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読む政治:「長妻流」で巻き返し 強権「一匹オオカミ」(その1)

 ◇年金機構の職員採用、連合をバッサリ

 20日朝、平野博文官房長官は閣議を利用して国会内で長妻昭厚生労働相を捕まえ、懸念を伝えた。

 「総理(鳩山由紀夫首相)も心配している。社会保険庁職員の分限免職を決める前にはよく相談するように」

 数々の不祥事を引き起こした社保庁は、来年1月1日、非公務員型の「日本年金機構」に移行する。長妻氏は先月、過去に年金記録のぞき見などで処分を受けた職員を新機構に移さない方針を示し、身内の民主党を刺激した。対象者の大半は同党の支持団体、連合の有力構成組織である自治労傘下の労組員で、約500人に及ぶ。

 彼らは年末までに職を見つけられなければ、解雇と同じ分限免職となって路頭に迷う。そこで労働分野に詳しい弁護士で、連合との関係を重んじる細川律夫副厚労相は11月中旬、連合側に懲戒処分を受けた職員を厚労省の非常勤職員として雇う案をひそかに打診していた。ところが長妻氏は17日の記者会見で、「(非常勤採用を)自動的にできるという意識は持っていない」と切り捨て、平野氏を慌てさせたのだ。

 懲戒処分者の不採用は、自民党政権下の08年に決まった。野党時代から連合と距離を置き、「労組に甘い民主党」との世評とは一線を画すことを狙う長妻氏は、あえて前政権の意向を引き継いだ。

 「ほんまか? 本当に言ったんか?」。10月23日朝、部下から携帯電話で報告を受けた連合の徳永秀昭会長代行(自治労委員長)は耳を疑った。長妻氏が「懲戒処分を受けた者が、今後(年金機構で)記録問題にかかわるのはいかがなものか」と発言したと聞いたためだ。

 11月2日。連合の古賀伸明会長と同じパナソニック労組出身の平野官房長官は、長妻氏を首相官邸に呼び出し、強い口調で問いつめた。「分限免職を受けた者による訴訟も起きているんだぞ」

 柔軟な対応を求める平野氏に、長妻氏は平然と切り返した。

 「それなら、長官の範囲でも雇用が見つかるようにしてください」

    ◇

 長妻氏の厚労相就任から2カ月余り。不慣れもあって当初は野党時代の輝きを失っていたものの、至るところで自らの主張を押し通す「長妻流」で巻き返しに出始めた。ただ、それは各方面とあつれきを生む、両刃の剣でもある。

毎日新聞 2009年11月22日 東京朝刊

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