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“演芸の浪花座”ついに閉館「さよなら公演」最終日には名残り惜しむファンら1200人
 「火が消えた訳ではない」いつか道頓堀に寄席小屋が復活することを祈りたい


浪花座「さよなら公演」で最後の挨拶をする芸人たち

 大阪・道頓堀にある“演芸の浪花座”がついに先月31日閉館となった。古いが味のある建物、場内には桟敷席もあるなど昔懐かしい寄席の雰囲気が残る劇場だった。

 26日から始まったさよなら公演には松竹芸能に縁のある芸人らが顔を揃えた。タレントの森脇健児、北野誠、放送作家・新野新。漫才の大御所の夢路いとし・喜味こいし、横山ホットブラザーズ。もちろん松竹芸能のベテラン芸人である横山たかし・ひろし、はな寛太・いま寛大、酒井くにお・とおる、正司敏江・玲児も出演した。15年ぶりに桂春団治も高座に上った。

 最終日の2回公演には名残りを惜しむファンら計1200人が足を運ぶなど大盛況だった。

 「大変、芸人世界として辛いものがありますね。芸人さんは舞台がないとダメやのに…。下は18歳から上は75歳くらいまで…こんな楽屋らしい楽屋はなかった。ひと部屋に下のモンも上のモンもいることで“若手なんかは物見をしながら話さなアカン”とか躾やこなしを勉強できた。ほんまに残念ですわ」

 新野新は芸人を育ててくれる寄席小屋が無くなる寂しさを訴える。

 芸人らしい芸人が少なくなったという北野誠は「昔は客席に借金取りが居るのに気づいて、着物のまま舞台ソデから逃げたりする人や物凄い苦労してても笑える人が多かったですね」と振り返る。「春団治師匠も“劇場入り口から入って誰もワシに気付かんかったら、高座のぼらん”言うて入ったら、切符売り場の女の子がいきなり師匠のこと知らんかって“切符買ってください”とか…。とにかくおもろい話が多かったですわ」と懐かしいエピソードも披露してくれた。

 満員御礼の最終日。朝早くから並んだファンは「小屋がなくなるのは寂しい。ここでするから値打ちあるのに…」と声を揃えた。熱演につぐ熱演で場内から笑いが絶えることはなかったさよなら公演。大トリを務めた敏江・玲児が「前を向いてあったかい笑いで進みます。本日は本当にありがとうございました」とあいさつすると温かい拍手が巻き起こった。

 4月1日からは浪花座の東約50メートルにあるパチンコ屋「四海樓」道頓堀店の4Fに新設されるホールで寄席興行を再スタートさせる。昼間は通常興行、夜間は若手中心の興行になる予定だ。

 浪花座はなくなるが笑いの火が消える訳ではない。いつか道頓堀に寄席小屋が復活することを祈って、松竹芸人の温かい笑いを見続けていきたい。

● 森 俊幸(もり・としゆき) ●
1969年(昭44)9月29日生まれ。大阪市福島区出身。血液型O。身長174センチ。体重80キロ。趣味はお笑い、映画観賞、格闘技観戦、食べ歩き。1994年4月に入社。

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