男性の自宅の玄関付近(生保対策会議提供)
北九州市で男性が生活保護を打ち切られて餓死した事件で、市の対応について疑念が広がっている。ホームレス支援団体の「もやい」に続いて、先月に発足したばかりの「生活保護問題対策全国会議」(大阪市北区、代表幹事・尾藤廣喜弁護士)は15日、「北九州市は事実を検証し、責任の所在を明らかにせよ‐辞退届により保護を打ち切られた男性の孤独死事件を受けて‐」と題した緊急声明を発表した。同時にホームページ内に事件のコンテンツを立ち上げ、真相解明に乗り出している。
同会議事務局では「北九州市の生活保護行政については厚生労働省から担当者が出向して適正化の指導をしていたがそれにも関わらず、こうしたことがまた起こってしまったのは保護の切り捨てをはかろうとする国の姿勢があらわれた象徴的な事件だ」としており、下旬にも同市と厚労省に対して公開質問状を出して真相解明を求めていく。
声明では「男性が『働く意思を示した』として男性による生活保護辞退届を理由に保護を打ち切った。以上の経緯が事実であるとすれば、本件保護の実施機関である北九州市小倉北福祉事務所による違法・不当な取扱いがあったといわざるをえません」と市の対応に疑念を表明している。
屋根が落ち吹きさらしの状態(同)
その上で「『おにぎりが食べたい』と窮状を日記に残し、野草を食べなければならないところにまで追い詰められた挙げ句孤独死を余儀なくされた男性の無念を思うと言葉も出ません。保護行政のあり方が人をここまで追いやっているのであれば、このような現実は直ちにただされなければなりません。今回の事態について、安易に『問題なし』として事態の幕引きをはかることは許されません。北九州市は今後決してこのような痛ましい事件が発生する事のないよう、このような事態に至った原因をつぶさに検証し、その責任を明らかにすべきです」と北九州市に事実関係の徹底調査と再発防止を求めている。
また同会議の幹事らが男性の自宅を訪問して現地調査した。それによると水道・ガス・電気は止められ、外観のあちこちに穴が開き、一部は屋根も落ち、吹きさらしの状態だった。このような現状は担当のケースワーカーも承知していたはずで、こうした状況で保護を打ち切れば餓死する可能性が高いことは分かったはずだ。その上で打ち切ったとすればあまりに配慮を欠いた対応である。
幹事らは地域住民にも話を聞いている。住民らは「健康状態はひと目でわかる程良くなかった。あんな病人を雇ってくれる会社はないと思う」、「4月以降に急激に痩せていったように記憶している。5月の終わりか6月のはじめに最後に顔を合わせた時には、やせ細り頬がこけ落ちて顔色も土色のようになっていた。体調の悪化を心配したが、まさか生活保護が打ち切られたとは思わず本人からもそんな話は無かった」などと話した。
崩れた屋根がうかがえる(同)
男性はここ数年は肝臓をわずらい、弟さんが亡くなってからは様子もおかしくなっていたという。
厚労省のデータによると北九州市の保護世帯は約1万世帯で、政令指定都市の中で突出しているわけではない。国や自治体の緊縮予算の中で生活保護にしわ寄せが来ているのは明らかであり、今後も支援団体や弁護士グループの反発は強まりそうだ。
参照:緊急声明や現地調査の様子は下記から確認できます。
北九州事件(生活保護問題対策全国会議ホームページ内)
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