60回目を迎える今年のNHK紅白歌合戦の出場歌手は、初出場が昨年の14組から8組とほぼ半減した。
番組の井上啓輔プロデューサーは「初出場ではないが、今年活躍した方々は多かった」としながらも、「昨年の羞恥心や木山裕策さん、秋元順子さんのように、幅広い世代が聞いたヒット曲は少なかったという印象だ」と話す。
番組構成は、節目の60回を前面に押し出した。放送時間は過去最長の4時間25分だが、出場組数を昨年の53組から50組まで絞り込んだ。「演出を充実させ、みんなの心に響く、いいコーナーを作る」(井上プロデューサー)と、メモリアル色を強くする意向だ。
この方針は、出場歌手の顔ぶれにも反映している。デビュー20周年のDREAMS COME TRUEに10周年の嵐、メンバー全員が還暦を迎えているアリスなどは、いずれも“区切り”を迎えたアーティスト。今年いっぱいで活動を休止する絢香は、紅白が最後のステージだ。
ただ、デビュー40周年を迎えた井上陽水や、還暦の矢沢永吉など、オファーを出しながら出場がかなわなかった大物もいる。「視聴者が最も見たいアーティスト」のお題目は完全とはいえず、制作側も「来年以降、タイミングが合えば出場してほしいという気持ちに変わりはない」と無念さを口にする。
また、今年は忌野清志郎さんや加藤和彦さんなど、日本の音楽シーンに影響を与えた人物の死去が相次いだ年でもあった。「今年の音楽シーンの総決算」を宿命づけられている紅白としては、こうした故人の活躍をしのぶような演出やコーナーも、今後検討されていくとみられる。