橋本幸博研究室

職業能力開発総合大学校建築システム工学科環境工学・設備工学研究室−屋上緑化、空調設備の省エネルギーなど

インフラフリー建築 アニリール・セルカン先生の特別講演

2009-05-20 23:59:30 | Weblog
 空気調和・衛生工学会総会の特別講演で、東京大学大学院のアニリール・セルカン先生が「インフラフリー建築」について、信じられないくらい面白い話をして下さいました。ウィキペディアにも掲載されているくらい有名なセルカン先生はトルコ国籍ですが、8ヶ国語に堪能な語学の天才であり、建築構法の分野の博士号をもっており、長野オリンピックではトルコのアルペンスキーのスーパーバイザーを務め、ほかにも数え切れないくらいの業績のある宇宙人のような方です。

 講演では早口の淀みない日本語で、聴衆を沸かせてくれました。8歳のときに、ドイツのケルンで奨学金を獲得してスイスの学校に転校します。しかし、小火騒ぎを起こして退学処分になり、半年間の職業訓練を受けます。それから、様々な経歴をたどって、来日10年、学位も取得し、日本語も不自由なく使いこなします。セルカン先生は、「スターウォーズ」などの映画を引き合いに出して、ロボットと人間との関係や廃棄物発電など様々なハイテク技術を紹介していきます。

 セルカン先生の研究テーマは、「インフラフリー建築」で、従来の建築や都市に不可欠なインフラストラクチャーがなくても成立するような建築を構想しているのです。これは、たとえば宇宙船であり、インフラがない孤立系の空間で生活をするしくみです。尿から飲料水を生成するシステムなどが考えられます。あるいは、災害時の建築のあり方、スラムや難民キャンプでもインフラフリー建築は有効です。セルカン先生は、ケニアのナイロビにある巨大なスラムを紹介していました。ここでは、住居内部にトイレがなく、「フライング・トイレット」というものがあるそうです。これは、住居内部で排泄したものをビニール袋に封入して、屋外に投げ捨てるということだそうです。うかうかしていると、「フライング・トイレット」が飛んでくるので、スラム周辺を歩くときには注意が必要だということです。そこで、水分を強烈な日射で蒸発処理して、衛生的に排泄物処理をする方法を考案したという話でした。

 このほかにも、セルカン先生は地球から36000km上空にエレベーターで到達するという「宇宙エレベーター」構想を語って下さいました。講演終了後に、私はセルカン先生に自己紹介をして、名刺交換をしてから、インフラフリー建築の構想が面白いと言いました。ある意味で、船も「インフラフリー建築」のひとつだと思います。確かに、インフラに依存しない建築は、建築設備を研究する上でも重要な研究テーマになることでしょう。
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