政府は20日発表した11月の月例経済報告で、日本経済は物価が長期的に下落するデフレーションに陥ったと宣言した。政府がデフレ状態にあると認定するのは06年6月以来3年5カ月ぶり。物価下落による企業収益の減少や雇用環境の悪化などで、景気の本格回復が遠のく恐れがあり、政府・日本銀行は早急な対策の実施を迫られている。
同日午後の関係閣僚会議でまとめた月例報告で、政府は物価の動向について「総合してみると、緩やかなデフレ状況にある」と認定。会議後に会見した菅直人副総理兼経済財政相は「景気全体は持ち直しの傾向にあるが、デフレの状況はしばらくは続いていくという見通しを持ち、緩やかなデフレ状況にあると判断した」と述べた。
デフレと認定したのは、(1)内閣府試算の消費者物価指数(石油製品など除く)が4月から6カ月連続で前月比マイナスとなっている(2)名目国内総生産(GDP)の成長率が7〜9月期までの2四半期連続で実質GDPの成長率を下回った(3)国内で需要不足が続いているためだ。
政府が特に重視するのは名目成長率の低迷だ。物価変動の影響を除いた実質成長率は7〜9月期まで2期連続で前期比プラスで、企業の生産活動も回復している。しかし、価格競争の激化で企業収益は目減りが続き、従業員の賃金も減少。実際の収益や所得を反映する名目成長率は6期続けてマイナスだ。物価下落を放置すれば、景気が再び悪化する「二番底」も懸念されると判断した。
菅氏はデフレ対策のため、「雇用で重点的な取り組みを行い、景気を下支えするための経済対策を取りまとめる」と述べ、来年1月の通常国会に提出する2.7兆円規模の09年度2次補正予算案の取りまとめを急ぐ方針を示した。また、日銀に対して「金融面からのフォローを期待する」として、超低金利政策を続けて金融市場に大量の資金を供給し、経済活動を支えることに期待を示した。
政府は01年3月、バブル崩壊後の長引く景気悪化に苦しんだ日本経済の状況を「デフレ」と認定。景気回復で物価下落は徐々に収まり、06年7月以降は政府の景気判断から「デフレ」との表現を削除した。その後、明確にデフレ脱却を宣言できないまま、昨秋からの不況に陥り、再びデフレ懸念が強まっていた。(橋本幸雄)