「大相撲九州場所10日目」(24日、福岡国際センター)
史上ワーストの14回目のかど番を迎えていた大関千代大海が、横綱朝青龍につり出されて負け越し、歴代最長となる65場所守った大関からの陥落が決まった。大関陥落は現行制度で13人、16例目で、04年九州の栃東以来。千代大海は11日目から休場し、関脇として10勝すれば大関に復帰できる来年初場所に備える。全勝は朝青龍と横綱白鵬の2人。1敗に嘉風。琴欧洲は2敗に後退した。
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一切、手心は加えなかった。千代大海の押しを真正面から受け止めると、素早く二本を差して土俵中央まで押し戻す。そこから豪快につり上げると、そのまま歩いて土俵外まで運び出した。朝青龍が歴然とした力の差を見せつけ、ベテラン大関に引導を渡した。
「差しが速かったし、右(まわし)が取れたからね。何でくるか分からないから集中して、押しにきたところをつかまえた」。いつも通り淡々と取組を振り返る横綱が、千代大海の大関陥落の話題になると表情を一変させた。「何て言えばいいんだろうね…」と言葉を詰まらせ、「自分が相撲界に入った時に、(千代大海は)関脇で優勝して大関になったんだからね」としみじみ語りだした。
自身が初土俵を踏んだ99年初場所で、千代大海は“若貴”を下して幕内初優勝を飾り、大関昇進を決めた。それだけに「あこがれの力士」として、「理想の力士」として強く心に刻まれた。押し相撲の手ぶりをしながら「(千代大海は)持っているものがあるから、最初は相撲の基本にしてたもんね」と遠い目で振り返った。
「これで落ちるの?関脇?」と報道陣に確認し、「(来場所は)新関脇で頑張ってほしいな」と奮起を期待した。あこがれの人に“トドメ”を刺して守った無傷10連勝。2場所連続優勝への決意は、さらに強固なものとなったはずだ。