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非接触ICカード「FeliCa」の開発

第3回:「改札機」と「入退出」,両面作戦に挑む(上)

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日経エレクトロニクスPremium
2009/11/24 00:00
浅川 直輝
出典:日経エレクトロニクス,2007年6月4日号 ,pp.115-117 (記事は執筆時の情報に基づいており,現在では異なる場合があります)

 さらに伊賀は考えた。入退出管理システムには,非接触の書き込み機能は必要ない。いわば,鉄道総研に納入するシステムの簡易版である。まずここで,電波の干渉や人体による妨害の解決策を練る。同時に非接触の書き込み技術を作り上げる。これならば,鉄道総研が示した厳しい日程でも何とかなるんじゃないか。

1号機の弱点を克服

 非接触の読み出し技術が完成の域に達しつつあったことも,伊賀を勇気付けた。1988年秋,開発の実務を担当する日下部らは,従来の問題点の解決を目指した新方式のチップの設計を,ほとんど終えていた。

 開発中のICカード・システムは,カード・リーダーが送信した電波をICカードが振幅変調しながら反射し,リーダーに情報を送る。最初の試作機では,反射波に大きな雑音が混入し,リーダーが信号をうまく読み込めなかった。日下部らは,信号の符号化方式に活路を見いだした。従来のNRZ方式に代えて,頻繁に信号のHighとLowが切り替わるManchester方式に注目した。信号は冗長になるが,低周波雑音をカットしやすい。符号化方式の変更に加え,発振周波数を安定化するためのPLL回路も新たに開発した。

ソニーの開発チームは,伝送するデータの符号化方式をNRZ符号からManchester符号に切り替えた。NRZ符号は「0」を「Low」,「1」を「High」に置き換えるのに対し,Manchester符号では「0」を「High-Low」,「1」を「Low-High」で表す。NRZでは「0」または「1」が並ぶと信号が反転しなくなるのに対し,Manchester符号では1ビットごとに必ず信号が反転する特徴がある。これにより,信号の同期を取りやすくなるほか,フィルタで低周波雑音を除去しやすくなる。

 1989年2月。新設計のチップが出来上がった。狙いは当たった。リーダーはICカードからの信号を正しく読み込み始めた。

 非接触での書き込み方式の開発も順調に進んだ。日下部が選んだ手法はシンプルだった。もともと入退出管理向けのICカードには,データを書き込むための端子があった。カード表面に露出した端子に,ライターの端子を接触させて,データを書き込むことができる。日下部はカード側の端子をそのまま検波ダイオードに置き換えることで,非接触での書き込みができるのではと考えた。

 こちらももくろみ通りだった。ライターが送信する電波の出力を法定限界ぎりぎりの300mWまで高めることで,電波を受信した検波ダイオードの両端に 1Vほどの電圧が生じた。メモリの書き換えに足りる値である。ライター側で高強度電波の出力を変調すれば,接触式と同じように書き込み端子に信号を送れる。当初は高く見えた壁は,思いのほかあっさり乗り越えられた。

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