「フィギュアGPシリーズ・第6戦、スケートカナダ第2日」(21日、キッチナー)
男子はショートプログラム(SP)2位の高橋大輔(23)=関大大学院=が、フリーでトップとなる演技を見せ、合計231・31点の2位となり、シリーズの上位6選手で争うGPファイナル(12月3日開幕・東京)進出を決めた。女子は中国杯覇者でSP8位の鈴木明子(24)=邦和スポーツランド=が5位に浮上し、同じくファイナル進出が決定。GP連勝ですでに出場を決めている安藤美姫(トヨタ自動車)、織田信成(関大)とともに、日本勢最上位のメダリストに与えられるバンクーバー五輪内定を目指す。
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反撃ののろしは上がった。重圧をはねのけ、久々に納得のいく演技ができた高橋の表情に、自然と安堵の笑みが広がった。フリートップとなる155・01点で、しっかりと2位を確保。五輪に向けた一つのハードルと位置づけていたファイナル進出を決め「ほっとした。(右ひざの手術から)復帰3戦目で着実に上がってきている」と、充実感をにじませた。
フリーはフェデリコ・フェリーニ監督の名作映画「道」の大道芸人を情感豊かに演じた。パントマイムとして取り入れた綱渡りの場面では観客の反応を誘い、得意のステップでは手拍子も引き出した。「終始表情を作ることができた。ジャッジも観客もアピールに反応してくれた」と、ニヤリ。表現力を5項目で評価する演技点は、持ち味のスケート技術など4項目で高得点の8点台を並べてトップ。氷上で感じた手応えを裏付けた。
もちろん完全復活という訳ではない。果敢に挑戦した4回転ジャンプは3回転になるなど、技術面では課題を残した。完成度も、4位だった2週間前のNHK杯の「50%」から「55%」と、微増。ただ、「けがをする前の同じ時期ならもう少し良かったはず」と冷静に自身を見つめられる余裕が、今の高橋にはある。
優勝には届かなかったが、何よりファイナルの切符を手に入れたことは大きい。日本人最上位のメダリストは五輪内定となるだけに、長光コーチは「日本開催で重圧もあるはず。その中で戦って強くなってほしい」と期待を寄せた。ファイナルでは関大の後輩・織田信成との久々の対戦も待っている。「点数が出る見込みは今回感じた。あとは練習次第ですね」。五輪本番でのライバルが一堂に会する大一番で、“日本のエース”復活をアピールする。