われわれは今日(米国時間11/19)、Mountain ViewのGoogle本社で行われたChrome OS説明イベントに参加した。OSのさまざまなディテールについての説明に加えて、正式ローンチの時期が明らかにされた。
イベントはGoogleのプロダクト・マネージメント担当副社長、Sundar PichaiとChrome OSのエンジニアリング責任者、Matthew Papakiposによる説明で始まった。
下記はわれわれのライブブログ記録(発言は要約してある)。
SP(Sundar Pichai): 皆さん、ようこそ。今日はGoogle Chrome OSについて説明する。今日は正式版もベータ版もリリースするわけではない。しかしプロジェクトはかなり進捗してきた。今日からソースコードを完全に公開することを報告できてうれしい。
このプロジェクトの基本はGoogle Chromeブラウザだ。われわれの努力の中心にはこのブラウザがある。なぜChromeなのか? リリースから約1年経った。最近、ユーザー数を3千万と発表したが、現在はすでに4千万を超えている。われわれの努力目標は、スピード、シンプルさ、セキュリティーの3つに要約できる。ChromeブラウザではJavaScriptの実行速度がIEより40%も速い。ブラウザには速いものもあれば遅いものもある。ユーザーはChromeを「速い」と感じてくれている。
この1年、われわれはChromeを40回前後アップデートした。しかしほとんどのユーザーはそのことに気付かなかったはずだ。さらにわれわれはHTML5のサポートに力を入れている。ウェブの機能を大きく強化するために重要だからだ。
今年、さまざまな前進があった。
1) Chrome for Macは今年中にリリースされる。もうすぐだ。
2) Chrome for Linuxも順調だ。実際Linux版がChrome OSのベースとなっている。
3) エクステンション(プラグイン)機能もすぐに正式サポートされる。現在、最後の調整をしているところだ。エクステンションについてはいくつかの提携先と共同で詳細を発表する予定だ。エクステンション機能もChromeの自動アップデートで追加される。
HTML5については、われわわれは、ネーティブ・アプリ同様に機能するよう努力している。つまりウェブ・アプリがネーティブ・アプリのようにシステム・リソースにアクセスできるようにしたい。たとえば、グラフィックス機能の場合、GPUに直接アクセスできるようにするなどだ。音声とビデオのスムーズな再生にとってカギになる。オフライン機能も重要だ。われわれは他の主要ブラウザのベンダーと協力しながらHTML5のサポートが進むよう努力している。
ハードウェアに関しては、ネットブックの成長が目覚ましい。不況のさなかに爆発的に成長した。超薄型、超軽量マシンに人気が出た。アプリケーションの場所はデスクトップからウェブに移行しつつある。それが明らかなトレンドだ。ウェブこそ現在もっとも成功しつつあるプラットフォームだ。コンピュータの主流はノートパソコンからネットブックに移行している。一方、モバイル分野では携帯電話からタブレットへの移行がスケジュールに上っている。いずれにしてもこれらはすべて本質的にはコンピュータだ。ノートパソコンが携帯に近づき、逆もまた起きている。すべて常時インターネット接続を前提としている。
こうした状況を踏まえて、それに最適化したパーソナル・コンピューティングの解を求めたのがわれわれのChrome OSだ。
前述したようにわれわれの目標は3つ。スピード、シンプルさ、セキュリティーだ。
われわれはChrome OSを目覚ましいほど速く、一瞬で起動できるOSにしたかった。ChromeブラウザはChrome OS上ではいっそう速くなる。
Chrome OSで利用できるアプリケーションは、すべてウェブ・アプリケーションだ。ローカルで作動するアプリケーションは一切サポートされない。これでさまざまな問題が極めてシンプルになる。コンピュータ上にあるアプリケーション・プログラムはカスタマイズされたブラウザだけだ。それ以外のアプリケーションもデータもすべてクラウド上にある。これがカギとなるコンセプトだ。われわれはパーソナル・コンピューティングを完全にクラウド化する。だから、たとえばユーザーがマシンを紛失したとしても、単に新しいハードウェアを買えばすぐに仕事を再開することができる。すべてがインターネット上にあるのでセキュリティーに対するアプローチもまったく異なったものとなる。これほど高度なセキュリティーが実現できたシステムは他にない。Chrome
OSではユーザーは実行可能なプログラムをいっさいインストールできない。したがって悪質なプログラムを発見することがはるかに簡単になる。ブラウザのセキュリティーだけを考えればよいからだ。
——–ここでデモ:———
ご覧のように、電源を入れてからログインスクリーンが表示されるまで、 約7秒だ。あと3秒でログインすれば、それで仕事が始められる。われわれはこのスピードをもっと速くするべく努力している。
UIは当然ながらChromeブラウザに似ている。われわれの開発作業は今から約1年後に正式リリースができる段階まで進んだ。 今後正式リリースまでの間にUIには多くの改良が加えられるはずだ。しかし、基本となるコンセプトは製品版でも変わらない。
全体としてChromeブラウザと似ているが、アプリケーション・タブなど新しい特長も追加されている(われわれの公開した記事の画像参照)。App Menuというメニューもある。今後UIは洗練されるだろうが、根本はユーザーがひんぱんに利用するアプリがすばやく見つかるようにすることだ。常時表示される固定された軽量のウィンドウによるパネルが提供される。共同作業の相手のリストやチャットウィンドウ用に最適だ。あるいはメモ帳に使ってもよい。メディアは独立のウィンドウにポップアップする。
(ここでブラウザ内で動くチェスゲームのデモが披露される)
このようにフルスクリーンモードにすれば、ブラウザ内でゲームしていることにさえ気づかないだろう。
Chrome OS内で快適に読書ができ、YouTubeビデオも見られるるようになる。オールビュー・モードもある。(ドラグ&ドロップ中もYouTubeビデオが再生を続ける)このようにちゃんと作動する。
デジカメを接続したらどうなるか? カメラ中のファイルを表示するウィンドウが開く。どのファイルもブラウザの新しいウィンドウとして開くことができる。
新しいMicrosoft OfficeはChrome OSのためのキラーアプリだ(会場から笑い)。 Excelファイルが届いたとしよう。オンライン版のOfficeで開ける。問題ない。
ユーザーはさまざまなファイルを取り扱うのは事実だ。しかしたとえばPDFファイルだが、現在でもブラウザ内で即座に開くことができる。
———–ここでMatthew PapakiposがChrome OSのテクノロジーについて説明に立つ—————–
MP (Matthew Papakipos): 技術的な説明をさせていただきたい。ソースコードは今日、公開されたので、誰でも自分でチェックできる。
われわれはChromeコンピュータを通常のコンピュータというよりもテレビのような感覚で使えるものにしたかった。Chrome OSの記憶デバイスはすべて半導体メモリが利用される。
現在のコンピュータの起動があれほど遅い理由のひとつは、たとえば、未だに起動時にフロッピードライブを探しに行ったりしているからだ。フロッピードライブなんか誰も使っていない。そこでわれわれは無用なスタートアップ・プロセスをできる限り削った。そしてOSの起動と同時にブラウザも開かれる。ここでわれわれはVerified
Boot〔認証ブースト〕と呼ばれる技術を導入した。Chrome OSはセキュリティー・パッチが発行され次第、自動的にアップデートする。起動のつど、われわれは正しいプログラムが起動されたことを再確認する。高度な暗号化を利用したセキュリティーシステムによるチェックで異常が発見されれば、起動を中止して新しい実行イメージでリブートする。これは完全なシステム・リカバリーに相当する。
現在のOSはアプリケーションにユーザーと同様の権限を与えている。つまりアプリケーションはファイルを書き換えたりできる。だから悪意あるプログラムがさまざまな悪さをできるわけだ。Chrome OSではすべてのアプリはウェブ・アプリだ。セキュリティー・モデルがまったく異なる。Chrome OSではシステム・レベルですべてのアプリを「悪意あるアプリかもしれない」としてチェックする。ハードディスクの内容を書き換えたりできるかなどをチェックするわけだ。
またわれわれはChromeブラウザで採用しているのと同様のサンドボックス〔プログラムの実行領域を限定して外に影響が及ばないようにする技法〕を利用している。Chrome
OSではすべてのタブ〔ウェブページ〕が他のタブとは独立のプロセスとして作動する。
ファイルシステムについて:これは常時、自動的にアップデートされる。ハードディスクだが、ルート・パーティションは読み取り専用に設定される。ルート・パーティションをロックするというのは現在の普通のOSではありえない。
ユーザーデータはすべて暗号化されて保存される。これがセキュリティー維持のカギになる。マシンを紛失した際にこれがユーザーを救う。
しかもローカルに保存されたすべてのユーザーデータはクラウドと常時同期する。つまりマシンを紛失してもデータは失われない。
———ここでSundar Pichaiが戻る———
結局、Chrome OSの本質はユーザーに新しい選択肢を提供するところにある。
今日はまだこの製品のマーケティングについて詳しく語れる段階ではない。現在まだわれわれはソフトウェアの開発を終わらせていない。しかし、すでにハードウェアのメーカーと話し合いを行っている。たとえばわれわれは記憶装置として半導体ドライブだけをサポートする予定だ。サポートするWiFiカードも特定の種類のものになるだろう。
重要な点だが、ユーザーはChrome OSをダウンロードして手持ちのコンピュータにインストールすることはできない。Chrome OS専用の新しいマシンを購入する必要がある。
リリースの時期は、来年末、クリスマス商戦前になるだろう。
ネットブックは大いに普及したが、一部の製品には使い勝手の問題があった。われわれはネットブックとしてはやや大き目のサイズ、フルキーボードと大型のトラックバッドを備えたモデルを考えている。
繰り返すが、ソースコードは今日公開された。Linux kernal、Ubuntu、Moblinなどが現在のわれわれの開発作業で重要な役割を果たしている。このソースコードをベースにオープンソース・コミュニティーがどのような貢献をしてくれるのか注目したい。
適当なタイプのネットブック(とネジ回し)を持っているデベロッパーは今日にでもChrome OSを走らせてみることができる。
———–ビデオデモが公開される———–
Q&A セッション 〔訳注:ノーコメントの類を一部省略〕
Q: Chrome OSネットブックだが、念頭に置いている価格はあるのか?
SP: ノー。特定の価格は考えていない。
Q: デモでOSを走らせたネットブックの機種は?
SP: Eee PCだ。
Q: Chrome OSのApp Storeのようなものを考えているか? デバイスドライバの認証は誰が? 写真を編集したいなどのときにはどうするのか?
SP: App Storeについてはこれから考えていく。– しかしウェブ上には何億というアプリケーションがすでに存在している。
MP: ドライバーについてはハードウェアメーカーと緊密に協力していく。
SP: アプリだが、ウェブにはオンライン版Photoshopのような強力な編集アプリがすでに存在する。しかしChrome OSマシンはたぶん2台目のコンピュータとして使われるだろう。ただし利用時間はいちばん長くなるかもしれない。しかしローカルでの処理が必要ならユーザーは、すでに別のコンピュータを所有しているものを考える。
Q: コーデックやChromeブラウザのネーティブ・クライアントのサポートは?
MP: Chromeブラウザで作動するものはすべてChrome OSで作動する。
SP: われわれはウェブ・アプリがデスクトップ・アプリのように作動する新技術を開発中だ。Chrome OSが完成すればChromeブラウザも強化される。
Q: Silverlightをサポートするか?
SP: 一部のプラグインについては採用できるかテスト中だ。Microsoftとの協力についてはコメントを控えたい(場内から笑い)。
Q: 他のブラウザのサポートは?
SP: ノー。Chrome OSは完全にChromeブラウザ専用だ。他のブラウザは作動しない。しかしこれはオープンソース・プロジェクトなので、他のブラウザ・メーカーが独自にChrome
OS用のブラウザを開発することはできる。
Q: このOSはネットブック専用か? 他のデバイス・メーカーとの協力は?
SP: ハードウェアの仕様に関しては来年半ばごろに詳細が決まると思う。われわれは当面ネットブック(二つ折のポータブル)に集中している。将来はさまざまなデバイスえ作動するようになるだろう。
Q: Gearsを利用したオフラインでのアクセスは? オフラインといえば、飛行機の中などではどうするのか?
SP: このマシンはWiFiでの利用を前提に考えられている。しかしオフラインでさまざまなメディアを接続して、プラグイン&プレイで再生する方法も考えている(音楽を聞いたり、読書したりなどだ)。HTML5ではオフライン機能がサポートされている。
Q: WiFiの規格は?
MP: 802.11nを中心に考えている。
Q: 仮想化は現在すでに利用できるのか?
MP: もちろんだ。ビルドを済ませれば、バーチャルマシン上で動かせる。コンパイルやデバッグにはそれが能率的だ。
Q: Adobeとの協力は? Androidマーケットがカギではないのか? AndroidアプリはChromeマシンで作動するか?
SP: Chrome OSとは別に、オンライン版Photoshopなどを含めて、われわれはウェブの機能を強化するような動きはすべて歓迎している。Androidは現在はChrome
OS上では作動しない。
Q (Mike Arrington): Steve JobsはiPhoneを発表したときにもアプリはウェブにゴマンとあるというようなことを言っていたが〔結局App
Storeを用意することになった〕。 Chromeマシンが発表されたら現在Androidに提供されているようなネーティブ・アプリが欲しいという要求が高まるのではないか?
SP: 現在われわれはウェブ・アプリだけを考えている。iPhoneの場合はやや事情が違うと思う。Appleは自分たちで独自のネーティブ・アプリを作った。われわれはChrome OSをウェブ・アプリ専用にするつもりだ。Netbookは〔iPhoneと違い〕ウェブ・アプリを動かすのに適したサイズだ。
Q: CPUは?
SP: x86と、最終的にはARMもサポートされる。
Q: コードは非常に独自性が高いのか?
MP: 簡単には言えないが、大まかに言ってそのイェスだ。
Q: ビジネスモデルは?
SP: Chrome OSは無料だ。ウェブの利用が増えれば最終的にわが社の利益になる。
Q: Chome OS用に新しい広告サービスを考えているか?
SP: 考えていない。要するにウェブ・ページが表示される。
Q: ユーザーにクラウドの信頼性を納得させる方法を何か考えているか? プライベートなデータをGoogleのサーバの預けることについてはどうか?
SP: 現在クラウドの利用はすでに広く普及している。クラウド・サービスがダウンすれば影響を受けるのはChromeマシンだけではない。その点ではChromeは特別な存在ではない。クラウドの信頼性というのはクラウドのメリットとの比較で評価されるべきだろう。信頼性の問題だが、われわれはユーザーに新たな選択肢を提供するわけだ。選ぶのはユーザーだ。これはオープンソース・プロジェクトなので参加している多くのデベロッパーがそれぞれのユーザーに新しい時代が来たことを説明していくのではないか。
———Googleの共同ファウンダー、Sergey Brinが登壇———
Q: ChromeはJavaScriptをたいへんうまく処理している。Javaのサポートは?
SP: 技術的には何でもできる。しかし現在はウェブアプリに集中している。
Q: プリンタやFlipカメラのサポートは?
SP: 標準キーボード、マウス、記憶装置をサポートする予定だ。印刷に関しては詳しいことを発表できるのは来年だ。もちろんChrome OSはプリンタをサポートする。
Q: オープン・ソース・コミュニティーを再び活気づけることになると思うか?
MP: もちろんだ。そもそも、それがわれわれがオープソンソースのアプローチを取った理由だ。これでオープンソース・プロジェクト全般に良い影響が出ることを願っている。このやり方だとハードのメーカーとも協力しやすい。
Q (TechCrunch ITのライター、Steve Gillmor): ウェブの各ページでリアルタイムの通知/会話機能はサポートされるのか?
SB: 私もそれはブラウザがサポートすべき必須の機能だと思っている。特にChrome OSの場合はそうだ。ユーザーがGoogleにログインしていない状態でのチャットをどう処理するかという問題を解決しようと努力しているところだ。
MP: 新しいリアルタイム通知のAPI標準が策定中だ。
Q: Waveについては?
SB: Waveもサポートする予定だ。
Q: GoogleにとってのChrome OSの戦略的位置づけは?
SB: 他の一部の起業とは異なり、われわれは自分たちの企業戦略にはあまり重きを置かない。われわれが重視するのはユーザー・ニーズだ。ネットブックは現在$300から$400で売られている。つまりユーザーはそういう安価なコンピュータなら何台でも買える。ところが今までたくさんのネットブックをうまく連携して利用する方法がなかった。そこでわれわれはウェブを使えばいいじゃないかと考えた。そしてChrome OSのアイディアが生まれたわけだ。
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(翻訳:滑川海彦/namekawa01)