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ビル・エモット 特別インタビュー第二弾
「鳩山政権の経済運営は予想以上に酷い」

 特に後者の郵政民営化は、国際社会からも日本の改革の象徴と見なされていただけに、かくも安易な180度の方向転換はいただけない。英米でも、かつての小泉自民党政権への意趣返しに過ぎないと報じられている。実際、私も、あまりの急転換に唖然とした。とても事前にこの問題について真剣な検討があったとも、先行きについて確固たる成算があるとも思えないからだ。

 民主党の権力中枢からすれば、国民の主たる関心はもはやそこにはないから、国民新党の思いのままに任せても良い(そして反小泉改革的な世の風潮におもねった)ということかもしれないが、不採算の郵便局事業をどのように維持していくのかといった長期的な視点を欠いている。

 公共性を掲げるのはいいが、その維持コストを賄うだけの収入をどう上げるのか。官業のままでは立ち行かなくなるから先手を打って民営化を行い、経営の効率化を図り、新規事業参入の道を開くというシナリオ以上の成算があるのか、あるならば、私も知りたい。

 官業への逆行は、失敗すれば、巨額の国民負担につながるわけで、この転換を既成事実化して、風化させることは、日本のメディアも断じてしてはいけないと思う。

―こと鳩山政権の経済運営については、日本の大手メディアの関心は、事業仕分けに移っている。予算の無駄を洗い出すとするこの取り組みについては、どう評価するか。

 まず、事業仕分けの背後にある「戦後行政の大掃除」という変革方針自体には大賛成だ。鳩山首相は、所信表明演説で、これまでの官僚依存の仕組みを排し、政治主導・国民主導の新しい政治へと180度方向転換させることを表明したが、これは正しく日本が必要としていることだ。

 私の知る限り、日本では過去何十年にも渡り、政治のリーダーシップの届かぬところで、各省庁が自在に物事を進めていた印象が強い。したがって、財務省主導の批判はあるとはいえ、少なくとも政治が今まで以上に主体的に関わる形で、税財政の骨格が見直されることには、一定の評価をしたい。

 但し、事業の必要性を見極める際になにより重要なことは、ビジョンであり指導力だ。残念ながら、現在の鳩山内閣からはそれが伝わってこない。何も夢のような成長戦略を提示しろと言っているわけではないが、それにしても、大掃除をした後にどうしたいのかが見えなさすぎる。これでは、事業仕分けが果たして正しく行われるのかどうか不安視されても仕方ないだろう。

 そこへきて、既得権を打破するどころか守るかのごとき郵政改革の大転換の動きだ。これでは、日本の将来を買えと言われても、混乱して、確信は持てない。

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