女性と天皇制研究会(女天研)よりみなさまへ、新年早々の声明をお送りしま す! 皇族女性たちを主人公に、天皇家のお家事情がこれでもかとばかりにメディア を賑わせた2004年。そのしめくくりとしての12月、政府は女性の皇位継承などに ついて検討するための「皇室典範に関する有識者会議」を設置することを発表し ました。この有識者会議は今月中に初会合を開催し、秋には報告書をまとめると の報道がなされています。 同会議設置について細田官房長官は記者会見で「皇位の継承を安定的に維持す ることは、国家の基本にかかわる事柄」と述べていますが、これは「天皇制の基 本にかかわる事柄」というべきでしょう。皇族女性が「男子」を産まない限り、 「男系男子」に限定する現「皇室典範」では天皇制が維持できない。「女性天 皇」容認論がこのような天皇制維持の危機から出ていることは、もはや誰の目に も明らかです。 世襲制という天皇家の「伝統」を「国家の基本」と称し、憲法と法律で定め、 保護してやることは、女性を「産む性」と「イエ」に閉じこめることを一つの価 値とし、法的制度として今後も残し続けることを意味します。それは、たとえ女 性が天皇になろうと同じこと。「国民」から法的に逸脱した特権的存在の天皇一 族を認めることが、さまざまな差別を構造的に許してしまい、それらの差別に気 づかず容認してしまう鈍感さを放置することにつながることも今までと同様で す。また、アジアへの侵略戦争の最高責任者だった昭和天皇を許し、天皇制を 「象徴」として今後も残し続けることは、日本社会をあいかわらず「無責任」と 「無関心」の支配下におき続けていくことでしょう。 このような天皇制を残すために、女性性を蹂躙し続けるその制度のトップに女 性を立たせ、「男女平等」などとうそぶく政府・マスコミは許しがたい。「女性 差別の制度」という批判について、政府は「象徴天皇にふさわしい限度で差別を 設けることは、憲法の男女平等の原則に違反しない」と説明してきたといってい ます(『読売新聞』12月28日)。「象徴天皇にふさわしい差別」とは、婚姻や子 産みをはじめとする、家族主義における女性役割を女に押しつけることにほかな りません。これは「女性天皇」容認で変わるはずもない天皇制の本質です。どこ が「男女平等社会」にふさわしいというのか。 この有識者会議設置の報道に先だって、自民党は11月、「憲法改正草案大綱」 を発表しました。天皇は「元首であり」「日本国の歴史、伝統及び文化並びに日 本国民統合の象徴としてわが国の平和と繁栄及び国民の幸せを願う存在」である とうたい、皇位は「世襲のもの」で、「男女を問わずに、皇統に属する者がこれ を継承する」と明記しています。また、現憲法で限定的に定められている天皇の 国事行為に、「公的行為」という新たな概念が追加され、現在すでに違法なまま になされている行為を憲法で認めさせようとしています。ここでは恐ろしいほど の天皇制国家が志向されています。 この「大綱」はすぐに撤回されましたが、新たに出される大綱に大きな違いが あるとは思えません。政府は戦争ができる国を志向し、そのために「国の平和を 祈る」祭祀者としての天皇の権能拡大と、「家族」を国の基本とする家族主義を 持ち出しているのです。少なくとも、この有識者会議設置の目的である「女性天 皇」の検討は早々に開始されます。 皇位継承者が途絶えている以上、「女性天皇」の容認がなければ天皇制は消滅 するしかありません。逆に言えば、いまここで「女性天皇」を容認するというこ とは、改めて天皇制を選択し直すことを意味します。私たちはいまこそ声の限り 主張します。 女性天皇はいらない! 天皇制はもっといらない! 2005年1月1日 |