2009-10-31 円楽死去 
まあ、楽太郎が円楽を二年後に継ぐという話が出た時、「二人円楽がいるのか」などと言われていたが、大方の人は「それまで円楽は生きていまい」と思いつつ口に出せなかったのだよね。
円丈師匠の『ご乱心!』を読んだり、川柳師匠のファンである私としては、まあ円楽、やりたいことは十分やっただろう、と思うばかりである。『笑点』という番組は、一般大衆の間で、必ずしも「落語」に対していいイメージをもたらしたとばかりは言えないものだった。落語家としてうまくなったのは歌丸くらいで、こん平だの木久翁だの小遊三だの、ロクなもんではない。
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自民党がたばこ税値上げに反対するなら、私は自民党員になる。もっとも、入れてくれないかもしれないが。
2009-10-30 新刊です 
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阿井渉介氏がこのようなことを書いている。
先ごろ、夏目漱石財団なるものが設立されようとしました。
結局のところ「漱石」をお金にしようという目論見だったように、見えました。
子孫の内から反発が起きて、頓挫したようで、久しぶりに清清しい思いを味わいました。
しかし、菊地寛作『赤い靴はいてた女の子』に神経を荒蕪されてきた私は、ふと空想しました。
「おれは『坊ちゃん』のモデルになった男の三代目の子孫だ」と称する男が現われて、テレビ局が注目、男の証言を元に番組を作ったら……。
男の祖父は漱石が松山で下宿していた家の隣に住んでいたことがあって、その祖父は漱石のところに出入りして、一緒に温泉に浸かりに行った。漱石は、「お前を主人公に小説を書いてやろう」と祖父に言った。
「と、おれの父はおれに話してくれた」と、男は証言し、テレビ局は男の祖父が漱石の下宿の二、三軒先に住んだことを証明する戸籍を映して見せた。
世間は喝采して、この祖父の生れ在所の石槌山々中に像を作って、碑には『坊ちゃん』のモデル云々の文字を刻んだ。
この像は寒村の観光となり、村に現金をもたらした。
言い出した男は、一躍夏目漱石研究家として売り出し、大学で「漱石論」を講じ始めた。
……といった事態が起きない保証はありません。
それこそ財団でも作って管理すれば、そのような事態が防げるのでは、と薄ら寒い秋の夜の夢を見ました。
『赤い靴』に関して起きていることは、私の夢の中に起きた贋『坊ちゃん』事件をそっくりそのまま現実にしたものです。
本当に気味の悪い現実世界だと思わずにはいられません。
「坊っちゃん」のモデルだと名乗った男は実在する。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%AA%E7%94%B0%E4%BB%B2%E4%B8%89%E9%83%8E
そして関川夏央はこれをもとに漫画を書いて手塚治虫文化賞を受賞している。
阿井さん、失礼ですがあなたは、菊地某が大学教授になったことが妬ましいだけではないのですか。しかしそれは捏造のおかげというより、よくあるテレビ人士の渡世の一つに過ぎないのではありませんか。私はまあ、北海道の五流大学の教授など妬ましくありませんが、都心の一流大学の教授なら妬ましいです。
2009-10-29 速水融は顔が怖い 
上野千鶴子が久しぶりの単著『男おひとりさま道』を出したが、立ち読みして、あほらしいと思った。妻に先立たれた男が悲惨だなんて、昔から分かり切ったことで、まあ編集者の懇請で仕方なく書いたのだろう。
しかし上野の弟子というのは、どうも著書の予告をして遅れることが多い。金田淳子が最たるものだが、千田有紀も遅れた。妙木忍は遅れたというか、博士号が教授会を通るまで待っていたのかな。
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栗原さん、小熊に甘いな〜。その程度の結論を出すのにあんな分量必要ないだろう。
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文化勲章を受けた速水融というのは、間違いなく偉い学者である。梅原なぞと同列にされてたまるか、と思っているかどうか知らないが、この人は顔が怖い。私の中では日銀総裁の速水と混同されていて、速水融のほうがよっぽど日銀総裁らしい顔をしている。学者にも顔の怖い人はいるが、速水融は学者に見えない。政財界のボスにしか見えない。
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停職中でも学会に出られるのか、ヨコタ村上。
http://www.akita-u.ac.jp/eduhuman/ilc/jarees2009/
もっとも停職中とかにかかわりなく、アカデミズムとは決別するとか言いつつよく学会発表をするのだよねこの男は。こうまで一貫性がないというのはある種の病気だと思う。「ジェーナリスト」って誤記は相変わらず。
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せっかく教えてもらったのはいいが、平野謙「徳田秋声」の初出が分からん。「昭和二十八年十二月」とあるが、どこに出たのだ。全集を見ても書いていないってなんて粗笨な全集なのだ。
2009-10-27 何を売っているのだ 
2009-10-26 阿井渉介氏に答える 
http://d.hatena.ne.jp/jun-jun1965/20090715
これに対して、阿井渉介氏より「反論」があった。教えてくれる人があった。
http://sky.geocities.jp/akaikutsunokai/frame.html
私は自分が批判や反論をして無視されるのが不快なので、答えることにする。
>これを出典として、多くの追随出版物や像に付された解説、寄付募集の文などでは、渡米したことになってなっています。
阿井氏著に紹介された静岡市の少女像にも、麻布十番のきみちゃん像にも、渡米していないとはっきり書いてある。
http://akaikutunokai.web.fc2.com/
ここでも渡米していないと書いてある。
>他の例では養子として戸籍に入れられているそうです。
米国に「戸籍」というものはない。「そうです」とは何か。菊地氏を批判しつつ、伝聞でそういうことを記すのはいかがなものか。
>道徳的な問題もさることながら、「そのように下司な想像力しかない輩が、童謡に手を出すな」という思いが強かったためでしょう。
下司な想像力も何も、そう考えるのは世の中を知っていれば十分ありうることで、阿井氏著に感心しないのは、こうした戦後的純潔思想に染まりきっているところにある。童謡というのを何と思っているのか、童話童謡といっても中にはずいぶん残酷なものもあるし、相変わらず阿井氏は道徳的判断と事実の判断を混同している。
『週刊朝日』の記事についてだが、週刊誌の中吊り広告や新聞広告から、小さな記事が除かれるのは当然のことで、なぜ阿井氏は自分の記事が大ごとであると考えるのか。また「こまかな食い違いはあるが『根幹に揺るぎはない』」は記者の文章ではなく菊地氏の返答ではないのか。
>アメリカで発見したと称する宣教師親族へのインタビューは、稚拙なヤラセです。
ドキュメンタリーにおけるインタビューなるものは、本当に、初めて質問を行った時のことを撮影することなどほとんどない。再現映像である。ヤラセだと言うなら阿井氏は米国へ渡って、ヤラセを行った、親戚でも何でもない米国人を探し出さなければならないだろう。
ところで、せっかく「阿井文瓶」氏と対話する機会が得られたので訊いておきたいことがある。『ウルトラマンタロウ』で、なぜ最後の三話だけ、副隊長が三谷昇に代わったのか、である。あれは実に不自然で、ウルトラシリーズのファンにとっては長年の謎なのである。副隊長交代の際のシナリオを書いたのは阿井氏である。隊長・名古屋章がずっと登場せず、副隊長・東野英心が指揮をとっていたのは、名古屋が忙しかったと見ればいいが、その上に最後から三話目での副隊長交代、しかもとても適任とは思えない三谷昇である。東野英心が怪我をしたなら、名古屋章が出ているのだから、名古屋が指揮をとればいいのであって、なんであと三回なのに三谷なぞ連れてきたのだ。
(小谷野敦)