|  | きょうの社説 2009年11月23日
◎血液でがん検出 早期発見に道開く画期的手法
健康診断では血液の成分分析で生活習慣病などの予兆や進行が把握でき、治療開始の動
機付けとなっている。それと同じように、採血だけでがんが高確率で発見できれば、早期治療が可能になり、がん死亡率の低下に大きく貢献するだろう。金大の金子周一教授らの研究グループが新たに開発した、血液中からがんの有無を判別する手法は、そんな期待を抱かせる画期的な成果である。 これまでの研究では、がんに関連した物質の血中濃度を調べる「腫瘍マーカー」に比べ て発見率が高く、PET(陽電子断層撮影)などの画像診断よりも手軽な検査が可能になる。この手法が普及すれば、伸び悩む受診率の向上にもつながるだろう。研究グループは来年末にも北陸の病院で自費診療として実用化させる計画である。検査の精度をさらに高め、がんの早期発見、治療に役立つ切り札にしてほしい。 研究グループは、胃、大腸、膵臓といった消化器がん患者の血液分析で、患者特有の遺 伝子群の異常を発見した。がんが血液に影響を与えることは分かっていたが、その変化を遺伝子レベルでつかんだことが研究の進展につながった。症例検査では、91%の高い確率でがんの有無の判定に成功し、7割以上でがんの部位を特定することもできた。腫瘍マーカーの発見率が2〜5割程度にとどまっていることを考えれば、精度は飛躍的に高まったといえる。 この手法は2・5ccの少量採血で診断でき、従来の検査に比べて体の負担も軽くなる 。検査期間も3〜4日と短くて済むという。導入が広がれば、がんの診断風景は一変するかもしれない。研究対象は消化器がんだが、他のがんでも応用できないか可能性を突きつめてほしい。 金大では附属病院内に高次人間ドックを導入する検討が始まっている。大学病院はがん や難病治療の「最後の砦」であるのは言うまでもなく、病気の早期発見や健康管理でも高度化の役割を担っていくのは時代の要請である。今回のがん診断法開発を弾みに、北陸の医療を支える基幹病院としての機能をさらに充実してもらいたい。 
 
 
 
◎南砺の誘客協加入 金沢の支援で実現したい
南砺市が、海外からの観光誘客促進に取り組んでいる「松本・高山・金沢・白川郷誘客
協議会」への加入を目指している。世界遺産の五箇山合掌造り集落や散居村など日本的な観光資源に恵まれている南砺市がこの組織に加われば、発信する観光ルートの厚みと深みが増し、ほかの市村にもメリットがあろう。南砺市とゆかりが深い金沢市も、要望をかなえるために積極的にバックアップしてほしい。 誘客協議会を構成する4市村には、仏・ミシュランが刊行しているガイド本で「三つ星 」の評価を得た観光名所の所在地であるという共通点がある。五箇山合掌造り集落も「三つ星」に名を連ねており、南砺市も「参加資格」は十分に満たしていると言えよう。松本市から高山市、白川村を経て金沢市へ至るコースの途中に南砺市があることを考えれば、外れているのが不自然に思えるくらいだ。 誘客協議会は、1989年に発足した「松本・高山・金沢国際観光ルート整備推進協議 会」に白川村が加わり、今年5月に設立された。先月は香港のメディア、今月にはタイのメディアや旅行代理店関係者を招聘し、兼六園やひがし茶屋街、松本城、高山陣屋、白川郷合掌造り集落などを盛り込んだ和の情緒あふれるルートをアピールするなど、早速、活発な活動を展開している。 仮に、誘客協議会に南砺市が参加していたとしたら、紹介するルートはもっと魅力的な ものになったに違いない。たとえば、砺波平野に広がる散居村は、城下町とも合掌造り集落ともひと味違う日本の風景として、メディア関係者らの記憶に深く刻み込まれただろう。敬けんな仏教徒が多いとされるタイの一行には、瑞泉寺などが好まれたかもしれない。 南砺市には、加賀藩統治の足跡も随所に残っている。五箇山の塩硝を集荷した岩瀬家( 国重要文化財)、周辺集落の生産を取り仕切った羽馬家(富山県文化財)などがそうだ。誘客協議会の枠組みの中で、金沢市と南砺市がタッグを組み、加賀藩文化を海外にPRすることも考えていきたい。 
 
 
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