【第126回】 2009年11月25日
ビル・エモット 特別インタビュー第二弾
「鳩山政権の経済運営は予想以上に酷い」
特に後者の郵政民営化は、国際社会からも日本の改革の象徴と見なされていただけに、かくも安易な180度の方向転換はいただけない。英米でも、かつての小泉自民党政権への意趣返しに過ぎないと報じられている。実際、私も、あまりの急転換に唖然とした。とても事前にこの問題について真剣な検討があったとも、先行きについて確固たる成算があるとも思えないからだ。
民主党の権力中枢からすれば、国民の主たる関心はもはやそこにはないから、国民新党の思いのままに任せても良い(そして反小泉改革的な世の風潮におもねった)ということかもしれないが、不採算の郵便局事業をどのように維持していくのかといった長期的な視点を欠いている。
公共性を掲げるのはいいが、その維持コストを賄うだけの収入をどう上げるのか。官業のままでは立ち行かなくなるから先手を打って民営化を行い、経営の効率化を図り、新規事業参入の道を開くというシナリオ以上の成算があるのか、あるならば、私も知りたい。
官業への逆行は、失敗すれば、巨額の国民負担につながるわけで、この転換を既成事実化して、風化させることは、日本のメディアも断じてしてはいけないと思う。
―こと鳩山政権の経済運営については、日本の大手メディアの関心は、事業仕分けに移っている。予算の無駄を洗い出すとするこの取り組みについては、どう評価するか。
まず、事業仕分けの背後にある「戦後行政の大掃除」という変革方針自体には大賛成だ。鳩山首相は、所信表明演説で、これまでの官僚依存の仕組みを排し、政治主導・国民主導の新しい政治へと180度方向転換させることを表明したが、これは正しく日本が必要としていることだ。
私の知る限り、日本では過去何十年にも渡り、政治のリーダーシップの届かぬところで、各省庁が自在に物事を進めていた印象が強い。したがって、財務省主導の批判はあるとはいえ、少なくとも政治が今まで以上に主体的に関わる形で、税財政の骨格が見直されることには、一定の評価をしたい。
但し、事業の必要性を見極める際になにより重要なことは、ビジョンであり指導力だ。残念ながら、現在の鳩山内閣からはそれが伝わってこない。何も夢のような成長戦略を提示しろと言っているわけではないが、それにしても、大掃除をした後にどうしたいのかが見えなさすぎる。これでは、事業仕分けが果たして正しく行われるのかどうか不安視されても仕方ないだろう。
そこへきて、既得権を打破するどころか守るかのごとき郵政改革の大転換の動きだ。これでは、日本の将来を買えと言われても、混乱して、確信は持てない。
Special Topics
バックナンバー
- 第126回
- ビル・エモット 特別インタビュー第二弾 「鳩山政権の経済運営は予想以上に酷い」 (2009年11月25日)
- 第125回
- ユーチューブで儲けまっせ! 役所と企業のタッグが生んだ 目から鱗の関西流新IT商法 (2009年11月19日)
- 第124回
- 安全保障研究家・森本敏 緊急提言! 「民主党の普天間基地移設見直しは 日本の信頼を揺るがしかねない」 (2009年11月17日)
- 第123回
- ビル・エモット 特別インタビュー 「オバマ政権の日本軽視は誤報! アジア重視の鳩山外交は米国の願い」 (2009年11月13日)
- 第122回
- 中国経済のV字回復で囁かれる 「人民元基軸通貨化」の真相 (2009年11月11日)
- 第121回
- 上海ディズニーランドで挽回なるか? 課題山積の中国「テーマパーク事情」 (2009年11月05日)
Pick Up
新着トピックス
- ミドルマネジャーのための「不機嫌な職場」改革講座
- “年上の部下”に手を焼くミドルが増加中! 断絶の壁を崩すコミュニケーションの秘訣
- 原英次郎の「強い中堅企業はここが違う!」 トップに聞く逆境の経営道
- 世界の最先端が認めた町工場の正体は 宇宙から舞い降りた研究開発型企業 三鷹光器 中村勝重社長に聞く(下)
- 福井エドワードのINSIDEグリーン革命
- 日本で報じられない 中国“環境国家戦略”の真実
- 株式市場透視眼鏡
- バブル相場は形成されにくい 市場参加者期待の「環境バブル」
- めちゃくちゃわかるよ経済学 シュンペーターの冒険編
- ボン大学の優秀な教え子たち
- 保田隆明 大学院発! 経済・金融ニュースの読み方
- 相次ぐ公募増資は景気二番底の前ぶれか?
- 広瀬隆雄 世界投資へのパスポート
- 最悪期を脱した中国のホテル業界、 事業拡張資金を得たセブンデイズに注目
- 藤井英敏 株式市場サバイバル!
- 政府がやっとデフレを認定。 だが有効な対策を打ち出せず
- ドラッグストアニュースPick-Up
- 子どものスキンケア 情報発信と啓蒙で伸びしろがある
ダイヤモンドオンラインplus 知っておきたい価値ある情報
最新の連載一覧
経済・時事
経営・戦略
Diamond Premium 最新記事 無料会員登録すると全文が読めます
- 週刊ダイヤモンド ITBizNews
- グーグル参入で新OS戦争勃発! マイクロソフト戦略大転換の成否(上)
- Close-Up Enterprise
- ファミリーマートがam/pm買収 ブランドへの配慮で得た“果実”
- 『社会貢献』を買う人たち
- クリスマス商戦にも「社会貢献」の波。 「チャリティ・ギフト」が不況の百貨店を救う?!
- 本荘修二の実践講座! 社員を動かすウェブ
- 日本企業への教訓満載!英BTが社員向けソーシャルウェブに目覚めるまで
- インターネットは本を殺すのか
- 「キンドル」vs.紙の書籍 ―日本の出版社で出来なかった事業モデル
- 湯谷昇羊 不屈の経営者【列伝】
- 喫茶店から始め、外食・レジャーで急成長 消費不振にも屈しない64歳創業者の挑戦
- 「稼げるチーム」をつくる!営業マネジャーの教科書
- よくわかる!営業マネジメントの進め方
- 社員とモメない就業規則とは?
- “未払い”残業代500万円!?――退職した社員が労働基準監督官を伴い突然来社…
- ミ
ラ・ジョヴォヴィッチ主演、
衝撃のサイコスリラー最新作にご招待!! - 映画「THE 4TH KIND フォース・カインド」試写会に抽選で25組50名をご招待します。12/8(火)18時30分開映、東京・厚生年金会館にて。
Business information
この連載について
刻々と動く、国内外の経済動向・業界情報・政治や時事など、注目のテーマを徹底取材し、独自に分析。内外のネットワークを駆使し、「今」を伝えるニュース&解説コーナー。
アクセスランキング
- 1位
- 今週のキーワード 真壁昭夫
- ドル安と金高騰のスパイラルが到来 「資源大高騰時代」到来説は本当か?
- 2位
- 野口悠紀雄 未曾有の経済危機を読む
- 5000億の政府支援でかりそめの収益回復? もはや長期下落は不可避の自動車産業
- 3位
- SPORTS セカンド・オピニオン
- Jリーグ終盤戦に天皇杯・ナビスコ杯… ファンの盛り上がりに水を差す過密日程
- 4位
- 格差社会の中心で友愛を叫ぶ
- 「謎の手形」に「赤字伝票」! 非情な町工場“いじめの構図”
- 5位
- 政局LIVEアナリティクス 上久保誠人
- 重要なのは事業仕分け後。 鳩山政権は「やるべき政策」を決めよ
Recommend 話題の記事
- 野口悠紀雄 未曾有の経済危機を読む
- 5000億の政府支援でかりそめの収益回復? もはや長期下落は不可避の自動車産業
- 今週の週刊ダイヤモンド ここが見どころ
- ファッション、家電、旅行まで百花繚乱! 百貨店やコンビニを凌駕する「通販」の全貌
- 今週のキーワード 真壁昭夫
- ドル安と金高騰のスパイラルが到来 「資源大高騰時代」到来説は本当か?
- 日本人が知らないリアル中国ビジネス 江口征男
- ビジネスの成否は“代理店”頼み? 代金回収リスクに悩むタイヤメーカー事情
- 『社会貢献』を買う人たち
- クリスマス商戦にも「社会貢献」の波。 「チャリティ・ギフト」が不況の百貨店を救う?!
- SPORTS セカンド・オピニオン
- Jリーグ終盤戦に天皇杯・ナビスコ杯… ファンの盛り上がりに水を差す過密日程
- 経済ジャーナリスト 町田徹の“眼”
- 東京市場停滞の背景に浮かび上がる、インサイダー天国疑惑
- 格差社会の中心で友愛を叫ぶ
- 「謎の手形」に「赤字伝票」! 非情な町工場“いじめの構図”
- 日本を元気にする企業の条件
- 太陽電池から鉄道、教育、介護まで 日の丸“元気印企業”総まくり!
- 【参加無料】東証主催「2010年の投資新戦略」
- 下げ相場にもチャンスあり!2010年の投資戦略セミナーに先着100名様を無料ご招待
雑誌定期購読のご案内
特大号・特別定価号を含め、1年間(50冊)市価概算34,500円が、定期購読サービスをご利用いただくと25,000円(送料込み)。9,500円、約13冊分お得です。さらに3年購読なら最大49%OFF。
1冊2,000円が、通常3年購読で1,333円(送料込み)。割引率約33%、およそ12冊分もお得です。
特集によっては、品切れも発生します。定期購読なら買い逃しがありません。
「ザイ」は年間12冊を予約購読すると、市販価格 7,800円→7,150円(税・送料込み)。今、6,600円!キャンペーン実施中!
※別冊・臨時増刊号は含みません。
偶数月の1日発売(隔月刊)。1年購読(6冊)すると、市販価格 5,880円→4,700円(税・送料込)で、20%の割引!
※別冊・臨時増刊号は含みません。
お知らせ・ご案内
- 会員専用ページ開始のお知らせ
- 7月より一部の記事で、無料会員登録した方だけが全文を読める形に変わりました。詳細はこちらをご覧ください。