2009年11月26日(木)
赤ちゃんポスト、2年半で51人
テーマ:にうす
赤ちゃんポスト、2年半で51人 「国の母子支援必要」
2009年11月26日19時4分 asahi.com
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さまざまな事情で親が育てられない赤ちゃんを匿名で預かる慈恵病院(熊本市)の赤ちゃんポスト「こうのとりのゆりかご」の実態を分析し、課題を話し合う熊本県の検証会議は26日、最終報告を発表した。07年5月の開設から今年9月末までに全国から当初の想定を上回る計51人の乳幼児が預けられ、匿名性に懸念を示す一方、県境を越えた母子支援が必要として、国に対策を求めている。
最終報告によると、約2年5カ月間で、生後1カ月未満の新生児43人、生後1カ月以上~1年未満の乳児6人、生後1年以上~小学校入学前の幼児2人が預けられ、病院側が想定した「年に1人あるかないか」を大きく上回った。
51人のうち、39人は親の居住地が判明しており、九州・沖縄13人、関東11人、中部6人、近畿4人など。熊本県内はゼロだった。母親の年齢は20代が21人、30代が10人、10代が5人、40代が3人。
預けた理由は、生活保護世帯など生活困窮が7人。戸籍に入れたくない(8人)、不倫(5人)、未婚(3人)、世間体を気にした(3人)などのほか、強姦(ごうかん)で妊娠させられたと訴えた母親もいた。
障害がある子も複数おり、親族一同で相談して預けに来た例もあったという。
検証会議は、「都道府県を越えた広域的な問題。熊本県1県で対応できることではなく、国の関与が望まれる」とし、母子を保護するシェルターを各都道府県に1カ所程度整備し、出産や子育てに関する相談体制を充実させることが必要と提言している。
また、母親の出産後に姿を消したり、避妊を嫌がった末に責任を取ろうとしなかったりした例を挙げ「男性に当事者意識がない」と指摘した。
預けられた子どもの多くは乳児院や里親の家庭で暮らすが、7人は実親らが思い直して引き取った。親が不明なままの12人は、熊本市が戸籍を作り名前をつけたという。
「ゆりかご」をめぐっては「子どもの命を救える」と慈恵病院の考えに共感する声がある半面、「安易な子捨てを助長する」との批判もある。
検証会議は、「ゆりかご」の匿名性について「顔の見える相談手続きを忌避させ、倫理観の劣化が懸念される状況も見られた」「預け入れる側の利益と子どもの不利益の二面性を持つ」などと懸念を示し、「極力、匿名性を排除する努力が必要」と求めた。
一方で、慈恵病院が相談業務と一体で運用し、7割強の子の親が判明したことや、妊娠・出産で悩んで追い詰められた親が考え直す余裕を持てた例もあり、「全体的には、多くの生命がつながったと考えられる」と評価もした。
26日に記者会見した柏女座長は「『ゆりかご』がなければもっと悲惨になっていただろうという事例から、(妊娠・出産を)なかったことにしたいという倫理観の崩壊した事例まであった。国民全体の問題として検討する必要がある」と述べた。(岡田将平)
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