賞。「異形の大国 中国」、「明治人の姿」、「櫻井よしこの憂国」など著書多数。

 ―― 民主党が非常に意欲的な25%削減案を打ち出しました。鳩山首相が国連で演説され、打ち出した数値目標は「90年比25%削減」。これは2005年比で30%になる。これが日本経済や産業にどのような影響を及ぼすのか。そして世界経済や地球環境問題全体にとってどういう意味を持つのか、改めてディスカッションしてみたいと思います。

 まず前田先生から、そもそもこの案はどのように生まれたか、25%という数字はどのような根拠を持って提案されたかをうかがいます。

 前田 マニフェストにこの数値を載せるに至ったのは、3年くらい前にできた「地球温暖化本部」がきっかけです。去年の通常国会に、「温暖化対策基本法」としてまとめました。

 中間目標としては2020年までに1990年比で25%削減、そして「再生可能エネルギーを2020年までに10%以上」というのを中期目標として掲げました。

民主党参議院議員、前田武志(まえだ・たけし)
1937年、奈良県出身。京大大学院修了。建設省入省。86年衆議院議員に初当選し、4期務める。93年羽田孜、小沢一郎氏らと共に自民党を離脱し、新生党に参加。新進党、太陽党、民政党を経て、98年現在の民主党の結成に参加。2004年参議院議員に初当選。民主党の地球温暖化対策本部の一員として、民主党が2008年から2年連続で参議院に提出した地球温暖化対策基本法案の提案者の1人となった。現在、地球環境国際議員連盟(グローブ・ジャパン)事務総長。

 2050年以降についてはマニフェストに確か「60%以上」と載せています。ですが、2050年で論じるのは、日本にとって“逃げ”なんです。

 というのは、人口がどんどん減っていって、2050年代には9000万人を割っている可能性が高い。今に比べ、4分の1は減るわけです。さらに、技術革新や温暖化対策の効果がありますから、1人当たりの「原単位(=基準量:この場合はCO2排出量)」も落ちてきます。

 2050年以降の目標を立てても実際には全然、減らすことにならない。その点、2020年というのは、本当に、どの程度のことがやれるのか、を問われることになる議論でした。

次ページ以降は「日経ビジネスオンライン会員」(無料)の方および「日経ビジネス購読者限定サービス」の会員の方のみお読みいただけます。ご登録(無料)やログインの方法は次ページをご覧ください。






Keyword(クリックするとそのキーワードで記事検索をします)


Feedback

  • コメントする
  • 皆様の評価を見る
内容は…
この記事は…
コメント33 件(コメントを読む)
トラックバック


このコラムについて

エコ亡国――「地球のため」で日本を潰すな

鳩山由紀夫首相は就任直後の国連演説で「CO2排出量の1990年比25%削減」を明言、その達成目標を2020年とした。環境技術のリーダーとして、世界のトップを走り続けることは日本にとって悪いことではない。しかし、省エネが進んだ日本が破格のコストをかけることに経済、政治、技術的な合理性はあるのか。目標達成のため“削減後進国”に支払うことになりそうな排出権の対価を含む国民負担に日本経済は耐えられるのか。多面的な議論を通じて「エコロジー=正義」という単純な構図を検証する。

⇒ 記事一覧

ページトップへ日経ビジネスオンライントップページへ

記事を探す

  • 全文検索
  • コラム名で探す
  • 記事タイトルで探す

編集部よりお知らせ

日経ビジネスからのご案内