西日本新聞

PAC3配備 使わない「努力」が前提だ

2009年11月23日 10:53 カテゴリー:コラム > 社説

 日米で共同開発した弾道ミサイル防衛(BMD)システムの一環として、地対空誘導弾パトリオット(PAC3)の実戦配備が九州でも始まった。

 すでに第1次配備を終えた福岡県の航空自衛隊芦屋基地を皮切りに、来春までに同県内の築城基地、高良台基地に配備するという。

 BMDは飛来する弾道ミサイルをレーダーで探知し、着弾前に迎撃するシステムだ。1998年の北朝鮮の弾道ミサイル発射実験をきっかけに日米共同で技術開発を進めてきた。

 具体的には、弾道ミサイル監視レーダーが探知したミサイルを、まず近海に展開する海上自衛隊のイージス艦が海上配備型迎撃ミサイルSM3によって大気圏外で迎撃し、撃ち漏らしたミサイルをPAC3で撃ち落とす仕組みだ。

 PAC3については、2007年3月の空自入間基地(埼玉県)を皮切りに実戦配備が始まった。九州は首都圏、近畿・中京圏に続く配備となる。

 第1期計画として、11年度までにBMD機能を持つイージス艦4隻と、全国16カ所の空自部隊にPAC3が配備される。04年度から始まったシステム開発整備費の総額は、来年度の概算要求分を含めて約1兆円に上る。

 日本のBMDシステムが、北朝鮮が保有・配備している中距離弾道ミサイルを事実上の防衛対象に想定していることは言うまでもない。

 北朝鮮は1998年以降も、国際社会の警告を無視して弾道ミサイル発射実験を続けている。2006年秋と今年5月には核実験まで強行した。日本にとっては極めて深刻な脅威である。

 万一の場合を考え、大量破壊兵器を搭載するミサイルから国民と国土を守る防衛網を整備するのは、自衛策として当然と考える人たちもいるだろう。

 日米防衛当局も「BMDは国土防空に有効な迎撃システムであり、他国からの弾道ミサイル攻撃などの脅威を抑止する効果がある」と強調する。政府は「自衛のための装備で専守防衛にもかなう」とも説明してきた。

 そうした一面は否定しないが、脅威を「それ以上の力」で封じ込めようとしたブッシュ政権時代の米国流抑止論が、かえって地域に緊張を高めてきた。北朝鮮やイランがそのいい例だろう。

 BMDシステムの整備が完了したら、次は「敵基地攻撃能力の整備を」となる。それが先制攻撃論へとエスカレートする恐れはないのか。脅威をあおって、日本の安全保障政策の根幹である専守防衛が揺らぐことがあってはならない。

 地域の平和と安定には「兵器による抑止」以前に「外交努力による信頼醸成」が必要であり有効なことを、あらためて確認しておきたい。

 今回、九州にも配備されたPAC3が使われずに済むことを願う。


=2009/11/23付 西日本新聞朝刊=

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