「大相撲九州場所・9日目」(23日、福岡国際センター)
大関千代大海が、ついにがけっぷちに立たされた。横綱白鵬に寄り切られて7敗目を喫し、10日目の朝青龍戦で敗れると歴代最長65場所守ってきた大関から陥落する。負け越した場合も現役を続ける意向を表明しているが、土俵人生最大のピンチに立たされた。朝青龍、白鵬の両横綱が全勝をキープ。大関魁皇は幕内通算勝ち星で、北の湖に並び歴代2位となる804勝目を挙げた。
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実力の差は歴然としていた。両手を伸ばし、懸命に突き放そうとする千代大海だったが、いとも簡単に前まわしを取られてしまう。右からのすくい投げは辛うじて残したものの、その後の寄りを残す力はなかった。なすすべなく土俵を割り、視線を落とした。
顔をしかめて引き揚げた支度部屋。取り巻くカメラマンに「撮ったらどいて」と言い放ち一点を見すえた。「突き放そうとした。前まわしを引かれて、動けなかったな」。右前腕、左ひじ、左ひざにテーピングを巻いて土俵に立つ満身創痍(そうい)の体に、白鵬に抵抗する力はなかった。
史上ワースト14度目のかど番で、負け越しにリーチがかかった。しかも、次の相手は朝青龍。「勝つつもりで一生懸命やるよ」と言葉を絞り出したが、土俵際まで追い込まれたことに変わりはない。過去の対戦成績も9勝29敗と圧倒的に不利だ。
場所前に「負け越しても現役を続け、来年初場所で10勝を挙げての復帰にかける」と宣言した。その気持ちに変わりはないか?と問われると「そうですね」と漏らした。師匠の九重親方(元横綱千代の富士)は「負け越したら休む。来場所へ向けて悪いところを治す。来場所(大関復帰がなくなる)6敗した時点で即辞めるから」として、初場所に備えて休場させると明言した。
2度大関から落ち、復帰した玉ノ井親方(元大関栃東)は、陥落後の復帰挑戦を「半端なく覚悟を決めないと、上がれるもんじゃない」と指摘する。周囲の厳しい視線は覚悟の上。「もうちょっと熱い相撲を取りたい」と自らを奮い立たせた千代大海が、運命をかけた勝負に挑む。