きょうのコラム「時鐘」 2009年11月23日

 「勤労感謝の日」は、五穀の収穫を感謝する「新嘗祭(にいなめさい)」の日付をそのまま受け継いだ、と手元の辞書にある。サラリーマンが大威張りでくつろぐのもいいけれど、本来は農事の節目の日である

日付は違うが、奥能登の民俗行事「あえのこと」も、同じだろう。男女二体の田の神を家に招いて一年の収穫に感謝し、翌春に田に送り出す。働き者の神が見守る土地の儀礼である

神であれ、人間世界であれ、勤労あっての感謝である。が、就職戦線には、強い逆風が吹く。大学生の内定率は「氷河期」並みの62%、と報じられた。高卒予定者は、9月現在で県内は40%台、全国平均では37%という数字を見せつけられると、風の冷たさにあらためて驚かされる

「あえのこと」の神は、目が不自由である。あるじが田まで出向き、手を取るしぐさを続けて家に導く。風呂とごちそうでもてなし、年を越して再び田へ送り届ける。優しい手に導かれる神である

そんな導きの手を懸命に探しているのは、若者たちだけではない。「勤労」という言葉を口にするのも周囲に遠慮したくなるような祝日。めでたさも半分か。