登米市迫町佐沼のかっぽう料理店「若鮨(わかずし)」会長の伊藤俊郎さん(59)が21年間にわたり仙台家庭裁判所認定の補導委託先となり、窃盗などの非行少年を受け入れ保護育成に尽力し最高裁判所長官表彰を受けた。県内で唯一の委託先。料理の腕を仕込み、周りへの接し方を教え込んで社会に送り出した少年は25人になる。
補導委託は家裁が少年の非行に対し最終的な処分を決定する前、民間人に少年を一定期間預け、職業や生活指導を委ねる制度。伊藤さんは縁あって1988年、補導委託先の登録をした。
伊藤さんは、料理だけでなく先輩・後輩といった人間関係の基本や指示された仕事をやり通す大切さを寝食を共にして指導。制度上の4カ月の委託期間だけでは不足と、家裁の処分と整合性を取りつつ複数の少年を3年間は受け入れている。現在は宮城や福島県出身の4人を預る。少年に自分の立場や存在意義を悟らせる厳しい叱責(しっせき)と、更生に向けて“伴走”する愛情が信頼を醸し出す。
「問題を抱えた少年を見捨てるのは社会的損失。立ち直って発揮する能力を信じたい。物の見方や角度を変えて人を育てるのが大事」と伊藤さん。「覚えた料理の腕を生かし仕事に励んでいるとか、結婚したと連絡をくれるのが一番うれしい」と話す。
伊藤さんは三十数年前に店を開き、用心棒代を要求するやくざを才覚で追い払うなど潔白人生を歩む。現在の従業員数は35人。
補導委託の登録認定数は全国で約400人。今年は伊藤さんを含め3人が表彰された。【小原博人】
毎日新聞 2009年11月25日 地方版