「時事深層」

時事深層

2009年11月25日(水)

「民主不況」に現実味

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日本経済は7〜9月期の実質GDP(国内総生産)が前期比年率で4.8%増と急回復した。一方で消費者心理は低迷する。輸出に頼る回復には、政策による下支えが欠かせない。政府の対策は作成が遅れ気味。政策不在を放置すれば、「民主不況」が現実味を帯びる。

 内閣府が16日に発表した2009年7〜9月期のGDP(国内総生産)は物価変動の影響を除いた実質ベースで前期比(年率換算)4.8%増と、2007年1〜3月期以来の高い伸び率だった。多くの市場関係者の予想に反して設備投資が6・四半期ぶりに増えるといった好材料があったが、足元では今後、景気が悪くなるというシグナルも多くある。その1つが消費者心理の改善テンポが鈍ってきたことだ。

景気後退期は「笑点」上昇

景気の先行き判断指数と消費者態度指数の推移

 「消費者心理の指標は弱い。今後の景気回復はもたつくだろう」。三井住友アセットマネジメントの宅森昭吉・チーフエコノミストはこう言い切る。内閣府が実施した「景気ウオッチャー調査」によると、今後2〜3カ月の景気について聞いた「街角景気の先行き判断指数」は10月に42.8と前月に比べて1.7ポイント下がった。年明けからは上昇が続いたが、6月(45.6)を境に、頭打ち感が出ている。

 これに加え、宅森氏が景気の動きを象徴すると見ているのが、お笑い番組「笑点」の視聴率だ。大きなマイナス成長だった2008年10〜12月期と2009年1〜3月期は「その他娯楽番組」の中で週間視聴率トップになる回数が増えた。「日曜日の夕方に自宅にいる人が多いことは消費不振をうかがわせる」(同氏)。笑点の視聴率は10月以降、再びトップに立つ回数が増えてきた。

国内総生産の推移(季節調整値、年率換算)

 7〜9月期の実質GDPで、個人消費は前期比0.7%増と堅調だった。しかしこれも、物価が大きく下がった結果、実質値が押し上げられた要素が大きく、実感に近い名目消費は同0.1%減。デフレ特有の動きと言える。ニッセイ基礎研究所の斎藤太郎・主任研究員によると、「原油の値上がりなどを考えると、前月比で見た物価はこれから上がる。物価下落が実質消費を下支えする効果も、あまり期待できなくなる」。

 2009年7〜9月期のGDP全体でも、実感に近い名目ベースでは前期比年率で0.3%減と、6・四半期連続のマイナス。名目GDPが過去最高となった2008年1〜3月期に比べると、2009年7〜9月期は年率換算でなお約40兆円も落ち込んでいる。マネックス証券の村上尚己・チーフ・エコノミストは「経済のパイが増えなければ企業の利益も増えず、株価の重しになる」と語る。

「設備投資は少ない」

 こんな内需の不振を如実に映すのが銀行の貸し出し行動だ。日銀によると、10月の全国銀行の貸出残高(月中平均)は前年同月比1.5%増と、増加率は10カ月続けて縮小した。亀井静香・金融担当相が「銀行が貸し出し機能を果たしていない」と批判するのはこれが背景にあるが、銀行には顧客の資金需要が増えないという悩みもある。



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