ノーベル賞受賞者ら、事業仕分け結果に怒りの声 鳩山首相、26日に受賞者らと会談へ
11月26日1時2分配信 フジテレビ
「事業仕分け」後半戦2日目は、外交・教育分野で議論が繰り広げられた。およそ1兆6,000億円の大型事業、公立小中学校の教員給与の国の負担金については、金額の議論に踏み込まず、教員の事務作業削減という肩すかしもあった。一方、ノーベル賞受賞者らが緊急集結し、仕分け結果に怒りの声を上げた。2010年度の概算要求から無駄を洗い出す「事業仕分け」後半戦の2日目。
いら立ちの声が上がったのは、外務省所管の「国際機関等への任意拠出金」事業の説明。
国際機関などに外務省の判断で拠出できる資金で、要求額は39億円。
しかし、担当者の答えが質問の意図からそれると、仕分け人は「だから、今のその主要な議論には入らないでしょ? そこをまぜこぜにしないでください」と述べた。
結局、判定は「見直し」で、拠出金で可能なものは、国への返還も求めるとした。
さらに、仕分け人の民主・菊田議員は「広報誌、買い上げをやめるだけでもですね、2億3,300万円、経費を削減することができると思うんですけれども」と述べた。
別の仕分けでは、外務省が買い上げて配布しているという民間会社発行の広報誌に議論が集中した。
担当者は「時々、議員の先生方から『もう1部欲しい、もう2部欲しい』と。それは購入してくださいということを言っておりますから、そういう面でも、相当広く読まれていると思っております」と述べた。
しかし、当の国会議員、仕分け人の民主・尾立議員は「わたしも配られている国会議員の1人でございます。必要ございません。必要だったら自分で調べるし、図書館に行きますので、配らないでほしいと思います」と述べた。
およそ2億円のこの事業には、ばっさり「廃止」の結論が下された。
そして、外務省の事業仕分けは、ついに「在外公館」の維持・運営に関する経費に及んだ。
仕分け人が「1,200億円、在外公館等の維持にかかってますよね。交際費っていうのはあるんですよね。何億ですか?」と質問すると、担当者は「(交際費は)2億8,100万円強でございます。これは基本的にですね、贈呈品の購入ですとか、クリスマスカードやお祝いとか、不幸なときの花の支出とか、そういうものに使っています」と答えた。
大使館や総領事館の施設費や人件費を中心とした概算要求額は、1,211億円。
この中で特に、在外公館に併設されたプールやテニスコートなどの福利厚生施設が問題視された。
仕分け人は「テニスコートとかプールって、いくつの大使館にどれくらいあって、年間の維持費はどのくらいなんですか?」と質問した。
ロシア・モスクワの日本大使館では、2007年の新築の際、温水プールやテニスコート、サウナまで備えた豪華施設にする計画が明らかになり、世論の批判を浴びたため、プールの建設は中止されている。
しかし外務省は、在外公館には84のプールと26のテニスコートがあると説明した。
判定では、人事面などで大使館規模のコンパクト化や、海外駐在職員の各種手当を見直すべきとした。
一方、第3仕分けグループでは、全国学力テスト・体力テストで概算要求に38億円余りを盛り込んでいる文部科学省とのバトルがあった。
文科省担当者は「実際問題、修学旅行等が、その時期に該当するようなところがあって、その時期、旅館を押さえなきゃいけないという観点からですね」と述べると、仕分け人の民主・枝野幸男議員は「そうやって、準備してるからっていうことで、何十億(円)税金使うっていう話!? 違うでしょ、それは!」と述べた。
仕分けチームは、抽出対象をさらに絞り込むべきとして、見直しが必要と判定した。
続いて行われたのは、事業仕分けの焦点の1つ、義務教育費国庫負担金制度。
公立小中学校の教職員給与の3分の1を国が負担するもので、およそ1兆6,380億円を盛り込んでいる。
要求額の多いこの事業に鋭く切り込むかと思いきや、仕分け人の枝野議員は「総額の義務教育経費として、そっくりお渡しをして、それは義務教育に使わなきゃいけませんと。どうですか?」と述べた。
それに対し、文科省担当者は「それこそ政治主導でご判断いただくことですが、大変ご見識のあるご意見じゃないかと思います」と述べた。
仕分けチームは、金額については触れず、教員の調査・報告義務の削減や、国と地方における責任と負担の在り方を抜本的に整理すべきとして、「見直し」と判定した。
仕分け人の枝野議員は「決して、切るだけが目的ではないということを、わかっていただけるような項目がいくつか出てきて。これは、仕分けとは何なのかってことをちゃんと理解していただくうえでは、よかったかなと思ってます」と述べた。
千葉県の森田健作知事は「今まで見えないことが見えてね、快刀乱麻のようにガンガン、ガンガンやればね、それは一服の清涼剤にもなりますよ」と、事業仕分けについて一定の評価を示した。
しかし、スーパーコンピューターやロケット開発など、科学技術関連予算では、相次ぐ「凍結」、「廃止」などの判断に波紋を呼んでいる。
宇宙飛行士の若田光一さんは「(宇宙開発は)技術立国として存続していくために、非常に重要な分野であるというふうに思いますし、長期的な展望に立ったうえで、このような分野の開発を進めていく必要があると」と述べた。
13日に、仕分け人の民主・蓮舫議員が「世界一になる理由は何があるんでしょうか? 2位じゃだめなんでしょうか?」と発言したこと、事業仕分けに、歴代のノーベル賞受賞者らがかみついた。
ノーベル生理学・医学賞の利根川 進氏は25日午後6時半すぎ、「『世界一である必要なんかない』なんて言ってる人がいるんですよね。世界一を目指したって、世界一にはおそらくなれないんですよ。だけど目指せば、ひょっとしたら2位か3位くらいにはなれると」と述べた。
ノーベル化学賞の野依良治氏は「科学技術っていうものが、わが国が今世紀の国際競争を生きていくうえで、わたしは唯一のすべではないかと」と述べた。
ノーベル物理学賞の小林 誠氏は「個別の事業のネガティブな面だけを取り上げて、予算を縮減しようというような結論っていうのは、非常に短絡的なものであると」と述べた。
また、「若者を科学技術の世界から遠ざけ、海外流出を引き起こす」と批判。
会場には、あふれるほどの学生や研究者らが詰めかけ、拍手喝采(かっさい)となった。
仕分け人の蓮舫議員は「(『2位じゃダメか?』というコメントが独り歩きしているが?)1位である意味づけが、当然(担当者から)出てくるものと思っていたのと、なかなか意に反する答えだったのは、ちょっとショックだったと思ってます」と述べた。
相次ぐ異論に配慮してか、鳩山首相は「科学技術は日本の力だという思いは、人一倍持っているつもりですから。ノーベル賞受賞者方のお気持ちが、どこら辺にあるのかということも、近々お目にかかって、お話を聞いてみたいと」と述べた。
鳩山首相は26日午後、首相官邸でノーベル賞受賞者らと会談する予定となった。
25日は、議論された77事業のうち、8事業、およそ67億円が「廃止」と判断された。
法的な拘束力がないこの事業仕分けを、科学技術分野などを含め、鳩山首相はどう判断していくのか注目される。
最終更新:11月26日1時2分