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「神話をつくろうとする戯曲―― 笑えないよね」




その言葉を口にした、少年の想いは―― 何処に、誰にむけられたものだったのか――














 新世紀EVANGELION −once more again−

 02話  見知らぬ、天井

 みしらぬ、てんじょう













『 いいわね? シンジくん 』




プラグ内。 耳に届いた葛城ミサトの声で、碇シンジはようやく我に返った。

唾を飲み込み、慌てて頷き返す。




「あっ、はい」




大丈夫なわけがなかった。

今の少年の意識には、目の前の使徒の姿しかない。

これが自分の相手。

殺されるかもしれない、敵。

使徒。




『 最終安全装置、解除。 エヴァンゲリオン初号機、リフトオフ! 』




ミサトの指示に従い、リフトの高速具から解放される初号機。

戒めを解かれたその巨体が、やや前屈みにリフトから踏み出す。

サキエルは、その目と鼻の先。

立ち止まったまま初号機と対峙する。




『 シンジくん。 今は、歩くことだけ考えて』




赤木リツコに言われるまま、ただ歩くという動作を思い描く。

普段は意識しないでも行うことのできる、その当たり前の動作を。

言われるままに考えて行う。




「…歩く」




ゆっくりと、緩慢な動きで左腕を前に振る。

次に、右足を踏み出す。

歩き始めた幼児のように、確かに一歩、踏み出した初号機。

端から見れば、それはぎこちない動作ではあるものの。

初号機はゆっくりと、確実に前へと進む。







同時刻―― 発令所。

その光景を見守っていたネルフの職員達は、思わず感嘆の声をあげていた。

今まで一度たりとも起動しなかった初号機。

それが彼らの目前で今、確かに動いているのだ。

彼らにとっては、今までの苦労が報われた瞬間。




「歩いた!?」




E計画責任者、赤木リツコですら例外にもれず、驚きに目を見張る。

実戦という現実を彼女たちは忘れていた。







二歩目。

この途中で足をもつれさせ、赤子のように初号機はアスファルトの道路へと倒れ込んだ。

腕で支えることも出来ず、顔面からアスファルトの道路へと落ちる。

激突。

瞬間、シンジの額に鈍い痛みがはしる。

思わず手で押さえた。

シンクロすると言うことは、エヴァの痛みを自分も受けるということ。

当然、同じように初号機も額をおさえる。

滑稽な人形喜劇。




『 シンジ君! 』




緊迫したミサトの声に、シンジは顔をあげる。

見えたのは、徐々に大きくなるサキエルの姿。

自分は動いていない―― サキエルが近寄ってくるのだ。

―― 身体の芯からわき上がる恐怖。

それはシンジの身体の動きを凍りつかせ、無防備な姿をさらさせる事に繋がる。

その姿から目が離せない。




『 しっかりしてっ! 早く、早く起きあがるのよ! 』




ミサトの指示に意識を取り戻し、シンジの初号機が身を起こすよりも早く。

サキエルが動いた。







初号機の喉と左腕を掴んで引き起こし、力任せに引きちぎろうと、左右に引き伸ばす。

シンジの左腕を襲う激しい痛み。

血管が浮き上がったその腕を、シンジはただ押さえつける。

シンクロのフィードバック。

ミシミシと悲鳴を上げる初号機の巨体。

今にも握りつぶされてしまいそうな左腕と、そのことをシンジに知らせ続ける腕の痛み。




『 シンジ君! おちついて、貴方の手じゃないのよ! 』




ミサトの声に答えられる余裕は、もうシンジにあるはずがなかった。

今少年の腕を襲う確かな痛み。

何を言われても、これはまごう事なき現実なのだ。







初号機を劣勢をサポートするため、発令所の赤木リツコがオペレータに指示を与える。




「エヴァの防御システムは!?」

「シグナル、作動しません」

「フィールド、無展開」

「―― ダメか」




現状、発令所から唯一打てる手だてを失い、唇を噛むリツコ。

パイロットは訓練も受けていないただの少年。

彼の判断でこの状況を変えられる可能性はない。

状況は絶望的。







そして、ついに――







サキエルに握りしめられていた腕の先が一際大きくはねあがり――

力を失ったよう、だらりと垂れ下がった。

握りつぶされた左腕。

声も出せない痛みに、少年は動かない左腕を庇いうずくまる。

初号機の左腕は、もう使い物にならない。







左腕損傷!

回路断線!







初号機の頭部を掴みあげ、その巨体を片手で宙づりにするサキエル。

初号機に反撃らしい動きは見られず。

戦闘訓練すら受けていない今の少年が、この状況を打破する可能性は皆無。

―― サキエルの左腕のパイルが、初号機の頭蓋。

丁度、右目の部分へと打ち込まれた。

身を襲う新たな痛みに、プラグ内のシンジは右目を押さえ、声にならない悲鳴をあげつづける。

操縦など今や、できる状態にはなかった。

容赦のないサキエルの第二撃。

打たれるたび、宙づりにされた初号機の身体が大きく揺れる。

尚も執拗に続けられる攻撃。







『 装甲が、もう、もたない! 』




赤木リツコの言葉の直後――







丁度、五発目のパイルが打ち込まれ。

サキエルの光のパイルは初号機の頭蓋を貫通。

初号機をひきずっった状態でさらに伸ばされ、その奥の高層ビルへと突き立った。




あっけなくふき飛ばされ、初号機の巨体は後の高層ビルにめり込んで止まる。

寄りかかるよう、背中をあずけた姿勢で動きをとめる初号機。

力無く、項垂れたその頭部。

貫かれた右目と後頭部の穴から、赤い血しぶきが飛散する。

猛烈な勢いで噴水のように飛び散る鮮血。

隣のビルの上に力無く、潰された左腕がのりかかっていた。







『 頭部破損 』

『 被害不明 』




『 接続神経が次々と断線していきます! 』

『 パイロット、意識不明!』







ネルフの誇るスーパーコンピューターMAGIが初号機の危険シグナルを知らせる。

非常事態。

オペレーターが次々と伝えるのは、絶望的な初号機の状態だけ。




「シンジくんっ!」




ミサトはたまらずに、彼の名を呼び続けていた。

返事など、あろうはずがないと分かっていても……。











巨神の目は、光を失ったまま――











碇シンジの目が覚めたとき―― 誰も傍にはいなかった。

白一色の無機質な部屋。

物の配置や横たわるベッドなどから、そこが病室だと見当づける。

見覚えのない室内。

窓からさしこむ陽の光が嫌だった。

ベッドに寝ている。

蝉が鳴いていた。

碇シンジははっきりとしない意識の中、ただ呟く。




 「知らない、天井だ」











使徒再来か。あまりに唐突だな

十五年前と同じだよ

災いは何の前触れもなく訪れるものだ

幸いとも言える

我々の先行投資が無駄にならなかった点に置いてはな

そいつはまだわからんよ

役に立たなければ無駄と同じだ

左様、今や周知の事実となってしまった使徒の処置

情報操作

ネルフの運用は全て、適切かつ迅速に処理してもらわなければ困る




「その件に関しては、すでに対処済みです」

「ご安心を」




薄暗い密室の中。

各国の実質政治的権限を有する委員会のメンバー。

ゼーレの皮肉ともとれる発言に対し。

碇ゲンドウは、余裕すら感じられる冷静さで答えていく。







『 昨日の、特別避難宣言に関しての政府発表が、今朝第二―― 』

ピッ!

『 特別避難―― 』

ピッ!

『 今朝の――― 』

ピッ!







「発表は、シナリオB−22、か」




電源を消し。

テレビのリモコンを放り投げてから、葛城ミサトはそう愚痴った。




「またも事実は闇ん中ね」




団扇で顔を仰ぎながら、ミサトは誰に言うでもなく呟く。

露骨にうかぶ不機嫌な顔。

彼女個人としては、こういう行為は趣味ではない。

確かに使徒のことを正式に公表していない現在。

情報規制や隠蔽工作も必要だろう。

それを知ったときの民間人のパニックは、予想できぬほど大規模になりかねない。




「広報部は喜んでたわよ? やっと仕事が出来たって」




コーヒーをいれながら、赤木リツコが応じた。

ミサトがいるのはリツコの研究所。

冷房は効いているのだが、何せ年中夏の島国だ。

外回りの仕事から帰ってくるといつも、ミサトはこうして涼みに来る。




「うちもお気楽なもんねぇ」

「どうかしら。 本当はみんな、怖いんじゃない?」




からかうような、リツコの言葉。

振り返りもせず。

ミサトは一言、こうもらした。




「…あったりまえでしょ」







しかし碇君。 ネルフとエヴァ、もう少し上手く使えんのかね?

零号機に引き続き、君らが初陣で壊した初号機の修理代

国が一つ傾くよ?

訊けばあのおもちゃは、君の息子に与えたそうではないか?

人、時間、金

親子揃っていくら使ったら気が済むのかね?

それに君の仕事はこれだけではあるまい




極秘

人類補完計画 第17次中間報告




そう記された機密書類。

目の前にあるその書類を見据えても、ゲンドウは眉一つ動かさない。




人類補完計画――

これこそが君の急務だ

左様

人類補完計画こそが、この絶望的状況下における、唯一の希望なのだ

我々のね

いずれにせよ、使徒再来における計画スケジュールの遅延は認められん

予算については、一考しよう

では、あとは委員会の仕事だ

碇君。 ご苦労だったな




言いたいことだけを一方的に告げ、席から消える男達の姿。

実際目の前にいたわけではない。

ホログラフィーにすぎない。




部屋に残ったのはゲンドウ、そして委員会の長。

キール=ローレンツ。

彼はゲンドウをまっすぐに見据え、最後にこう告げた。




「碇。 後戻りはできんぞ?」




そう言い残して、キールの姿も闇の中に消える。

ゲンドウだけがただ一人残った、暗い室内。

彼は姿勢を崩すこと無く、静かに口を開いた。




「わかっている。 人間には時間がないのだ」




サングラスの下の目に、迷いは見えない。







碇シンジは病室を出て、病院の廊下に立っていた。

その行為に特別な理由はない。

窓から見える景色を、ただ眺めているだけ。

これといって、するべきこともなく。

かといって行く場所もない。

退院は、ネルフの人間が来るまで不可能だろう。

シンジに出来るのは、ただ時が過ぎるのを待つことだけだ。




看護婦たちがベッドを運んでくる。

ここは病院、特別珍しいわけではないだろうが。

何気なく目にしたそのベッドの主に、シンジの目は釘付けになる。

蒼い髪

白い肌

赤い瞳

あの日自分の目の前で、満身創痍で初号機に乗ろうとした、あの少女。

右目は包帯で覆われている。

無事な方の左目は確かに、シンジの姿をとらえていた。




―― 一言の言葉を交わすことなく。

ベッドはシンジの傍を通り過ぎ、廊下を運ばれていった。







破損した初号機のパーツを回収し、輸送するトラックのシートに座り。

ミサトは冷たい風を身体に受け、悠々としていた。




「やっぱクーラーは人類の至宝! まさに科学の勝利ね」




ポニーテールに結った長い黒髪。

アンダーシャツ一枚の上半身。

この年齢の女性が、とても人前に出られる格好ではない。

そんなミサトの隣に座り。

車内電話を受けていたリツコが受話器を置いた。

彼女は普段通りの白衣姿だ。




「シンジ君、気がついたわよ。 外傷はなし」

「少し記憶に混乱が見えるそうだけど」




シンジの話題を振られ、リツコへと向き直るミサト。




「まさか、精神汚染じゃ!?」

「その心配はないそうよ」




間をおかず、ミサトの問いかけにあっさりと告げるリツコ。

彼女の訊くことなど最初から分かっているようだ。




「そう。 そうよねぇ…」

「いっきなり、だもんね」




安堵の表情で、窓の外へと顔を向ける。

そんなミサトに、リツコも。




「無理もないわ。 脳神経に、かなりの負担がかかったもの」

「こころ、の間違いじゃないの?」




ミサトの言葉に、リツコからの返事はなかった。

同じ少年に対する二人の女性の認識は、ここでも違っていた。







迎えが来るのを、一人病院のロビーで待つシンジ。

無表情に、自分の左腕をじっと眺めている。

外傷はない。

思い通りに動かせる左腕。

へし折られる生々しい感触だけが、今もその腕に残っている。




あれは夢ではない。

確かに彼の体験した現実だった。







第三新東京市。

今も迎撃要塞都市として完成を目指し、各地で工事が続いている。

その様子を見守りながら、ミサトは呟く。




「エヴァとこの街が完全に稼働すれば、いけるかもしれない」




彼女の言うそれは、圧倒的な力を有する使徒に、人類が勝利するということだ。

ミサトの横顔を見つめて、、リツコは苦笑する。




「使徒に勝つつもり? 相変わらず楽天的ね」

「あら? 希望的観測は、人が生きていくための必需品よ?」

「そうね、あなたのそういうところ。 助かるわ」





それは口にするほど生やさしい道のりではない。

そのことが理解っていて、それでもそう言い切ってみせる葛城ミサトという女性。

彼女を知っているからこそ、赤木リツコはやはり苦笑する。







ネルフ本部。

シンジの身柄を病院から預かり、本部へと連れてきたミサトは、目の前の副指令。

冬月コウゾウを見据えて、思わず聞き返した。

それぐらい彼女にとって、シンジの待遇は信じがたい内容だったのだ。




「一人暮らし!? 同居ではなくて、ですか?」




冬月もミサトの疑問も予想していたのだろう。

ミサトに対し、冬月は簡潔に説明する。




「碇達にとっては、お互いがいない方が当たり前なのだよ」

「むしろ、一緒にいる方が不自然……と、いうことですか?」

「そうだ。 彼の個室は、この先の第六ブロックになる。 問題は無かろう?」

「…はい」




冬月に訪ねられて、率直にそう応じるシンジ。

あまりに聞き分けのよすぎる少年と、顔の高さを併せるようかがみ込み。

ミサトは念押しするよう、もう一度彼に尋ねる。




「…それでいいの? シンジ君」




本当は父親と同居したいのに、無理に我慢しているのではないのか。

そんなミサトの思いとは裏腹に。

シンジの表情には、不満や戸惑いの色は微塵もなかった。

その事がさらにミサトを戸惑わせる。




「いいんです、一人の方が」




それは何かを求めようとせず、諦めている者の言葉。

まだ幼い少年の、こんな表情を見て黙っていられるほどに、葛城ミサトは達観していなかった。

すぐさま身を翻し、副指令へと向き直る。




「でしたら、お願いがあります。 副指令」

「何かね? 葛城一尉」




冬月の表情が僅かにゆるんだように思えた。

彼は最初から、ミサトならそう言うと予測していたのかもしれない。







「なんですってっ!?」




受話器の向こう側から届けられた親友の言葉に、赤木リツコは思わず耳を疑った。

まったく。

突然何を言い出すのか、あの女は。

そんなリツコの胸中を知らないだろう電話の相手は、いつもの調子で話を続ける。







「だから! シンジ君は、わたしんとこで引き取ることにしたから、ちゃんと上の許可もとったし」

「心配しなくても、子供に手ぇ〜出したりしないわよぉ?」

『あたりまえじゃないのっ!!』




受話器からの怒鳴り声に、思わず葛城ミサトは耳を離す。

いったい何を怒っているのだろうか、あの女は?




『全く何考えてるの貴方って人は!いっつもそう――!!』

「…あいかわらず、ジョークの通じないヤツ」




今なお大音量でがなりたてるリツコに呆れながら。

ミサトは思わずげんなりした。

そんな彼女の後ろでは、シンジが待たされていた。











「さ〜て、今夜はぱーっとやらなきゃね♪」




ミサトの愛車ルノー……先日のサキエル襲来時のままベコベコだが。

その助手席に座るシンジは、ミサトの言葉に顔を向けた。




「何をですか?」

「もちろん、新たなる同居人の、歓迎会よ?」




『 やっぱり引っ越されますの? 』

『 まさかホントにここが戦場になるなんて、思ってもいませんでしたから 』

『 主人は子供と私だけでも、疎開しろって 』




コンビニエンスストア。

主婦らしい女性達の会話を後ろに訊きながら。

シンジは目の前の光景に、正直驚きを隠せなかった。

キャリーにのった買い物カゴ一杯に。

レトルトカレーやカップ麺、缶詰といったインスタント食品だけが積まれていく。

その全てが、葛城ミサトの入れた物だ。

どうやら自炊はしないらしい。




『 いくら要塞都市だからっていったって、何一つあてにできませんもんね 』

『 昨日の事件だって… 』




すれ違い様、シンジの耳にそんな会話が届いた。

思わず顔を背け、下を向いてしまう。

言いようのない罪悪感。

そんなシンジの姿を、ミサトは何も言わず見つめていた。




「すまないけど、ちょっち、寄り道するわよ?」




代金を払い終え、走り出した車の中でミサトがそう言った。

このまま帰るものだと思っていたシンジにとっては意外な言葉。

不思議に思い、聞いてみる。




「どこへですか?」

「んふ♪ い・い・と・こ・ろ♪」




どうやら、着くまでは秘密にするようだった。







ミサトに連れられてきたのは、丘の上の寂れた展望台だった。

第三新東京市の大部分がここからは一望できる。

シンジとミサト以外、誰もいない場所。




「なんだか、寂しい街ですね」




街を見下ろし、そう呟くシンジには応じずに。 ミサトは腕時計に目をやる。




「時間だわ」




ヴゥ―――ンゥヴ!!

ヴゥ―――ンゥヴ!!




突然街中で鳴り響いた、甲高いサイレンの音。

それを合図に次々と変化が生じだす。

街の至る所から、格納されていたビルが地上へと現れる。

本来の第三新東京市。

これがその姿だった。




「すごい…ビルが生えてくる!」




手すりに身を乗りだし、思わず凝視してしまうシンジ。

そんな少年の、初めて見せた年相応の姿に、ミサトは微笑む。




「これが、使徒迎撃戦用要塞都市。 第三新東京市」

「私たちの街よ」




シンジへと視線を向け、穏やかな顔で、ミサト。

シンジはただ、そんな彼女を見つめ返すだけだ。

声もないシンジに、ミサトはもう一度言った。




「あなたが、守った街」







コンフォート17

葛城ミサトの住居であるマンション。

そしてこれから、碇シンジが暮らす場所でもある。




「シンジ君の荷物は、もう届いてると思うわ」




後ろを歩くシンジに、ミサトは振り返らずそう言った。

キーを回し、玄関を開ける。




「実は、アタシも先日、この街に引っ越してきたばっかりでね?」

「さ、はいって?」




靴を脱ぎ、玄関に上がったミサトに促されても。

シンジは見るからに躊躇っていた。

気後れしてしまっている。




「あ、あの…おじゃまします」




風が吹けば消えてしまいそうな声で、やっとそれだけを口にする。

そんなシンジに、ミサトは僅かに眉をよせた。




「シンジ君? ここは、あなたの家なのよ?」




少し怒った声で言うミサト。

シンジは意を決し、やっと玄関のドアをくぐる。




「……た、ただいま」

「はい。 おかえりなさい」




今度は満足そうに頷き。 ミサトは新たな家族を迎え入れた。







「ちょ〜っち、ちらばってるけど、気にしないでね?」




ミサトの言う『 ちょ〜っち 』とは、いったいどれ程の範囲を表す言葉なのか。

シンジは目の前に積み上げられた、それこそ部屋を埋め尽くしかねない空き缶に目を丸くしていた。

ビール缶が圧倒的に多い。

他には、ウイスキーのボトルやおつまみの入っていた袋。

空になったコンビニ弁当やカップ麺。

とにかく散乱している。

見かけとは全く結びつかないミサトの部屋の惨状に、シンジは声も出ない。

およそ、人の住むべき場所とは思えなかった…。




「これが・・・・・・ちょっち?」

「あ、ごめん。 食べ物、冷蔵庫に入れといて」




着替えの途中だろう。

ミサトが部屋から顔だけを覗かせてそう言ってきた。




「あ、はい」




そう答えて冷蔵庫を探す。

三段に別れた、緑色の冷蔵庫のドア。


1番上、オープン。

「氷」

1番下、オープン。

「つまみ」

真ん中、オープン。

「ビールばっかし」




見事に他の物がない冷蔵庫の中身に閉口する。




「どんな生活してんだろう?」




ぼやき、改めて部屋を見渡す。

丁度対角線上の部屋の隅に、白い冷蔵庫がある事に気がついた。




「あの、あっちの冷蔵庫は?」

「ああ、そっちはいいの。 まだ寝てると思うから〜」




ミサトの返事に、首を傾げる。

寝ている?

冷蔵庫に、いったい何が?







電子レンジでチンしただけの、簡単お手軽レトルト食品の数々。

見事にコンビニのメニューだけ。

居酒屋のつまみ以外にも、シンジが食べられるものがあるのが救いだった。




「いっただっきま〜〜っす!」




まず一番に、ミサトは“えびちゅ”のタブをおこした。

そのまま一息に、のどを鳴らして煽る。

瞬く間に一本目を空けて、ミサトは缶を勢いよくテーブルに置いた。




「ぷ・・・っは〜〜っ〜〜! く〜〜〜〜〜〜っ!!」




「やっぱ人生、この時のために生きてるようなもんよねぇ」




目の端に涙までうかべて、心底幸せそうに言ってしまえるミサト。

完全にオヤジの姿。

彼女はシンジが箸もとらないのに気がついて、次の缶を手にしながら尋ねた。




「食べないの? 結構うまいわよ? インスタントだけど」

「いえ、あの……こういう食事、慣れてないんで」




いつも、一人で食べていた。

誰かと一緒に暮らすなんて、経験した記憶がなかった。

その戸惑いと不安感が、完全にシンジを萎縮させていた。

そんな少年の脆い部分に、ミサトはあえて気づかないふりを続ける。

大きく頭を振って、




「ダメよっ!! 好き嫌いしちゃあっ!!」




ビール缶を持つ手を大きく振り、目をつりあげてテーブルに身をのりだす。

そんなミサトの勢いに負け、シンジはイスから転げ落ちそうになった。




「いや、あの、違うんです」

「えっと、あの…」




狼狽するシンジ。

彼がもう少し大人ならば、身を乗り出したせいでのぞけるタンクトップの胸元にも気が回っただろうが。

若さ故の彼を、誰も責められはしない。




そんな彼の態度に、表情を一変させて。

満面の笑みを浮かべたミサトは、シンジに笑いかけた。




「楽しいでしょう?」

「…え?」

「こうして他の人と食事すんの♪」




怖さはある。 戸惑いもきえない。

それでもシンジは、気がつけば答えを口にしていた。




「……あ、はい」




―― ミサトの言うとおり。

誰かと食事をすることが、シンジは不思議と嬉しく感じていた。

彼が求めていた温もりとは、もしかしたらこういうものなのかもしれない。







ミサトの飲んだ“えびちゅ”の空き缶が、20本を越えそうになった頃。

シンジとミサトはすでに夕食を終え、生活当番表なるものを作成していた。

朝夕の食事当番、ゴミを出す係、風呂掃除。

そういったことを、曜日ごとにやる役割分担をしているのだ。

二人のそれは、ジャンケンの勝ち負けで決めている。

表を見る限りでは、ミサトの当番はシンジの半分にも満たないが…。




「公平に決めた生活当番も、これでオールオッケーね」

「…はい」

「さて、今日からここは貴方の家なんだから、な〜〜んにも遠慮なんていらないのよ?」




ウインク一つに人差し指でバキュン。

そこまで言えるあんたが大将。

もはや返す気もうせた碇シンジ。




「…はい」




お気に召さなかったらしい。

腕組みし、不満げに眉を寄せるミサト。




「も〜う、はいはいはいはい辛気くさいわねぇ!」

「おっとこのこでしょ!? しゃきっとしなさい、しゃきっと!」




シンジの頭を手でつかみ、ぐりぐりと髪をかき回す。

そんなミサトに、シンジはただただ頷くばかり。




「うわわわ、はいっ!」

「…まあ、いいわ。 やなことはお風呂に入って、ぱ〜っと、洗い流しちゃいなさい!」

「風呂は命の洗濯よ?」




彼女の十分の一でも図太さがあれば、人生観かわるだろうか。

そんな風に考えながら、シンジはため息をこぼした。







―― お風呂場に、下着を干さないで欲しい。

それが風呂場に入ってすぐ少年の思ったことだった。

できるなら、自分に風呂を勧める前に取り込んで欲しかった。

思わず赤面し、見ないようにしながら風呂へのドアをあける。

いるはずのないものが―― そこにいた。







 「うわああぁっっ!!!」







風呂に入ったはずのシンジの悲鳴に、ミサトはビールを手に小首を傾げた。

なんだろう?

自分の下着がそんなに驚いた?

思春期真っ直中の少年とはいえ、ちょっちサービスしすぎだったかしら?

―― そんなことを考えるミサトの前に、一糸まとわぬシンジが駆け込んできた。




「みみみみみ、みさとさん!!」

「なに?」

「ああぐあああれあぐ!」




激しくどもっている。

興奮しすぎて、言うべき言葉も分かってない。




そのシンジの足下を、ミサトの同居人が悠然と歩いていく。

タオルを首にかけているところを見ると、風呂上がりらしかった。




「…あれ?」




シンジの目も、その彼を追っている。

騒ぎの原因は、彼らしかった。




「ああ、彼? 新種の温泉ペンギンよ♪」




彼。

首の部分にタオルをかけたペンギンを、シンジは改めて凝視する。

ペンギンの方は平然と、自分用の白い冷蔵庫へと向かった。

下部につけられたスイッチの中から、OPENを選んで押す。

中には彼の居住スペースがあるらしかった。

シンジをしばらく見つめてから、中に入っていく。

唖然としたまま、それを見送るしかないシンジ。




「あ…あ…あれ、は?」




冷蔵庫を指さし、ミサトに問うシンジ。




「名前は、ペンペン。 もう一人の同居人」




応じて、テーブル上のビールを手に取る。

一口呑んでから、まだ唖然としたシンジに。




「まえ、隠したら?」

「…え?」

「うわぁ!」




顔を真っ赤にして、すごすごと風呂に逃げていく少年。

そんなシンジを見送って、ミサトは自嘲気味に呟いた。




「ちと、わざとらしく騒ぎすぎたかしら…。 見透かされてるのはこっちかもね」







「葛城、ミサトさん」




湯船につかり、天井を眺めながら。

シンジは今日から同居することとなった彼女の名前を呟いた。

悪い人じゃない。

それが今日一日、彼女と過ごした感想。




“風呂は命の洗濯よ”




先ほど言われた彼女の言葉が、シンジの脳裏に自然と浮かぶ。

確かにお湯の気持ちよさは格別だと思う。

けれど―― 少年は口にする。




「でも、風呂って嫌なこと思い出す方が多いよな」




自分を見下ろす冷徹な父の顔。

血を流し苦しんでいる、エヴァに乗ろうとした少女の顔。

そして―― 使徒の姿。




「父さんと……綾波レイ、か」







『シンちゃんのお部屋』

そう書かれた紙を入り口に貼り付けた、シンジに用意された部屋。

電気は消してある。

イヤホンから洩れる音楽さえなければ、身じろぎしないシンジは眠っていると思われるだろう。

布団に横になり、愛用のS−DATを聞いている。

今夜は眠れそうには、なかった。







「……そう。 あんな目にあってんのよ? また乗ってくれるかどうか」




湯船に胸元までつかりながら。

ミサトは受話器を片手に、バスタブで身を休めていた。

電話の相手は、赤木リツコ。




『彼のメンテナンスも、貴方の仕事でしょう?』

「怖いのよぅ。 どう触れたらいいのかわからなくって…」

『もう泣き言? 自分から引き取るって、大見得きったんじゃない?』

「うるさい!」




乱暴に電話を切る。

ミサトの脳裏には、初号機と使徒の戦いが思い起こされていた。

シンジを乗せるしか、自分たちが生き延びる術はなかった。

それが正しかったと本当に言えるのか。

彼を乗せるという罪悪感を正当化するために、そう自分に言い聞かせただけではないのだろうか。




あの時。

私はシンジ君を、自分の道具として見ていた。

リツコと同じか。

使徒を倒したと言うのに……。




「―― 嬉しくないのね」




ミサトの言葉は湯船から立ち上る湯気とともに、浴場の天井へと吸い込まれていった。







シンジはただ、部屋の天井を眺めていた。

ここもまた、彼の知らない天井。

当たり前だろう。

この街で知ってる場所なんて、どこにもない…。




“ここはあなたの家なのよ?”




ミサトの言葉がまた思い起こされる。

何故自分は、ここに残ることを選んだのだろうか?

今までいた田舎に帰ることだって、選ぼうと思えば選べたのに。











頭部を貫かれ、ビルにもたれ込んだ状態で、完全に沈黙した初号機。

動かない敵にとどめを刺すべく、サキエルはゆっくりと歩み寄る。

初号機の頭を掴み挙げ、宙づりに。

初号機に動く気配は、ない。




その腕が、光のパイルを打ち込むより先に――




突如現れた“腕”によって、肘のところでサキエルの腕が切断された。




青い鮮血を飛び散らせ。

切られた腕を庇いながら後退するサキエル。

それを追うようにして。

空間の裂けめと呼ぶのが相応しいだろう闇の中から、第三の巨人が姿を現す。




サキエルの攻撃から解放され、力無くビルへと倒れ込んだ初号機。

パイロットの安否はわからない。

それを後目に。

漆黒の、夜の闇を思わせる巨人の姿がそこにあった。

エヴァを思わす外観の巨人。

初号機を鬼神にたとえるなら、こちらはまさに悪魔の出で立ち。




横長の、赤く輝く細い双眼。

黒い肌、所々に銀色の模様が浮かびあがるその姿。

しかしこれはエヴァではない。

それを知らせる表示を、コンピューターMAGIは示していた。







『 パターン青、間違いなく使徒です! 』

『 馬鹿な? この距離まで気づかなかったというのか!? 』

『 分かりません! 突然現れました! 』







オペレーター達が悲鳴じみた声で、目まぐるしく変化する状況を逐一報告していく。

それを後ろに聞きながら。

ミサトは尚も、沈黙した初号機に呼びかけて続けた。

中で意識を失っているであろうパイロット。

碇シンジに向けて。




「シンジ君! 返事をして、シンジ君! 生きて帰るって、約束したはずでしょう!?」

「無駄よミサト。 パイロットは完全に意識を失ってるわ」

「ならどうしろっていうのよ!」

「…分かるわけないでしょう? 初号機は完全に沈黙、零号機は凍結中」

「新手の使徒と相打ちになる偶然にかけるしかないわね」




リツコの言葉に、ミサトは何も返さなかった。

モニターの向こう側では、サキエルと新たな使徒との戦いが始まっていた。







サキエルの攻撃は、前触れもなしに放たれた。

漆黒の使徒の足下から空へと突き抜けるように、十字架を模した光が生じる。

たったの一撃で、都市の大部分を焦土と化す光。

特殊装甲版を易々と蒸発させてしまう脅威の熱線。




その十字架を、中から文字通り吹き散らし――

熱閃に包まれたはずの黒い使徒が、再び姿を表した。

それらしいダメージも見られない。

あの熱線を、防ぎきったというのか。







『 無傷!? 』

『 ATフィールド。 やはり使徒はもっているのね 』




理論上、破れるものは存在しない脅威の力。

絶対防御壁。

それがATフィールド。




弧を描くよう跳躍する使徒。

サキエルの胸部にある二つの顔へと、文字通り踵から蹴りを見舞う。

それによって、人骨を思わす顔の一つが半壊した。

ミサイル攻撃をも無力化されたサキエルのATフィールドが、完全に無効化されている。







『 ATフィールドを中和……いいえ、浸食しているんだわ 』

『 勝負はついたようね 』




赤木リツコの言うとおり――

モニター上で激突する二体の使徒の力の差は明白だった。







防御らしい防御もできず。

ビルの建ち並ぶ都市を次々と破壊しながら、豪快に吹き飛ばされるサキエル。

衝撃が都市を強く揺さぶる。




倒れ込んだ腹部の赤いコアへと、間をおかず跳躍した使徒の両膝が決まる。

黒い使徒の動きは、人間の動きと酷似しているように思えた。




身体の上に乗られたサキエルが、残った右腕を使徒へと突き出す。

初号機の頭部をも破壊した光のパイル。

それは使徒の胸部へと叩き込まれるはずだった。

その身体を守る、赤い光の壁。

ATフィールドに阻まれさえしなければ。

…サキエルの攻撃は、何一つ通用しない。




馬乗りになった使徒の右手に、赤い光が収束する。

それは丁度、ナイフのような形状。

一閃したその刃は、サキエルの右腕をも容易く切断してみせる。







『 ATフィールドの形を変化させて武器化した! そんなことが、可能だというの? 』




赤木リツコがこれだけ取り乱すのは、本当に珍しい。

ATフィールドの研究データでは、そこまで辿り着いていなかったのか。

とすれば、エヴァでも可能なのかもしれない。

ミサトは何も言わず、モニターから目を離さなかった。







手も足も出ないとはこのことだろう。

両腕はなく、光線すらも通じない。

サキエルは今や、黒い使徒と戦う術をもたなかった。

その黒い使徒の両手に生じたATフィールドの刃が、サキエルの胸部。

二つの顔へと突き立てられる。

間をおかず―― そのままXの字に切り裂いてみせた。

顔の真下にある赤い紅玉。

サキエルのコアを破壊するために。




ただ一度だけ、大きく身をあえがせて。

サキエルは完全に沈黙した。

第三使徒サキエル。

初号機を戦闘不能にまで追い込んだ使徒の、あまりにあっけない幕切れ。







殲滅を確認し。

立ち上がった使徒は、サキエルの身体を両手でつかみ挙げた。

使徒の赤い双眼が、一際大きく輝く。




サキエルを包み込むよう、球場にATフィールドを展開。

フィールド内部に包まれたサキエルを、紅蓮の炎が包み込む。

サキエルの身体が焼き尽くされるのに、十秒と時間を必要とはしなかった。







発令所のモニターにも、一部始終その光景は映し出されていた。

初号機の歯が立たなかったサキエルを容易く殲滅し。

そのうえで、倒した相手を焼き尽くす徹底ぶり。

ネルフ唯一の戦力だった初号機も、すでにサキエルによって沈黙させられている。

動けたところでこの使徒を相手に、何もできはしなかっただろうが。

切り捨てたサキエルの両腕をも律儀に焼き尽くし。

使徒は初号機へと進路をかえる。

新たな獲物を滅ぼすために。







食い入るようにモニターを見ていたミサトが、手早くオペレーターに指示を出した。

このままむざむざと、シンジを殺させるつもりはない。

たとえ倒せないまでも、一矢報いる。

それが子供を戦場へと送った、自分の責任。




「使える砲座、ミサイル、全て叩き込んで!」

「無理よミサト。 まだ第三新東京市の防衛システムは使用不能なのを忘れたの!?」

「金と時間かけるだけかけて、必要なときには一発も撃てないっていうの!?」

「『迎撃要塞都市』が笑わせるわよっ!」




堪えようもない苛立ちを、目前のコンソールへと叩きつける。

血がつたい、床を赤い色で染めた。

唇をかみしめ、その床へと視線をおとす。

無力感。

それだけがミサトの心をしめていた。




「…ミサト。 あれを見て」




今日はもう何度目だろうか。

普段聞くことなど滅多にない、赤木リツコの驚愕した声。

周囲のざわめきも手伝って、ミサトはモニターへと視線を向けた。

―― そこに映る映像は。

黒い使徒が初号機を抱え、出撃の際利用したリフトに運んでいる姿だった。







葛城ミサトやオペレーター達が騒いでいるのを眼下に。

冬月コウゾウは、思わぬ結果に驚きを隠せなかった。

黒い使徒は初号機をリフトへと運び。

そのまま音もなく。

現われた時と同じよう、闇の中に消えていく。




それっきり、使徒の反応はない。

第三新東京市は、その姿をとどめている。

危機は回避されたのだ。











「死海文書に書かれていないできごとか」

「いるはずのない使徒が同じ使徒が討ち、我々人間を救う」

「何とも、因果な話だな? 碇」




自分の上官である愚かな男。

碇ゲンドウへと視線を向ける。

彼は机に肘をのせ、腕をくんだいつもの姿勢をやめていない。

しかし冬月にはわかる。

この男が今、その心の内で恐ろしく動揺していることが。

だからこそ、この姿勢をとこうとしないのだと。

他人から、それが動揺を悟られない方法だと知っているから。




「問題ない。 修正は可能だ」

「そうかね」

「ああ」




碇ゲンドウの言葉は。

まるで自分自身に言い聞かせているよう冬月には聞こえた。











「シンジ君、あけるわよ?」




ミサトの声が聞こえて、シンジはその身を固くした。

もう寝ていると思っていたのだが…。

こんな時間に何の用だろうか。

ふすまが開き、ミサトが入り口に立つ。

シンジは息を殺し、寝ているふりを続けた。




「一つ言い忘れてたけど」

「貴方は人に誉められる、立派なことをしたのよ?」

「胸をはっていいわ」




立派なこととは、あのロボットに乗ったことだろうか。

それが誉められることだとは、シンジには思えない。




「おやすみ、シンジ君」

「頑張ってね」




襖を閉める際、ミサトの言ったその言葉。

それは不思議と、シンジには心地よいものだった。

誰かと一緒にいるというのは、悪いものではないのかもしれない。











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