2009年11月25日 社説
[障害者差別禁止]
地域で共生する権利を
障害者の差別を禁止する県条例の制定を目指す市民運動が起こっている。「障がいのある人もない人もいのち輝く条例づくりの会」が来月までに素案を策定、2011年3月の制定を目指している。
当事者やその家族がつくる「市民立法」だ。病気や事故で障害者になる可能性はだれにもある。いかなる人も尊厳を持って地域で生活することが可能な社会づくりが、条例の基本理念となる。
国連社会規約委員会は01年、日本に対して障害者に対するあらゆる種類の差別を禁止する法律を制定するよう勧告した。人権保護は国際基準に達していない。
日本の障害者基本法は第3条で「差別を禁止する」とうたっており、社会通念上も当たり前のことと受け止められている。しかし同法や福祉・教育関連法など既存の法律に差別の具体的な規定がなく、いったいどのようなことが差別や偏見かがあいまいだ。
障害を理由に就学や就職が狭められ、アパートへの入居も敬遠される実態がある。
よくある例は、車いすの児童や難病の生徒が地域の普通学校に入学できたとき、美談として注目される。市町村教育委員会によって障害児・生徒への対応が違う教育行政は果たして平等なのだろうか。行政の裁量によって生じる地域格差が放置されている。
それは差別の規定が明確でないために生じる問題だろう。よっぽど露骨な差別でない限り、仮に司法に訴えても裁判所は判断できない。
何が差別か、どう対処するかを規定する必要がある。
差別禁止の県条例づくりは千葉が先駆けだ。06年10月に「障害のある人もない人も暮らしやすい千葉県づくり条例」を制定した。
「なくすべき差別を例示」「解決の仕組み」「社会の仕組みをどう変える」「支援する仕組み」―が柱になっている。障害を理由に施設での生活を強いることや、就職や労働条件で不利に扱われ、不動産の売却や賃貸などを拒否・制限されたりすることなどを具体例として挙げている。
条例は障害者が「地域で暮らす権利を有する」ことを基本理念とし、県や市町村、県民の役割を確認することを目的としている。
スロープを付ければ車いすでも職場で動けたり、幼なじみと一緒の学校へ通えたりする。こうした合理的な配慮に基づく措置を欠き、障害を理由に拒否した場合、それは差別となる。
千葉に続き北海道や熊本などで条例づくりが広がった。
本紙くらし面で障害者のエッセー「当たり前に向かって」を連載している。
就学の6歳で家族から離され施設に入り、成人して一人暮らしにチャレンジしようとするが「問題を起こすのでは」といった偏見にぶつかる。アパートを探せても小さな段差やドアの幅、トイレの狭さに疎外感を味わう。
「特別な困難を持つ普通の市民と考えるべきだ」。1979年の「国連障害者年長期行動計画」にある一文だ。だれもが共生できる県条例づくりをみんなで応援したい。
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