ジャーナリストの立花隆氏は、一昨年、膀胱がんの手術を受けた。NHKは手術の様子や、その後の治療の過程を長期に渡って映像に記録してきた。その中で、立花氏は本質的な疑問に向き合い始めた。「人類はなぜ、がんという病を克服できないのか?」。
立花氏は今、世界中の最前線の研究者たちを取材する中で、がんの正体を根源的な部分から見つめなおそうとしている。明らかになってきたのは、がんという病が、生命誕生の謎と深く結びついているという神秘的な事実だ。
例えば、がんの原因とされている「がん遺伝子」は、同時に、生命の誕生から成長に至るまでに不可欠な遺伝子でもあることがわかってきた。さらに、がん細胞は生命40億年の進化の果てに得た様々な細胞の仕組みを利用して、増殖し転移することも明らかになりつつある。
がんは、小さなほ乳類から恐竜まで、あらゆる生物に見つかる。実はがんは、私たちが多細胞生物として生まれたことで決定づけられた、宿命なのではないか。だとすれば、私たち人類は、がんとどのように向き合えばいいのか。
ジャーナリストとして、そして一人のがん患者として、人類最大の病、がんの謎に挑む立花氏の思索の旅を追いながら、私たちとがんとの新たな向き合い方を探る。
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