不法入国で退去強制命令を受けた八尾市の中国人男性(46)ら家族4人が国に命令の取り消しを求めた訴訟の控訴審判決が26日、大阪高裁であった。一宮和夫裁判長は「長男が日本で勉強し続けることを望んでいたにもかかわらず、命令を出したのは違法」などとして、大学生の長男(18)に限り命令取り消しを言い渡した。男性と妻(40)、小学生の次男(10)の3人は請求を棄却された。【平川哲也】
判決文などによると、男性は中国・黒竜江省出身。妻は残留邦人の孫と聞かされ育ったが、立証可能な資料を得られずに96年、男性と長男を伴い来日した。別の残留邦人の子孫と偽って入国したため定住者の資格を得ていたが、親族を探していた。次男は来日後に生まれた。
大阪入国管理局は偽名の旅券で入国したとして04年に家族を摘発。06年に退去強制命令を出した。家族は法相に在留特別許可を求めたが「申請理由がない」として退けられている。
判決では、長男に不法入国の直接的な責任はないとしたうえで、長男への命令に関し、「(就学の希望など)十分な聴取をせずに命令しており、正しく認定すれば在留特別許可が出る可能性が高かった」と指摘。次男については、命令時に7歳だったことを挙げ「両親の監護・養育が欠かせない年齢だった」とし、妥当性を認めた。
代理人の越尾邦仁弁護士は「長男については評価できるが、小学生の次男についてはたいへん残念」とし、男性は「次男は中国語が分からない。何と言えばいいか……」と話していた。
毎日新聞 2009年11月27日 地方版