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元気がほしいときに読む日記

2009-11-22

いくら戦前を正当化してみたところで?

00:03

朝鮮半島で少年期を過ごした人が、語ってくれたこと。へのコメントに返事を書いてから、『そういえばなんだか嫌な関連ニュースを見たなぁ』と思って、改めて検索してみたらこんなのが出た。

 なんかさぁ、「いいやもう、勝手にしてくれ」って感じ?

 改めて調べて検証して練り直して記事書くのも面倒だし、せっかく話題に上ったのだから、例の人が更迭された頃、当時はクローズドだった某SNSにおいてあった文章を、掘り出して張っておくに留めよう。

以下、発掘文書

 いくら戦前を正当化してみたところで、

寒鰤庵のじいちゃんは、丙種合格*1だったから戦場に行かなくても良かったはずなのに「特高警察に目をつけられて」*2東南アジアへ送られたまま帰ってこなかった。(ばあちゃん談)

 ばあちゃんが肺気腫こじらせて亡くなってから、もう10年になるが、折に触れてそういう話をしてくれたから、今でもよく憶えている。

 それから、ブラジルドミニカを始めとする世界各国へ、“棄民”と言われるようなだまし討ちの移民で、「国民」を数百万人以上も追い出している。

参照:フリー百科事典ウィキペディアWikipedia)』:日系人

 http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%97%A5%E7%B3%BB%E4%BA%BA

 思想統制や女性・国内少数民族に対する差別、地主や財閥による労働弱者への差別的扱いについての資料なんかごろごろ残っているわけで、自国民すら大切にできないような旧帝国政府・軍部が、果たして“他国の民族・文化を尊んでともに発展する”なんてことができたんだろうか?

例えばここに、『日本陸軍中国 「支那通」にみる夢と蹉跌』という書籍がある。

日本陸軍と中国―「支那通」にみる夢と蹉跌 (講談社選書メチエ)

日本陸軍と中国―「支那通」にみる夢と蹉跌 (講談社選書メチエ)

 この中で旧帝国陸軍の佐々木到一(最終階級中将)という「支那通」の軍人が、満州赴任から3年ほど経過した頃の満州の現状を次のように述べている。

166ページ 満州統治ノ深憂(続々篇)』


民族協和が満州国の原理であるとすれば、建国に参加する各民族が国家の構成分子であることを自覚しなければならないのに、大多数の日本人はこの自覚が足りない。日本人は日満間の条約によって保障された恵まれた立場と、先進国・指導国としての優越感をもって臨んでいる。要するに、満州国植民地視する誤った観念から脱却していないのである。それは日系官吏だけに限らない。日本人全部がそうである。満州国人に対する優越感、干渉癖、横車、理由のない凌辱、根拠のない嫌疑などに、それが現れている。


また、満州を去る数ヶ月前には次のように述べている。

174ページ『対満州国政治指導に関する所感』

満州国は)建国以来5年を経て、国内の利権の大部分が日本人に掌握され、表面上は独立国家でありながら、満州国は急速に植民地化しつつある。この現状に目を向けずに独立国家という建て前を言っても、それは自己欺瞞にほかならない。民族協和も所詮、民族闘争をたくみに緩和する以外の何ものでもない。こんな重大問題を軽々しく放言すべきではないが、満州国独立国になり得ないし、日本人も満州国人にはなり切れないのが現実である。


佐々木到一の人となりは、以下を参照されたし。

フリー百科事典ウィキペディアWikipedia)』:佐々木到一

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BD%90%E3%80%85%E6%9C%A8%E5%88%B0%E4%B8%80

また、下記のサイトで“田母神論のどこがどう間違っているのか”がきっちり語られている。長文だけれども、関心のある方・どこが問題なのかピント来ない方は、ご一読をおススメする。

田母神論文を批判する

http://members.at.infoseek.co.jp/tou46/re_90_01.html

「これからどうしたらいいか?」を語るときに、「過去どうであったか?」は優先順位が低いんだけれどもね?

「特権意識」「差別意識」「特別意識」なんていうものが欠片でも胸のうちにあるようでは、「みんなちがっていて、みんないい」「十人十色」実現されないんだわ。

 過去を正当化しないと維持できないような民族の誇りなんていうものは、必要ないんじゃないのか?


田母神論文を批判するから、戦前を正当化する時によく用いられる、「五族協和」に関する部分だけ引用。

田母神論文中には、「一方日本は第2次大戦前から5族協和を唱え、大和朝鮮、漢、満州蒙古の各民族が入り交じって仲良く暮らすことを夢に描いていた」とある。

 これもまた、日本の統治の実態について学んだことがない、ただ建前部分しか認識していない、誤った主張である。現実の日本統治は、日本人だけが支配者として他民族を搾取するものだった。まあ、これも色々やっかいな話で、そう一言で言い切れるものでもないのだが、少なくとも満洲国に関しては。とりあえず一例だけ述べておくが、溥傑の后である愛新覚羅浩は、『流転の王妃の昭和史』(新潮文庫)という本を著している。これは文庫本になっているので、入手も容易だと思う。

 そして愛新覚羅浩は、満洲人が日本人に差別されていたことを、はっきり述べている。日本人、特に関東軍関係者のみが贅沢を味わい、一般の中国人貧困に追いやられていたことを。そして、自身は日本人なのに、満洲人と結婚したと言うことで、満洲人並に見下され、差別して扱われたと言うことを。また、夫は皇帝の弟なのに、なんらそれに相応しい敬意は払ってもらえず、平民として扱われていたと言うことを。また、当時の満洲では日本に対する反感が充満しており、溥傑ですらそれに反対するものではなかったことを。

 そしてこれは、なにしろ当事者が、自らの目で見聞した、あるいは自らの体で体験した事柄である。日本の掲げた「五族協和・王道楽土」が大嘘であることの、なによりの証言ではなかろうか?

 ただし、満洲国がそうなってしまったのには、事情があることはある。つまりは、戦争である。満洲事変以降の事態の進展を一言で述べるのは無理だが、要するに、短期間の小康状態をのぞけば、日本は戦争ばかりしていたわけだ。そしてそれは、日中戦争太平洋戦争(明示的に日中戦争と区別するための呼称)と、日本の国運を賭した大戦争へと発展していく。そのような戦時中においては、日本本土ですら、国民の生活は困窮していったわけである。「贅沢は敵だ」とか「欲しがりません勝つまでは」と言ったスローガンの元、すべてを戦争遂行につぎ込んでいったために。上記に記した『流転の王妃の昭和史』(新潮文庫)の例は、そのような状況の中に、生じた。

 すなわち、日本本土以上に、戦争遂行に対する協力が強制されたのである。だから、住民の生活は困窮していったのである。……ただし、それでも日本人、特に関東軍は、良い暮らしをしていた訳なのだが。また、経済的な事情がどうあろうと、それとは別に、現地の中国人たちは日本人から見下され、差別されていたのだが。

 そして田母神氏などは、日本は満洲を工業国として発展させたと主張している。それ自体は全くその通りなのだが、しかしそれが現地住民の生活向上には全然反映されなかったということ、これも事実なのである。すべては戦争遂行のために、持ち去られてしまったのだ。

第二次世界大戦=経済戦争”という側面もあって、“五族協和アジアの開放のための戦争=欧米の植民地支配の模倣”という感じにしか受け取れない。

 もちろん、杉原さんの『命のビザ』という美談もあったし、陸軍にも今村さんという見識のある軍人もいたが、結局の所戦前と言うのは成り行き任せの時代でしかなかったのではないか?

 充分とはいえないが、近代以降、先進各国においてようやく「個人としての尊厳と自由意志の保証」が制度化されるようになったのが現実でしかない。

 真っ当な運用がされているかどうかというのは全くの別問題ですがね。

 「全国民が“天皇”個人の所有物」とされているような戦前を、懐古していて良い理由は1つもないんだよ?

関連リンク

http://d.hatena.ne.jp/Elekt_ra/20091122/1258836549

http://hanausagi.iza.ne.jp/blog/entry/791821/

http://d.hatena.ne.jp/warabidani/20091120/p3

http://d.hatena.ne.jp/kanose/20091007/tamogami

http://d.hatena.ne.jp/Elekt_ra/20090703/1246622547

http://d.hatena.ne.jp/satoumamoru/20091106/1257477369

http://d.hatena.ne.jp/minoru20000/20091107/p1

http://d.hatena.ne.jp/seijotcp/20090504/p1

http://d.hatena.ne.jp/kurohige-ossadot/20091107/1257600524

http://d.hatena.ne.jp/noharra/20091009/p1

http://d.hatena.ne.jp/kamayan/20090513/1242155544

http://d.hatena.ne.jp/kurohige-ossadot/20091113/1258102987

http://d.hatena.ne.jp/kojitaken/20091121/1258759143

http://d.hatena.ne.jp/kojitaken/20091031/1256970678

http://d.hatena.ne.jp/Apeman/20090303/p2

http://d.hatena.ne.jp/Dr-Seton/20091009/1255093658

http://d.hatena.ne.jp/stella-maris/20091120/1258728812

*1:丙種合格:ぶっちゃけると、徴兵検査で補欠合格の更に下。優秀なほうから、甲種>乙種>丙種ね。体が弱かったから、戦場送りになる優先順位はかなり低かった。

*2共産党員ではなかったけれど、そっち系の活動はしていたらしく「この国では、戦争に言ってこなければ生きていけない」と言って、志願して行ったのだそうだ。農家だったから、徴兵免除もあったらしいんだけれどね?

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