6月の朝雲ニュース

6/25日付

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戦闘機の生産技術基盤のあり方懇談会第1回会合
下請け、崩壊の危機
生産空白期、熟練工など喪失


戦闘機生産基盤懇談会で、生産終了の影響について有識者の意見を聞く岩井防衛参事官(左)(6月17日、防衛省で)

 防衛省は6月17日、「戦闘機の生産技術基盤のあり方に関する懇談会」(座長・取得改革担当防衛参事官)の第1回会合を開き、F2戦闘機の生産が終了する平成23年度以降、国内の戦闘機生産が空白期に入ることから、生産技術基盤の維持にどのような影響が生じるかを分析するため、国内企業10?20社程度の調査を決めた。調査結果は第2回会合に報告する予定。
  国の厳しい財政事情や装備品の高性能化・高価格化などで国内調達量が減少し、防衛産業の衰退が懸念されていることから象徴的な戦闘機生産現場に焦点を当てて現状を調査、問題点を整理するのがねらい。戦闘機の生産は、主契約企業につらなる企業が約1000社以上といわれ、受注量の減少により生産ラインを維持できず転廃業する企業が相次いでいる。
  調査内容は@売上高や従業員数などの基本情報のほか、実績、国内で戦闘機製造がなくなった場合の見通しA下請け企業との取引状況B人材・技術・設備の喪失見込み、戦闘機の維持運用への影響C防衛省に対する要望??などについて文書で回答を求めるほか、日本航空宇宙工業会が行う聞き取り調査に防衛省も同行する、など。
  第1回会合で説明した航空宇宙工業会の資料によると、日米共同で開発したF2戦闘機の機体生産は主契約社の三菱重工を頂点に、特定下請け会社の川崎重工、富士重工、その下に下請け会社1095社(エンジン・レーダー類は含まず)がつらなる。
  平成23年度でF2の生産が終了し、その後の生産予定がなく、先行きが不透明だとして戦闘機生産から撤退する下請け企業が増加。精密鋳造品、機械加工、板金加工など10数社が既に撤退、スチール鋳造品、レドーム・燃料タンクなど数社が撤退中、鋳鍛造品、形材、戦闘機用タイヤ企業など10社が撤退を表明しており、生産技術基盤の裾野は崩壊の危機に瀕しているという。
  戦後日本の戦闘機生産は米国製のF86F戦闘機の導入以来、ライセンス国産という手法で技術を蓄積。この間、国産初の超音速機T2高等練習機、F1戦闘機を国内開発し、日米共同開発でF2戦闘機を手がけるまでに技術力を向上させてきた。
  生産予定がなくなると、定期修理などのメンテナンスが中心となり、生産ラインも維持できなくなるため、育成に30年かかるといわれる熟練工の喪失や知識・経験・設備などを駆使して問題を解決しながら製品を作り上げる高度な統合能力なども失われると見られる。
  調査は6月中旬から7月中旬まで実施し、次回の会合に概要を報告、8月中に中間報告をまとめる予定。