大野事件で事故調査の実施を要望―医療問題弁護団
「医療問題弁護団」は11月20日、昨年9月に無罪判決が確定した「福島県立大野病院事件」について、「刑事事件の無罪判決で解消されているとは思われない多くの疑問点、問題点が再発防止には必ずしも活かされないまま、なお未解明のままに残されている」などとして、事故調査委員会を設置し、調査を実施するよう求める要望書を「日本産婦人科医会」などに送付した。
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同弁護団では、今年2月に遺族の協力を得て訴訟記録を入手。弁護士13人で構成する検討班が、大野病院事件の刑事事件の審理と無罪判決により、事故原因の究明や、再発防止がなされたかどうか、資料や専門医からの意見聴取を基に検討を進めてきた。検討班は今月中旬、報告書をまとめた。
報告書は、刑事事件では審判の対象が限定的なため、訴因以外のインフォームド・コンセントの有無や医療体制や医療制度上の問題点などが主要な論点にならず、再発防止のために本来議論されてよい論点が十分に解明されなかったと指摘。また、医学文献が16点しか証拠採用されていないことを問題視し、「ある医学的論点について一般にどのような議論がされてきたかを、文献の裏付けを持って正確にトレースするような立証は、必ずしも十分なされているとは思われない」とした。さらに、刑事訴訟手続きが刑罰権の発動を直接の目的としていることを挙げ、再発防止のための教訓をくみ取ろうとする指向性は極めて不充分と指摘。
その上で、「死亡原因・死亡に至る機序は解明されたか」「事故後の対応は、適切だったか」など10項目を調査・検討すべき論点として挙げている。
検討班の報告書を受けて同弁護団は、「同事件について、その後、『専門家集団による透明性のある事故調査』が遂げられ、あるいは『専門家中心の第三者機関』が設置されてその成果が広く国民に対して開示されるということは、今日に至るまでなかったように思われる」などとして、「日本産婦人科医会」「日本産科婦人科学会」「日本麻酔科学会」に対し、事故調査委員会を設置し、原因究明や再発防止を図るよう要望している。
【大野病院事件】
2004年12月17日、福島県立大野病院に入院していた妊婦が帝王切開の手術中に死亡。06年2月18日に福島県警と富岡署が業務上過失致死と医師法違反の容疑で執刀の医師を逮捕した。07年1月26日の初公判以来、弁護側は一貫して無罪を主張。公判では、▽出血などの予見可能性▽出血が始まった後も胎盤の剥離(はくり)を続けたことの妥当性―などが争点になっていた。08年8月20日の無罪判決に検察側は控訴せず、9月に無罪が確定した。
更新:2009/11/24 20:35 キャリアブレイン
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