事業仕分けの政治の中で、繰り返しマスコミで言われるのは、「今回初めて予算編成の過程が国民の前にオープンにされた」とか、「これまで霞ヶ関の内部で隠されていた無駄な事業が初めて透明にされた」という言説である。この「公開性」の説得が強力に効いて、国民大衆の事業仕分けへの支持率がハネ上がる結果となっている。事業仕分けの報道がされる度に、ニュース番組のキャスターやコメンテーターから「史上初めて透明化される国の予算編成」の意義が強調され、念押しされている。細部に問題はあっても国民の前にオープンにすることに意味があるという結論で総括され、それが世論の主流に収まっている。私はこの「公開性」の説得に疑問を抱く一人であり、納得できずに首を傾げる少数派である。この事業仕分けの「公開性」と「透明性」の意義の強調には少し嘘がある。何故なら、今回の仕分け作業で財務省から「無駄」だとして俎上に上がった問題事業は、決してこれまで一度もマスコミが報道したことのない情報ではなかったからだ。仕分けられた事業の中で、そして仕分け場面がテレビ報道された案件の中で、これまでマスコミが取り上げていたものは数多くあり、われわれがすでに見知っているものも少なくなかった。予算削減が当然と判断される事業においては、むしろ、従来からワイドショー等で問題が指摘されてきたものの方が多かったのではないか。
報道番組で「史上初の予算編成公開」の画期的意義が強調されたときは、本当は、われわれはその問題事業を過去に見知っていなかったかどうかを検証する必要があるのであり、そこで安易に、マスコミの言う「史上初の公開」の意義称揚や総括評価に頷いてはいけないのではないか。本当に、これまで国民が全く知らなかった「官僚の無駄遣い」の新事実が抉出されたのなら、それこそマスコミは大騒ぎして報道していただろう。事業仕分けで対象にされ、ニュース番組で焦点を当てて紹介されたものは、基本的に既出の問題ばかりで、特に目新しいものはなく、また新聞紙上で仕分けされた一覧表を見ても、特に大きく注目させられるものはない。削減金額の積み上げも目標の３兆円からははるかに遠い水準に止まっている。積み上げ幅が小さい問題について、マスコミと仕分け人は、金額が問題なのではないと言い訳するか、横串を刺し通せば大きくなるなどと言うが、そもそも仕分けの基準そのものが明確でなく、そして最初に結論ありきの財務省主導の仕分け（＝財務省査定）である以上、４４７事業以外に横串が刺し通されて３兆円超の金額が積み上がる保証はどこにもない。選挙前、民主党は２０７兆円の国家予算の１割の２０兆円を官僚の無駄の排除で財源創出できると大法螺を吹いていた。それが全く根拠のない票目当ての選挙トークであったことが、今回の事業仕分けの政治で明らかになったと言える。
蓮舫も枝野幸男も仕分けの政治寸劇の役者であって、財務官僚の書いた台詞を読んでいるだけなのだ。行政の無駄の問題については、これまで、特に民放テレビの政治番組を中心に、繰り返し繰り返し様々な事例が紹介されてきて、天下り官僚の待遇だとか、地方のハコモノや道路だとか、公益法人や独立行政法人の重複だとか、この２０年間、そうした報道は限りなくされてきた。これらは、全て財務官僚が報道ネタとしてテレビや新聞に撒いている意図的な政治情報であり、マスコミ記者が主体的に追跡調査して取材したものは一つもない。財務官僚が「国民の怒り」の世論を喚起して、省庁の事業の概算要求を抑制したいときに、世論を味方につけるために新聞社と放送局に「無駄の事例」として情報を流すのである。例えば、テレ朝のテレビタックルとか、ＴＢＳの朝ズバなどが放送してきたシリーズが典型的だが、これらの番組で告発された「公共工事の無駄」が、テレビ局報道部の努力や成果によるものでないことは誰でもわかる。朝日や毎日の政治部が、記者クラブで官僚に記事ネタを提供してもらって紙面を埋めているように、テレ朝やＴＢＳの報道部もまた、財務省から「無駄特集」の放送ネタを仕入れ、財務官僚の指示どおり撮影編集して「特集」を制作していただけである。すなわち、従来はテレビの政治番組でやっていた「無駄叩き」を、手法を変えて政治家と官僚を入れた人民裁判の形式に組み直し、直接に財務省査定と国民世論を結合させる仕組みを作ったのが、今回の事業仕分けの政治に他ならない。
官僚への国民の憎悪を官僚自身が焚きつける。ハコモノの無駄を半ば戯画的に取り上げて叩くこれまでのテレビ報道の「無駄叩き」のプロパガンダは、新自由主義系の財務官僚が裏で手を回してやっていた世論操作の政治であり、ガス抜き目的のマッチポンプだったのではないか。財務省の丹呉泰健は「構造改革の申し子」と呼ばれた改革派官僚で、小泉政権時代に竹中平蔵の腹心として首相秘書官の要職で動いていた男である。社会保障費を年間２２００億円削る「聖域なき構造改革」は、この原理主義者の手で実行されていた。小泉純一郎と竹中平蔵は、「小さな政府」を目指すと言いつつ、実際には官僚の浪費構造には一切手を触れず、公益法人の整理統廃合や天下りの禁止制限など一顧だにすることなく、官僚機構の既得権益は固く守ってやり、逆に肥え太らせてやりながら、一方でマスコミを使った世論操作の空中散布を駆使し、官僚に対する敵視と憎悪の大衆感情を煽りまくった。その巧妙な政治詐術を成功させ、官僚を国民の敵にして、「小さな政府」への国民的支持を取り付け、そして、その支持を社会保障予算の削減や地方交付税の削減の政治に利用したのである。そのとき、一連の小泉改革の裏で立ち回り、財務官僚がプロパガンダ用に摘発する「行政の無駄」を洗い出す事務作業をやっていたのが、代理店である「構想日本」と加藤秀樹に他ならない。加藤秀樹と丹呉泰健にとっては、今回の事業仕分けは小泉構造改革の延長であり、それが再加速された政治場面にすぎない。今回もまた、地方の赤字バス路線や離島航路の補助金を削減するエネルギーに、国民の官僚への憎悪をスリ替えて利用している。
こうした、構造改革再版の政治ショーが、国民の心を捉え、高い支持率となり、ポピュリズムの政治の成功として結果するには、単に国民の中にある官僚に対する憎悪や憤怒の感情だけでなく、もう一つ別の積極的要素に注目する必要がある。それは蓮舫の美貌と容姿の説得力である。ビューティーカリスマの威力。仕分け人の中心人物である蓮舫の美的カリスマが、人々の心を捉え、事業仕分けの政治劇の興業を大繁盛に導いている。昨日（11/26）は、遂に元グラビアアイドルの脚線美を惜しげもなく報道カメラの前に披露するという大胆なパフォーマンスに挑戦、世の中の目を釘づけにして堪能させていた。美しく、弁の立つ蓮舫。テレビを見ていると、満員の仕分け会場にやってきた観客の一人が、正直に、「蓮舫さんを見に来ました」と言っていた。テレビに映る蓮舫の実物を見に、はるばる市ヶ谷の印刷局体育館に足を運んできたのだ。「女優」の蓮舫を間近に見て、その高齢者の男性は満足そうに動機と感想を漏らしていた。もし、これが蓮舫ではなくルックスバッドな片山さつきだったら、一体どうなっただろうと想像する。おそらく、事業仕分けの政治ショーは成功せず、仕分けの手続きの乱暴さや財務省の腹黒い思惑ばかりが透けて見え、片山さつきの国民を見下した横柄な説明態度にブーイングの嵐が起こっていただろう。満員の集客など無理で、週刊誌に悪口記事が載り、事業仕分けの政治的正統性は根底から揺らぐ事態に陥っていた可能性がある。政治ショーは一発勝負であり、誰が主演女優を張るかで成否が決まる。美と弁のカリスマ蓮舫が活躍して大衆を魅了する絶好の舞台だった。テレビの政治の説得力は、言葉よりも容貌だ。
渡辺治が、「世界」１２月号の『新自由主義転換期の日本と東京』で、民主党の実働部隊の議員たちについて、きわめて幻想的な楽観論で捉えてしまったのは何故だろうか。おそらく、渡辺治はこの論文を１０月初旬頃に書いたのだろう。思い起こされるのは、毎日新聞が衆院選の立候補者に質問して回答結果を公開したアンケート調査（えらぽーと）である。８月の選挙戦の最中に民主党候補の回答を眺め見たが、そのときの印象では、渡辺治が言うように、候補者たちの顕著な小泉構造改革離れが確認できる内容になっていた記憶がある。民主党も下から変わるのだろうかという印象を受けたのは事実だ。アンケートの中に、「小泉純一郎元首相が進めた構造改革をどう評価しますか」とか、「労働者派遣法について、製造業への派遣を禁止すべきだと考えますか」 とかの設問があり、新人候補の大半が「（構造改革を）まったく評価しない」と答え、「（製造業派遣を）禁止すべきだ」と答えていた。それからまた、石川２区で森喜朗を僅差に追い詰めた新人議員の田中美絵子が、「議員に当選したら非正規と格差の問題に取り組みたい」という趣旨の発言をしていた場面も印象深い。選挙の間、民主党の候補者たちは、人が驚くほど強烈な反新自由主義の立場に寄り、格差是正や反貧困の政策論を人前で吐いていた。本来的に新自由主義の政党でありながら、新自由主義の色を薄めて弱める擬態の努力をし、選挙が終われば元の素肌を露出するように変身したのだ。要するに、集票のために正体を隠して有権者を騙したのである。この状況を見て、有権者一般だけでなく、政治学者の渡辺治が騙されてしまったというのが事実だろう。民主党の実働部隊の議員の中で、社民や共産と連携して反貧困の政策の実現に動いている者などいない。福田衣里子を別にして。
事業仕分けの政治の中で、繰り返しマスコミで言われるのは、「今回初めて予算編成の過程が国民の前にオープンにされた」とか、「これまで霞ヶ関の内部で隠されていた無駄な事業が初めて透明にされた」という言説である。この「公開性」の説得が強力に効いて、国民大衆の事業仕分けへの支持率がハネ上がる結果となっている。事業仕分けの報道がされる度に、ニュース番組のキャスターやコメンテーターから「史上初めて透明化される国の予算編成」の意義が強調され、念押しされている。細部に問題はあっても国民の前にオープンにすることに意味があるという結論で総括され、それが世論の主流に収まっている。私はこの「公開性」の説得に疑問を抱く一人であり、納得できずに首を傾げる少数派である。この事業仕分けの「公開性」と「透明性」の意義の強調には少し嘘がある。何故なら、今回の仕分け作業で財務省から「無駄」だとして俎上に上がった問題事業は、決してこれまで一度もマスコミが報道したことのない情報ではなかったからだ。仕分けられた事業の中で、そして仕分け場面がテレビ報道された案件の中で、これまでマスコミが取り上げていたものは数多くあり、われわれがすでに見知っているものも少なくなかった。予算削減が当然と判断される事業においては、むしろ、従来からワイドショー等で問題が指摘されてきたものの方が多かったのではないか。
報道番組で「史上初の予算編成公開」の画期的意義が強調されたときは、本当は、われわれはその問題事業を過去に見知っていなかったかどうかを検証する必要があるのであり、そこで安易に、マスコミの言う「史上初の公開」の意義称揚や総括評価に頷いてはいけないのではないか。本当に、これまで国民が全く知らなかった「官僚の無駄遣い」の新事実が抉出されたのなら、それこそマスコミは大騒ぎして報道していただろう。事業仕分けで対象にされ、ニュース番組で焦点を当てて紹介されたものは、基本的に既出の問題ばかりで、特に目新しいものはなく、また新聞紙上で仕分けされた一覧表を見ても、特に大きく注目させられるものはない。削減金額の積み上げも目標の３兆円からははるかに遠い水準に止まっている。積み上げ幅が小さい問題について、マスコミと仕分け人は、金額が問題なのではないと言い訳するか、横串を刺し通せば大きくなるなどと言うが、そもそも仕分けの基準そのものが明確でなく、そして最初に結論ありきの財務省主導の仕分け（＝財務省査定）である以上、４４７事業以外に横串が刺し通されて３兆円超の金額が積み上がる保証はどこにもない。選挙前、民主党は２０７兆円の国家予算の１割の２０兆円を官僚の無駄の排除で財源創出できると大法螺を吹いていた。それが全く根拠のない票目当ての選挙トークであったことが、今回の事業仕分けの政治で明らかになったと言える。
蓮舫も枝野幸男も仕分けの政治寸劇の役者であって、財務官僚の書いた台詞を読んでいるだけなのだ。行政の無駄の問題については、これまで、特に民放テレビの政治番組を中心に、繰り返し繰り返し様々な事例が紹介されてきて、天下り官僚の待遇だとか、地方のハコモノや道路だとか、公益法人や独立行政法人の重複だとか、この２０年間、そうした報道は限りなくされてきた。これらは、全て財務官僚が報道ネタとしてテレビや新聞に撒いている意図的な政治情報であり、マスコミ記者が主体的に追跡調査して取材したものは一つもない。財務官僚が「国民の怒り」の世論を喚起して、省庁の事業の概算要求を抑制したいときに、世論を味方につけるために新聞社と放送局に「無駄の事例」として情報を流すのである。例えば、テレ朝のテレビタックルとか、ＴＢＳの朝ズバなどが放送してきたシリーズが典型的だが、これらの番組で告発された「公共工事の無駄」が、テレビ局報道部の努力や成果によるものでないことは誰でもわかる。朝日や毎日の政治部が、記者クラブで官僚に記事ネタを提供してもらって紙面を埋めているように、テレ朝やＴＢＳの報道部もまた、財務省から「無駄特集」の放送ネタを仕入れ、財務官僚の指示どおり撮影編集して「特集」を制作していただけである。すなわち、従来はテレビの政治番組でやっていた「無駄叩き」を、手法を変えて政治家と官僚を入れた人民裁判の形式に組み直し、直接に財務省査定と国民世論を結合させる仕組みを作ったのが、今回の事業仕分けの政治に他ならない。
官僚への国民の憎悪を官僚自身が焚きつける。ハコモノの無駄を半ば戯画的に取り上げて叩くこれまでのテレビ報道の「無駄叩き」のプロパガンダは、新自由主義系の財務官僚が裏で手を回してやっていた世論操作の政治であり、ガス抜き目的のマッチポンプだったのではないか。財務省の丹呉泰健は「構造改革の申し子」と呼ばれた改革派官僚で、小泉政権時代に竹中平蔵の腹心として首相秘書官の要職で動いていた男である。社会保障費を年間２２００億円削る「聖域なき構造改革」は、この原理主義者の手で実行されていた。小泉純一郎と竹中平蔵は、「小さな政府」を目指すと言いつつ、実際には官僚の浪費構造には一切手を触れず、公益法人の整理統廃合や天下りの禁止制限など一顧だにすることなく、官僚機構の既得権益は固く守ってやり、逆に肥え太らせてやりながら、一方でマスコミを使った世論操作の空中散布を駆使し、官僚に対する敵視と憎悪の大衆感情を煽りまくった。その巧妙な政治詐術を成功させ、官僚を国民の敵にして、「小さな政府」への国民的支持を取り付け、そして、その支持を社会保障予算の削減や地方交付税の削減の政治に利用したのである。そのとき、一連の小泉改革の裏で立ち回り、財務官僚がプロパガンダ用に摘発する「行政の無駄」を洗い出す事務作業をやっていたのが、代理店である「構想日本」と加藤秀樹に他ならない。加藤秀樹と丹呉泰健にとっては、今回の事業仕分けは小泉構造改革の延長であり、それが再加速された政治場面にすぎない。今回もまた、地方の赤字バス路線や離島航路の補助金を削減するエネルギーに、国民の官僚への憎悪をスリ替えて利用している。
こうした、構造改革再版の政治ショーが、国民の心を捉え、高い支持率となり、ポピュリズムの政治の成功として結果するには、単に国民の中にある官僚に対する憎悪や憤怒の感情だけでなく、もう一つ別の積極的要素に注目する必要がある。それは蓮舫の美貌と容姿の説得力である。ビューティーカリスマの威力。仕分け人の中心人物である蓮舫の美的カリスマが、人々の心を捉え、事業仕分けの政治劇の興業を大繁盛に導いている。昨日（11/26）は、遂に元グラビアアイドルの脚線美を惜しげもなく報道カメラの前に披露するという大胆なパフォーマンスに挑戦、世の中の目を釘づけにして堪能させていた。美しく、弁の立つ蓮舫。テレビを見ていると、満員の仕分け会場にやってきた観客の一人が、正直に、「蓮舫さんを見に来ました」と言っていた。テレビに映る蓮舫の実物を見に、はるばる市ヶ谷の印刷局体育館に足を運んできたのだ。「女優」の蓮舫を間近に見て、その高齢者の男性は満足そうに動機と感想を漏らしていた。もし、これが蓮舫ではなくルックスバッドな片山さつきだったら、一体どうなっただろうと想像する。おそらく、事業仕分けの政治ショーは成功せず、仕分けの手続きの乱暴さや財務省の腹黒い思惑ばかりが透けて見え、片山さつきの国民を見下した横柄な説明態度にブーイングの嵐が起こっていただろう。満員の集客など無理で、週刊誌に悪口記事が載り、事業仕分けの政治的正統性は根底から揺らぐ事態に陥っていた可能性がある。政治ショーは一発勝負であり、誰が主演女優を張るかで成否が決まる。美と弁のカリスマ蓮舫が活躍して大衆を魅了する絶好の舞台だった。テレビの政治の説得力は、言葉よりも容貌だ。
渡辺治が、「世界」１２月号の『新自由主義転換期の日本と東京』で、民主党の実働部隊の議員たちについて、きわめて幻想的な楽観論で捉えてしまったのは何故だろうか。おそらく、渡辺治はこの論文を１０月初旬頃に書いたのだろう。思い起こされるのは、毎日新聞が衆院選の立候補者に質問して回答結果を公開したアンケート調査（えらぽーと）である。８月の選挙戦の最中に民主党候補の回答を眺め見たが、そのときの印象では、渡辺治が言うように、候補者たちの顕著な小泉構造改革離れが確認できる内容になっていた記憶がある。民主党も下から変わるのだろうかという印象を受けたのは事実だ。アンケートの中に、「小泉純一郎元首相が進めた構造改革をどう評価しますか」とか、「労働者派遣法について、製造業への派遣を禁止すべきだと考えますか」 とかの設問があり、新人候補の大半が「（構造改革を）まったく評価しない」と答え、「（製造業派遣を）禁止すべきだ」と答えていた。それからまた、石川２区で森喜朗を僅差に追い詰めた新人議員の田中美絵子が、「議員に当選したら非正規と格差の問題に取り組みたい」という趣旨の発言をしていた場面も印象深い。選挙の間、民主党の候補者たちは、人が驚くほど強烈な反新自由主義の立場に寄り、格差是正や反貧困の政策論を人前で吐いていた。本来的に新自由主義の政党でありながら、新自由主義の色を薄めて弱める擬態の努力をし、選挙が終われば元の素肌を露出するように変身したのだ。要するに、集票のために正体を隠して有権者を騙したのである。この状況を見て、有権者一般だけでなく、政治学者の渡辺治が騙されてしまったというのが事実だろう。民主党の実働部隊の議員の中で、社民や共産と連携して反貧困の政策の実現に動いている者などいない。福田衣里子を別にして。