Lecture summary

Dr. Scott Howe

「最近の宇宙建築の動向と、宇宙建築技術のスピンオフの可能性について」

Scott Howe氏はアメリカで学位を取得後、鹿島建設の社員として10年程日本に滞在し、その間全自動建設の研究を行っていた人物で、非常に堪能何本土で講義を行ってくださいました。

宇宙建築に関心を持ち始めたのは、この建設ロボットの考えに非常に近いと感じたためだそうです。まず公園の冒頭に、宇宙建築物の工法的分類を説明していただきました。それによると、(1)   Re-integrated: 国際宇宙ステーションのモジュールのように地上で組み立てを完了した状態で打ち上げるもの(2)   Kit-of-parts Construction: 宇宙空間で組み立てや展開を行うもの(3)   In-situ Construction: 月や火星、隕石など現地で材量を調達して建設するもの。という3つに分けられているそうです。

このうちHowe氏の研究に一番多く関連するKit-of-parts(部品建築)について詳しく説明があり、その後ご自身の設計した宇宙建築物をいくつか紹介していただきました。宇宙という過酷な環境下では、人間は宇宙服を着た状態で活動しなければならないため、建設作業のような重労働を長時間行うことは現実的ではありません。そこで宇宙建築物は、電動式や油圧式の部品、バネ、あるいは組み立て用ロボットなどを用い自動的に展開や組み立てを行う必要があり、Howe氏もこのような考えを元に設計を行っていました。また様々なエンジンやクレーンのみならず車輪までもが取り付けられ、建築物自体が移動するMobitatの紹介も行われました。

次に地上建築へのスピンオフの例をいくつか説明していただきました。地上建築への応用例としては、自動的に展開したり、自分自身を踏み台にして勝手に組みあがったり、あるスペースの建物の中で必要に応じて大きさを変化させる部屋になったりというが建築物が考えられています。これらのロボティクス技術の地上への応用により、展開や組み立ての自由な新しい建築物の設計が考えられるほか、建設現場における人件費の削減や危険作業の減少、また安価で簡易な保守点検技術などが生み出されることでしょう。

また最後に、デザインした建築物を実際に形にするための部品開発に際し、Howe氏が感じたこんなエピソードで講演は締めくくられました。「私が使用した部品は2種類あり、1種類はボルトなどで固定される幾何学部品を呼ばれるものであり、もう一つは回転・移動するモーション部品と呼ばれるものでした。これらを組み合わせることで高い機能を持った構造物を作れます。これは機械のエンジニアはすぐ考え付くことなのですが、建築のエンジニアにはあまり無い考え方です。建築家も、幾何学部品とモーション部品を組み合わせて使うという考え方をすれば、非常に面白い作品を作れるのではないかと思います」このように建築分野へロボティクスや機械部品の技術を意欲的に取り入れようというHowe氏の感性に、新たな建築が生まれる可能性を強く感じる講演となりました。

Mobitat in deployed surface mode

Photo Credit: Plug-in Creations Architecture, LLC, Eugene, Oregon


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