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【社会】

元検事を証人尋問へ 足利事件再審 テープ証拠採用 3月判決

2009年11月25日 朝刊

公判を終え記者会見する菅家さん(左)と佐藤弁護士=24日夜、栃木県庁で

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 栃木県足利市で一九九〇年に女児=当時(4つ)=が殺害された足利事件で、無期懲役が確定後に釈放された菅家利和さん(63)の再審第二回公判は二十四日午後も宇都宮地裁で続き、佐藤正信裁判長は菅家さんの取り調べ内容を録音したテープを証拠採用し、法廷で再生することを決めた。取り調べを担当した森川大司元検事の証人尋問も決定。地裁が弁護団の要請を受け入れて冤罪(えんざい)の原因究明に前向きに取り組む姿勢を示した形だ。判決期日は来年三月二十六日に指定した。

 この日午後の公判では、弁護側証人としてDNA型再鑑定人の本田克也筑波大教授が出廷し、有罪の証拠となった警察庁科学警察研究所(科警研)のDNA型鑑定に言及。

 画像データ作成が不十分だったことから「(菅家さんと犯人の型が)一致か不一致かを判定することは不可能だった」と、旧鑑定のずさんさを指摘した。

 その上で、本田教授は「型を特定するためのDNAの増幅作業に失敗した可能性がある。これでは誤差が出て判定ができない。再度鑑定し直すべきだった」と述べた。

 さらに、科警研と同じMCT118法を用いて、菅家さんと女児の下着に付着した体液のDNA型を比べた再鑑定の内容を説明。旧鑑定は双方を同型と判定したが、実際は別の型だったと主張し、旧鑑定が犯人としていたDNA型は菅家さんとは一致せず、女児のものだった可能性があると述べた。

 地裁が法廷で再生する録音テープは、宇都宮地検と栃木県警が別の女児殺害事件二件(いずれも未解決)で菅家さんを取り調べた際のテープ十五本のうち、森川元検事が取り調べで足利事件に触れた四本。

 森川元検事の証人尋問と合わせ、来年一月二十一、二十二日の第四、五回公判で実施する。

 二月に論告、弁論を行って結審し、三月二十六日には無罪が言い渡される見通し。

◆元検事の証人尋問 地検「非常に残念」

 宇都宮地検の高崎秀雄次席検事は公判後、報道陣の取材に応じ、録音テープの証拠採用と森川元検事の証人尋問が決まったことについて「こちらとしては必要性はないとの判断に変わりはなく、非常に残念」と話した。

 本田教授の公判での発言については「推測を根拠にした証言があり、信用性に疑いがある。次回公判で検証したい」とした。来年三月の判決期日に関しては「もっと迅速な無罪言い渡しができた。それこそが菅家さんの最大の名誉回復だと思っていた」と述べた。

◆菅家さん、自ら尋問の意向

 「なぜ自分を犯人にしたのか聞きたい。絶対に謝ってもらいたい」。公判後、栃木県庁で弁護団と共に記者会見した菅家さん。取り調べ担当検事だった森川元検事の証人尋問が決まったことについて、犯人にされたことへの怒りをむき出しにした。法廷では自ら尋問して謝罪も求める意向だ。

 菅家さんは「(公判は)自分が思った通りに進んだと思う。すごくうれしい」と述べ、録音テープの証拠採用や判決期日が決まったことを評価。

 佐藤博史弁護士は「真実を明らかにするという裁判所の意思が示された」と喜びを語った。

 この日の公判で、科警研による当時のDNA型鑑定の証拠能力が低いことも明らかになり、佐藤弁護士は「単に足利事件だけの問題ではない。(飯塚事件など)他の事件にすぐに連動する話だ」と影響の大きさを指摘した。

 

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