【社会】愛知県警、交通死1位返上へ 「歩車分離式信号」設置進める2009年11月22日 11時02分
愛知県警は、交差点で歩行者が横断する時に車の通行を完全に止めるスクランブル方式などの「歩車分離式信号」の設置を急ピッチで進めている。車保有台数全国トップの愛知県では、車の渋滞を引き起こしやすい欠点があることから導入に消極的だったが、県内の交通事故死者数は4年連続で全国ワースト。背に腹は代えられず、本年度から2年間で一気に倍増させる。 「もう車が横断歩道に突っ込んでこない。安心して渡れる」。分離式信号が今月10日に設置された名古屋市東区役所南の交差点。地域交通安全活動推進委員の伊藤順一さん(76)の足取りは軽やかだ。 導入前は、青信号でも右折や左折の車が横断歩道を横切り、常に恐怖と隣り合わせ。昨年7月には89歳の女性が横断中、右折のタクシーにはねられて死亡した。 歩車分離式信号は、1972(昭和47)年に名古屋市役所北交差点で全国で初めて導入され、愛知はいわば発祥の地。2002年には、警察庁が歩行者保護のため各県警などに整備の推進を通達した。 だが、愛知県警によると、県内の同信号は20日現在、184基で全信号の1・4%。全国平均の2・5%(昨年度末)を下回る。県警交通管制課は「車を優先する面があった」と説明する。 県内の事故死者は05年から4年連続全国ワーストで、今年も21日現在で195人(昨年同期比27人減)と全国最悪だ。信号交差点のある横断歩道上で車にはねられて死亡した歩行者数はこの3年、21〜22人で推移している。一方、歩車分離式信号の交差点では、少なくとも04年から今年11月18日まで死亡事故は起きておらず、抑止効果は高い。 分離式信号は対角線を横断できるスクランブルなど6種類程度ある。本年度は過去に歩行者の死亡や重体事故が起きたり、駅や小学校、公園の近く、人通りが多いなどの交差点80カ所を選び、3400万円かけて設置を進めている。来年度もさらに80基増やす計画で、計318基に増えることになる。 問題は渋滞。歩行者や自転車だけが渡る時間を設ける分、車の通行時間が減るからだ。東区役所南の交差点でも起きやすくなり、渋滞を避けようと車が入る裏道で、歩行者との事故の心配もある。 交通事故で家族を亡くした人などでつくる歩車分離信号普及全国連絡会の副会長山崎靖彦さん(51)は「運転手の待ち時間が増えても人命を優先すべきだ」と話している。 (中日新聞)
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