2ちゃんねるのDTV関係の多くのスレッドでコピペが貼られているので多くの方がご存知だと思いますが、こちらでもarpusさんからのコメントで教えていただきましたし、興味深い出来事なので取り上げます。
「ダビング10」解除ソフト販売、東芝社員を逮捕
この見出しだけで、わたしがこの後何を書くか、ピンと来る方もいるのでは。そう思えるほどあからさまな見出しである、と言わざるを得ないでしょう。
第一に「東芝社員」を取り上げていることに、第二に、「ダビング10」解除ソフトとはなんのことか、この読売の記事はもちろん、他のサイトの記事を取り上げてもなかなか見えてこないことです。
ダビング10解除ソフト販売容疑で男逮捕 初の摘発(ITmedia)
ダビング10解除ソフト販売容疑 東芝社員を逮捕(朝日)
ダビング10:解除ソフト販売容疑で東芝社員逮捕 全国初(毎日)
ダビング10解除ソフト初摘発 東芝社員を販売容疑で逮捕(日経)
多少ダビ10についての解説があればいいほうで、あとは全く似たり寄ったり。おそらく警察か何かの発表を垂れ流しているだけでしょう。唯一、Impressの報道のみが、中身の見えてくる報道となっています。
愛媛県警、CPRM解除ソフト販売で東芝社員を逮捕
ここだけが「ダビング10解除ソフト」ではなく、「CPRM解除ソフト」とはっきり書いています。事件の全容はここを読むのが一番でしょう。さすがIT系。それにくらべてITmediaは何やってんだ!? ってな感じですが。
もし、「ダビ10解除ソフト」を本当に文字通り読み取るとしたら、それはPCの所謂合法チューナーの添付ソフトを改造したもの(一からユーザーが作ったものは全く別の話)か、あるいはレコーダーにインストールして、ダビ10化されることなく使えるようになるもの、としか取れないのではないでしょうか。ダビ10はレコーダー内あるいはPCソフト内で処理されて始めてダビ10だからです。それら、特に東芝のレコーダーにインストールして使える規制解除ソフトがが販売されているのならば、正直お金を払ってでも欲しいかなと思ってしまいますが。
前の記事のコメントでaetosさんからも疑問の声が寄せられていますが、単なるCPRM解除ソフトとなると、これは全く別の話です。CPRM解除ソフトは現在単なる暗号解読によるアクセスコントロール解除ソフトであり、著作権法三十条第二号
二 技術的保護手段の回避(技術的保護手段に用いられている信号の除去又は改変(記録又は送信の方式の変換に伴う技術的な制約による除去又は改変を除く。)を行うことにより、当該技術的保護手段によつて防止される行為を可能とし、又は当該技術的保護手段によつて抑止される行為の結果に障害を生じないようにすることをいう。第百二十条の二第一号及び第二号において同じ。)により可能となり、又はその結果に障害が生じないようになつた複製を、その事実を知りながら行う場合
には相当しないというのが、ほぼ正しい解釈として浸透しており、これを持って逮捕されたというのは、明らかにおかしな話です。
逮捕=犯罪成立ではありません。誤認逮捕によって無実の罪を着せられ、例え裁判で無罪になったとしても、容疑者となった本人から見れば拘束期間が短くなったくらいで、実名を報道され、社会的制裁を受けることには何の違いもありません。また、多くの場合容疑者の逮捕が大きく報道されることはあっても、同人物が無罪となったことはマスコミで報道されることは滅多にありません。容疑を掛けられた時点で、ほぼ犯罪者と変わらない社会的扱いを、その人物は受けることになるわけです。だからこそ、逮捕状を申請することに、警察は慎重でなければいけません。まさか裁判で否定された「著作権保護違反幇助罪」をいまさら出してくるとも思えません。ですが、どの報道を見ても、はっきり「逮捕」とかかれており、任意同行ではないことが伺えます。
ここから想像するに、この事件で扱われている「著作権法違反の疑い」とは、記事を読んで一番最初に頭に思い浮かぶ「規制を解除した疑い」ではないのではないか、と思われてなりません。記事内には「容疑者は容疑を認めている」と書かれているので、本人は納得しているのかも知れませんが、そもそも自分で開発したわけでもないソフト(Impressの記事では"複製物"と書かれている")をオークションで売るような人間ですから、著作権法を多少なりとも理解しているとは思えませんが。
そう、それがわたしのこの事件の真実に対する疑いです。この容疑者は「規制を解除するソフトを売ったことで、著作権違反のソフトを広めた」のではなく、「他者の開発したソフトを、許可もなく複製して販売し、利益を出した」ことで逮捕されたのではないでしょうか。それも立派な「著作権法違反」ですし、逮捕状も出ます。容疑者もあっさりと容疑を認めるのも当然です。もちろん確定ではありませんが、そう取られてもおかしくない文面に、どの記事もなっています。普通"著作権保護違反"は申告制ですが、今回は「著作権法違反」ですし、解釈なんかそもそもどうにでもなります。Impress以外の報道はすべて「違法ソフト」と書いてはいますが、「ダビング10解除ソフト」とも書いてあり、ほとんど同じ文面です。よく分かっていないか、あるいは意図的に悪意を持った情報を流したい人間が中間に入ったことは間違いないでしょう。
もちろん、いまどきネットでこの手の情報を収集している人がこの程度の書き方で疑いを持たないわけがありませんが、問題は各新聞ともこぞってWEBに掲載していること。少なくともSARVHによる東芝訴訟事件より、はるかに足並みがそろっています。そもそもこの程度の罪、新聞がこぞって伝えるほど大きなものとはとても言えません。ただのセコイ犯罪です。普段なら無視されるでしょう。
もし、明日の新聞の紙面でも取り上げられるのならば、わたしの疑いは強くなります。疑いを持たない人が普通に読めば「ダビ10解除ソフトを使うことは罪なんだな」と読んでしまいますから。
この記事がある種の「見せしめ」であることは間違いありません。東芝という電機メーカーの名を大きく取り上げているのも、例の裁判にどう関係してくるかは読めませんが、「著作権法」の示すところを誘導しようという悪意が感じられます。
なお、この話はあくまでわたしの推理に基づくものなので、確実な証拠はありません。可能性の問題にとどめておいてください。
SARVHなどの著作権管理団体は、テレビ番組のダビング・保存を、市販ソフトの複製・配布と同じくらい「悪いこと」に昇格させたがっています。その「悪いこと」によって被害がおきているとし、その分のお金を無制限に徴収できる権利を欲しがっています。そのためなら、紛らわしい表現も平気でする連中です。我々はそれを十分考慮に入れなければなりません。しょせん情報を伝えるマスコミは中立の立場ではなく、ただの企業/営利団体でしかありませんから。
大量に伝えられる情報。実はそれには意図的に世論を狙った方向へ持っていこうとする意志が裏にある。わたしたちはそれを読んだ上で情報を活用しなければならない。ややこしい時代になっていることだけは、確かなようです。