紫老婆


僕が小学4年生くらいの頃だったと思います。
僕達の住む地域では『サッカーテニス』という遊びが流行っていて、大抵の小学生は外でその遊びをするのが日課でした。
しかし外で遊ぼうにも公園には他の子たちもたくさんいるので納得する広さ遊ぶことはあまりできませんでした。すると友人の一人が「ええ場所を見っけた」と言い、そこなら誰もおらず好きなだけ遊べると放課後そこに行くことになりました。友人が案内したのは学校から遠く離れた暗い神社でした。和尚らしき人どころか猫一匹いないような人気のまったくないところで、少し気味が悪い感じでした。

しかし思いっきり遊べるという嬉しさからそんなことはどうでも良くなり、僕達は日が暮れるまで遊びました。5〜6時くらいになると「そろそろ帰らな」と一人の友人が言ったので、みんな帰る準備をしました。
「なぁ、あっちに誰かおるで」
帰るといった子がどこかを指差しそう言いました。
指差した先は木々がよりいっそう茂っているさらに気味の悪いところでした。
「ちと、行ってみようや。お化けかも知れへんで」
「放っとこうで、気味悪い」
と私は止めたのですが「根性ないの?」とからかわれたのでみんなで行くことになりました。木々の奥では人影がうごめいていました。目を凝らしみてみると全身紫の老婆が井戸の水をくんでいました。
老婆はピクと動きが止まりものすごい形相でこちらを睨んできました。
「なんや、あのばあさんおかしいんちゃうんか?」
と遊び半分で友達が言ったと同時に老婆の顔はすでに眼前へと迫っていました。 「うわぁ」と声を上げ僕達は一斉に駆け出し、逃げました。老婆は陸上選手のような走り方で僕達を追ってきました。
「あの防空壕みたいなところに隠れるんや!」
僕達はその防空壕へと身を隠しその穴から様子を伺っていました。案の定老婆は防空壕の横を通り過ぎていきました。しかし明らかに老婆の首は防空壕の穴に向いて笑っていました。その日は恐怖で一睡もできず、中2になった今でもたまにあの老婆のことを思い出し眠れなくなることもしばしばあります。


投稿者 貞夫