来春、本学から三人のキー局アナウンサーが誕生する。蓮見孝之さん(TBS)、鈴木奈穂子さん(NHK)、大嶋貴志さん(NHK)である。就職活動を乗り越え、憧れのアナウンサーとなる三人に、華やかなイメージとは対照的な、内定を手にするまでの長かった道のりと今の思いを聞いた。
――アナウンサーを目指すようになったきっかけは。 蓮見 僕はこれといってはっきりした動機はなかったんです。ただ高校時代までずっとサッカーをやってきて、大学に入って何かスポーツ以外のことをやってみたいと思いました。それがアナウンス研究会というサークルだったんですね。二年生あたりからサークルに本腰入れてやるようになって、いろんなところで喋るようになって、こういうのもいいなって。 それから、人に見られる仕事をやりたいって気持ちはもとからあったので、一年の秋に、あるテレビ番組のオーディションを受けて、出演する機会をもらいました。その時、やっぱり自分はこういう世界に行きたいんだなって思いましたし、テレビ業界への憧れがますます広がったって感じですね。 鈴木 私も特にずっとアナウンサーになりたかったって訳ではないんですけど、今振り返ると、高校時代から漠然とマスコミに入りたいって気持ちはあったかなと思います。 でも自分には無理だろうなって思ってたんですけど、二年生の春頃に社会学部のパンフレットをゼミで作ってて、その中で陸上の徳本選手にインタビューする機会がありました。徳本選手のスポーツや陸上に対する思いを聞いて、記事になったものを見たときに、「あっ、この言葉は私が引き出したんだ」と思ったんです。その時インタビューってすごいおもしろいって気づいたんですね。 それまではアナウンサーを「憧れ」としか見てなかったんですけど、この時からスポーツ選手とかにインタビューできるアナウンサーを目指してみようと思うようになりました。 大嶋 僕の場合は小学校のとき、放送委員会に入っていて、自分たちで学校内のイベントを取材して、ゲストを呼んで、週一回番組を放送してました。 僕は委員長だったからキャスターをやらざるを得なくて、でも僕は人前に出るよりは取材をしたり、「こういうのをやりたい」っていう企画をするのが楽しいなって思ってました。アナウンサーというよりは、人と接する仕事をやりたいって気持ちがもともとあったのかもしれないですね。 高校のとき、陸上でインターハイに出たんですけど、同じ大会に出てるのに放送されない種目で、悔しい思いをしました。だから、自分がアナウンサーという伝える立場になって、目立たない、日のあたらないものを見つけて、企画して、取材して、伝える。この全部をやりたいなって思いました。それができるのが、たまたまアナウンサーという職種だったって感じですね。 ――就職活動中つらかったことは。 蓮見 結構「俺が受からなかったら誰も受からないだろう」くらいの自信があったんですよ。でもその分、もしどこか落ちたら絶対崩れていくなと思ってて、この業界でやってけるかなという迷いはありました。 そんな時母親から、父親が昔TBSの下請けの製作会社でカメラマンのアルバイトをしていて、番組のスタッフロールに自分の名前が出てくることが夢だったって話を聞いたんです。それを聞いたときに、「俺にはテレビ業界を目指していい血が流れてる」って思って、アナウンサーになってやろうという気になったんですよね。 鈴木 私は実は一般企業も含めてエントリーシートを百社近く書きました。アナウンサーになりたいんだけど、アナだけに夢中になって他の世界が見えないなんてつまらないと思って、広告、アパレル、化粧品など、ありとあらゆる分野を受けたんです。でもそれは反面、就職が決まらなかったら怖いという気持ちからだったんですよね。 いい意味で言えば、いろんな世界が見たいと思って書いたエントリーシートだったんですが、やっぱりやりたいことはアナウンサーやインタビューだったので、その他の分野は全部一次面接までで落ちてしまいました。この頃は「自分って必要ない人間なのかな」と思ってご飯も食べられない状態でしたね。 でも、それでも就職活動を続けてられるのはアナウンサーになりたいからなんだなって自分の気持ちに気づいて、そしたら前に進めるようになったんですよね。結構もがいてましたよ。 大嶋 各局にアナウンサーの直前セミナーがあって、俺はなかなかそれに通らなかったんです。周りの人よりアナウンサーになりたいって気持ちは強かったと思うんだけど、通らないというギャップに不甲斐なさを感じてました。 その頃は「何で通らないんだろう」ということばかりに執着してて、「自分が何をやりたいのか」が明確じゃなかったんですね。 なので一ヶ月間ブランクをおいて「考えよう」と思いました。そしたら自分はアナウンサーという枠にはまろうとしていたことに気づいて、本当は取材とか企画とかをやりたいんだって思ったんです。 こういう自分の思いを言って通じなかったら駄目でいいやって吹っ切れたら通るようになりましたね。 鈴木 就活ってみんな苦しんでるんだけど、自分の力でいろいろ考えて何か解き放たれた時に内定がついてきたりするよね。「自分は駄目」って思うけど、「それでもいい、駄目でもいいから行けるとこまでいこうよ」って。 ――そのとき支えになったものは。 大嶋 自分で道を切り開いていくにしても、目の前に木がバーッと生えてたらどっちに行ったらいいのかわからないよね。でも周りに先輩や仲間がいて、一緒に道をつくってくれた感じはあるね。 鈴木 一人じゃ絶対に乗り切れなかったと思う。自分だけではどんどん深みにはまってしまうから、その時ひょいと持ち上げてくれるのは仲間だったり、先輩だったり、親だったりするのかな。 大嶋 あと、相田みつをの「ゆっくり歩くことをおそれるな。ただ立ち止まることだけをおそれよ」という言葉に何度も救われました。 就活って自分の思い通りに進まないけど、「自分はこういうふうになりたい」って気持ちがあればゆっくりでもいいじゃないかって、すごく前向きになれる一節だなと思いますね。 ――お互い内定を取れたポイントはどこにあると思いますか。 (蓮見に対して) 鈴木 蓮見君は「アナウンサーになる」っていう気持ちが強くて、そのために陰でいっぱい努力してた。 蓮見 恥ずかしい…。でも夏過ぎたあたりから、自分の弱さってものを知って、「もう体当たりでいくか」って感じになったんですよね。素直になれたっていうのはありますね。 大嶋 蓮見とは一年の頃からクラス一緒なんだけど、自分についてよく知ってるから自分の見せ方がうまくて、こいつは絶対アナウンサーになるなって思ってました。 (鈴木に対して) 蓮見 奈穂子はアナウンサーだけっていうふうになってなかったのが良かったと思うよ。本人はつらかったかもしれないけど、無駄な時間ではなかったと思う。 大嶋 俺もそう思う。アナウンサー受験だけの人ってガツガツしてるけど、奈緒子の場合は飄々としてたもん。そう見せることができるっていいことだと思うよ。 蓮見 力んでなかったところがいいのかな。 (大嶋に対して) 鈴木 OB訪問を誰よりもやって、誰よりも人の話聞いて吸収してたよね。 蓮見 大嶋君は落ちても最後の最後までやり続けてたから、俺すごいと思った。 鈴木 基本的に前向きだよね。あと、OB訪問して聞いてきたことを、変に隠さずにみんなに教えてくれるの。そういう人間性も認められたんじゃないかな。 ――NHKと民放の違いを意識したことは。 大嶋 それは意識せざるを得なかったですね。他局ではなくてなぜNHKなのっていうのがひとつのポイントになってました。 鈴木 向こうは受信料を払ってもらって放送してる局だっていうのをわかってるかどうかを、ところどころで聞いてきたよね。 蓮見 民放はキャラクターが勝負だから、そういうのは結構意識したね。でも「この局駄目だったら、これは俺のキャラじゃない」と、きっぱり踏ん切りがついたっていうのはありますね。それはショックだったけど。 鈴木 NHKは最初地方に行くから、取材して原稿書いたりとか、ある意味記者の要素が求められるのに対して、民放はその分オーラとか機転の良さが重要になってくると思います。 ――アナウンサーという職業の魅力は。 蓮見 スポーツの場合、アナウンサーが無名だった選手の名前を試合中にポッと発声するだけでその人が全国の人に知れ渡るわけで、この一言の重みっていうのがあると思う。 鈴木 いろんな思いをもって生きてる人に会えるっていうところかな。 大嶋 アナウンサーは映像だけでは伝わらないことを、言葉で伝えることができると思います。自分が知ってることを映像につけてあげることによって、視聴者の方がある事に対する見方を変えてくれるかもしれない。これはやっぱりアナウンサーの魅力だと思いますね。 ――入局してからやってみたいことは。 蓮見 バラエティー番組の司会! それからサッカー少年団のコーチをやってるので、実況もやってみたい。やりたいことはいっぱいあるんですよね。 鈴木 スポーツ番組がやりたいけど、情報番組もいいし、いろいろやってみたい。TBSの小倉アナや日テレの馬場アナみたいな、インタビューで相手の良さをうまく引き出せるようになりたいですね。 大嶋 スポーツがやりたい。高校の後輩が陸上やってて、その子の夢がオリンピックに出ることなので、その実況をやりたいんです。 ――就職活動を控える人へメッセージを。 蓮見 Going mywayっていいます。就活中、ほかの人にいろいろ批評されるけど、結局最終的に決断するのは自分だし、働くのも自分だから、自分の納得のいくやり方で内定をつかんでほしいと思いますね。 鈴木 今からでもやりたいことをとことんやってほしい。アナウンサーを目指すのであれば、アナウンサーだけってなるのではなく、自分の好きなことを大切にしながら、自分らしさをつくっていってほしいな。 大嶋 いろんな人との出会いがあってモチベーションアップにもつながるから、スクールに通ったりOB訪問でも何でもいいから、自分からアクションを起こすことも大事だと思います。 |
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