曹洞宗大本山・永平寺では人間が生きていく上で、欠かせない調理と食事については、特に綿密に行われています。「法食同輪」という仏語を簡単に言うと、仏道修行と食事とは同じくらい大切であり、食事がおろそかになれば、そこに正しい仏法はありえないという意味です。永平寺の開祖、道元禅師は調理と食事作法を仏道修行の域にまで高めようと著述した「典座教訓(てんぞきょうくん)」の一巻を撰じて、特に弁食の作法を尊んでおり、その精神に準じて修行僧や参籠者たちの、三度の食事が作られています。
永平寺の台所を大庫院(だいくいん)と言います。東側の廻廊を登った所にある建物で、昭和5年に改築され地下1階地上4階、延べ750余坪の豪壮な建築物です。その大庫院を仕切るのが典座と言われる、いわば料理長のような人で、食に関わる一切を任されています。永平寺で役職のある位に就く人の中に、典座職が入っていることからも、食事が重要視されていることがわかります。「動物も植物もすべて命あるものですから食材を大切にし、感謝して調理しております」と典座は言います。無駄のない料理を作るため、人参の皮はむかずにそのまま使い、キャベツは芯までも調理。食材はほとんど余すことなく使用します。「特別なことはしておりません。季節ごとの旬の食材を、素材の持つ美味しさが引き立つように調理しております」。
本来の仏教とは”より良く生きる“
ための教えです。毎日の食事をきちんと作り、感謝して頂くこと。さらには健康に、美味しく頂くことが、永平寺では重要な修行となり得ると考えられているのです。 |
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大庫院では、毎食300人超分の食事を作ります。昔からの献立を参考に、季節の野菜を使い、調理。また天災など、何かあった時のために、保存の効く食材を中心に仕入れをし、たとえ粗末な食材であっても良心、誠実な心、清らかな心をめぐらせて、上等な料理にも負けない味を出すように工夫しています。 |
食事の呼び名 永平寺では、朝食を「小食」、昼食を「中食」と呼んでいます。また夕食は正式な食事として出さず、飢えをしのぐための薬「薬石」として食されています。 |
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大本山永平寺提供 |
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