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シンポジウム「ポルノ被害と女性・子どもの人権」開催のご報告と御礼

 2009年10月3日(土)午後1時より5時まで、立教大学池袋校舎の8号館8201教室にて表記シンポジウムを開催いたしました。
 “ポルノ”という非常にセンシティヴな問題をま正面に据えて、大学の大教室を借りて行うシンポジウムは初めてのことではないかと自負いたします。半年前から準備に取り掛かり、お陰さまで所期の目的を達することができたと考えております。本シンポジウムの成功は、私たちの考え方、主張に日本全国多数の方々や団体のご協力、ご支援の賜物と深く感謝する次第です。
 以下にシンポにいたるまでの経過と当日のシンポの状況、協力くださった多数の方々のほんの一部をご紹介して、御礼とご報告に代えさせていただきます。
長い文章ですが、どうぞ、最後までお読みいただけたら幸甚に存じます。

シンポジウムに至るまでの経過

それは2008年3月24日、ある婦人保護施設での「売春防止法見直し検討委員会」での会合から始まった

 一昨年、婦人保護施設の全国組織である全国婦人保護施設等連絡協議会では、内部組織の民間施設長会において「売春防止法の見直し検討会」を発足させました。法制定後50数年の間なんら見直しがされておらず、現代的観点からは極めて問題のある女性観を含む「売春防止法」について、施設現場からの意見を反映させるための法改正への道のりを歩み始めたのでした。都内と近県の婦人保護施設長たちが集まって作業班をつくり、月一回程度の会合を始めた矢先、児童書の出版で定評のある出版社、理論社から、バクシーシ山下という極めて性暴力的なAVを撮ることで もてはやされている“監督”が、あろうことか青少年向けにポルノをモチーフにした「ひとはみな、ハダカになる。」という本を出版しているという情報がもたらされました。

 婦人保護施設の利用者の中には、様々な生活困難を抱えた結果、もとAV女優だった女性もいれば性風俗産業に携わっていた人もいて、それらの女性たちは生活基盤を失い、人間としての尊厳を見失い、生きる力を失い、ようやく婦人保護施設にたどりつき、生活再建、人間としての再生を図ろうとしている人々です。彼女たちの深刻な現在を見ている婦人保護施設の従事者たちは、勿論、バクシーシ山下なる人物の名と作品名ぐらいは知っていましたが、そのAVは見たことがありませんでした。
理論社に抗議をするにはまず実物の作品を見なければと、有志が集まって一番悪質といわれている「女犯2」を視聴しました。いわば強制的に拷問の場面を見させられているのと同じですから、耐え難いものでした。こういう映像を撮る“監督”が青少年向けに「興味本位で十分です」といって性の情報を伝える、その性情報とはいかなるものか、青少年をポルノ産業の消費者にも商品にも誘導しかねない極めて悪質で危険なものだと考えました。

 そこからは、とにかく速く理論社に抗議するために、この本の絶版・回収を求める署名運動を全国展開していきました。秋には約1万筆の署名を全国から集め、2008年12月17日、理論社に行き、編集長、編集者、営業担当者に会い、長時間にわたり話し合いを持ちましたが、話し合いは平行線をたどりました。この話し合いの唯一の成果は、理論社は問題のビデオを視聴したうえで、著者の持ち込み原稿ではなく理論社の方からの依頼原稿として出版した本であったと判明したことでした。

 署名運動を展開する時点では10年にわたって地道にポルノ被害問題に取り組んできている「ポルノ・買春問題研究会」と連携することができ、私たちの運動の理論的支柱とすることができるようになりました。

 性暴力的な映像を得意とするポルノ映画監督にポルノを素材にして青少年向けに性の教養書を出版したという理論社問題は、一出版社の出版行為に矮小化するような問題ではなく、広く社会全体に課題提起していかなければならない大きな社会問題を含んでいることが分かってきましたから、社会問題化するにはどうしたらいいかという方向で検討が始まりました。

 婦人保護施設を中心にするのではなく、「ポルノ被害と性暴力を考える会」として新たに組織を立ち上げ、ここを中心にして社会に問題を提起するシンポジウムを開催しようと精力的に各方面に働きかけを始めました。しかし、困ったことに「ポルノ被害と性暴力を考える会」などというまったく無名の組織が大きな組織に協力を働きかけるのは容易なことではありませんでした。そうこうしながら、日本ユニセフ協会がまず後援団体になってくださり、アグネス・チャンさんが協力者になってくださったあたりから、後援団体、賛同団体が増えていきました。

 協力者を求める一方、質実共に内容のあるかっちりしたシンポジウムを構成するための論議を綿密に重ねて、10月3日の当日を迎えることができたのでした。

当日の参加者と全体状況

食い入るような熱心なまなざしが一斉に演台に向かう様は圧巻・・・

 開場30分前にはがらんとしていた教室が5分前にはほぼ埋め尽くされて、関係者一同ほっとした瞬間でした。きちんとした事務局があるわけでもなく事実上、事前の申し込みを把握することは困難と判断し、出たとこ勝負でやらざるを得なかったからです。

 当日の設営は、婦人保護施設の職員、立教大学・日本社会事業大学の学生及び教員、日本ユニセフ協会、東京都社会福祉協議会、東京社会福祉士会、ポルノ・買春問題研究会会員、当事者の方などなど35名が集まり、人海戦術で各担当を決め行いました。

 当日の入場者は、176名(ボランティアを含めると200名を超えます)でした。圧倒的に女性が多かったのはある意味良かったような、男性の参加者が少ないのはとても残念のような思いで、男性の参加者を増やしていかねばと痛感いたしました。シンポジウムの中でも再三語られたように男性の関心を如何に喚起していくかは喫緊の課題ですから・・・。参加者のバックグランドはよく分かりませんが非常に多様な層からの参加を頂いているように思われました。アンケートは107名の方が寄せてくださり、60%の回収率でした。内容は非常にポジティヴなご意見が多く励まされました。
 シンポジウムは、「ポルノ被害と性暴力を考える会」世話人の横田千代子さんによる今日に至る経過説明と私たちはこんなに重大な人権侵害の問題に出くわしてもうやめるわけにはいかないのですという力強い宣言と共に始まりました。
 そして、サプライズ・メッセージとして、日本ユニセフ協会大使のアグネス・チャンさんが「一緒に頑張って行きましょう」と挨拶する映像が紹介されました。

 また、AV女優・性風俗の世界を生きぬいてきた女性が当事者として基調報告をしてくださいました。後の打ち上げ会の席上で、彼女は「皆さんに話ができて本当に良かった。でも、十分に話ができなくて残念だった。」と泣き崩れ、「私のような女の子を生み出さないでください」と・・。
シンポジウムの内容に関しては資料集によりご覧ください。なお、私たちに余力と資金の調達ができたら、アンケートの分析も含めた報告書を作成したいと考えております。
 

報道関係の取材の様子・・10月4日の毎日新聞東京版に第1報の記事が出ました

 報道関係にはあらゆる伝手を通じて事前の告知や取材を申し込みました。当日取材に見えてくださった報道関係者は、しんぶん赤旗、女性のひろば、毎日新聞、明石書店、ふぇみん、NHK、読売新聞、週刊金曜日、9社でした。ある大きな報道機関の記者さんがはじめから終わりまで必死にメモを取っている姿が印象的でした。http://www.app-jp.org/modules/news/article.php?storyid=924 今後各社から随時記事になっていくもの思います。
 なお、当日の参加者の感想が掲載されているブログが散見されます。いずれも共感と励ましの内容です。

チラシとポスターの作成の経過

  • チラシの作成
    これもまた伝手を通して、大手広告会社で“人権”にかかわる社会貢献活動をしたいといわれるプロのコピーライターとアートディレクターに出会うことができ、無償での作成を本当に快くお受けくださいました。お二人は長時間にわたって私たちの主張したいことを聞き取り、基礎資料や論文を読み込んだ上で作業に取り掛かりました。

    仕上がったチラシは、私たちには夢想だにできない斬新なもので、キャッチコピーもまさに私たちが言いたかったことを簡潔にまとめてくださいました。

    1万部を印刷し、たとえ会場にお越しくださらなくてもこのチラシを見ていただきたい、関心を持っていただきたいという願いを込めて、全国的に署名を寄せてくださった封筒の差出人をたよりに、また、それぞれの関係するところに、配布しました。
  • ポスターの作成
    チラシと同時に今後も使い回しができるポスターも作製してくださるとのことで、お言葉に甘えました。サイズはB2で、6連作です。キャッチコピーとデザインについて、昼夜のメールのやり取り、最後の最後まで(開催日前夜まで)修正を加え、印刷は3日に入ってからでした。

コピーの文章は以下のとおりです。デザインは別添の資料をご覧ください。

  • 携帯電話
    キャッチコピー:性に興味をもつことが、危ない社会であってはいけない。
    (サイトが引き起こす性犯罪から子どもたちを守りたい。)
  • ドアノブ(密室の象徴)
    キャッチコピー:「セクシャル・ハラスメント」「ドメスティック・バイオレンス」
    言葉によって、その問題は明るみに出た。

    (表に出てこない性的な人権侵害が、まだまだ存在している。)
  • カメラ
    なにげなく置かれている荷物やゴミ箱、窓や天井の通排気口、時計や額縁の絵に…
    (盗撮は単なる迷惑行為ではなく、女性に対する人権侵害。)
  • デザイン:ビデオテープ
    キャッチコピー:アダルトビデオとして販売された瞬間、その集団レイプは「作品」になった。
    (「表現の自由」という名目で、女性の人権が侵されていないか。)
  • 家族写真の入ったフォトスタンド
    キャッチコピー:忘れられない思い出が、どうかいいことでありますように。
    (子どもへの性的虐待の加害者は、身内がいちばん多い。)
  • ガチンコ(映画を撮影する際に“よーい、スタート”を知らせる機材)
    キャッチコピー:あのおぞましいAVの中身を観たら、その監督に児童書の執筆など考えられないはずだ。
    (子どもたちに忍びよる乱暴な性情報をくい止めたい。)

なお、このポスターはパネルにして全国に貸し出します。

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カンパのお願い

私たちはまったく無一文でこの企画を開始し、資金繰りができないまま当日を迎えてしまいました。そこで、会場でカンパを募りましたところ、208,149円のカンパが集まりました。中には万円札もあり、参加者からの強い負託を受けたと心を引き締めているところです。ただ、依然として資金不足の状態であり、郵便振替の口座を開いてカンパを募りますので、是非ご協力ください。来年の第2弾を企画するためにはどうしても資金が必要です。

 日本ユニセフ協会、東京都社会福祉協議会、全国女性シェルターネット、株式会社福祉新聞の4団体のご後援、全国75団体のご賛同を得て成功裏にシンポジウムを開催できたことを深く感謝すると共に、今後のご協力、ご支援をお願いして御報告の挨拶といたします。

シンポジウムの告知資料(※. 2009年10月03日に開催され終了しております。)

シンポジウム「ポルノ被害と女性・子どもの人権」

 「表現の自由」の名のもとで、女性や子どもの人権が侵されていないか。ポルノグラフィに関わる様々な被害を白日のもとに曝し、広く国民的な社会問題にしていかなくてはいけない。そのワークショップの第1弾です。

日 時2009年10月3日(土曜日)13時〜17時
場 所立教大学 池袋校舎8号館8201教室
(池袋駅西口東武デパート口から徒歩7分/池袋地下道C3出口から徒歩2分)
主催者挨拶横田千代子(婦人保護施設長)
基調報告中里見博(福島大学准教授)「子どもを標的にするポルノの実態」
田原めぐみ「ポルノ・性風俗の世界で生き、見てきたもの」
パネル
ディスカッション
(コーディネーター:宮本節子)
  • 現場から / 細金和子 (婦人保護施設長)
  • 法学から / 中里見博 (福島大学准教授)
  • 性教育から/浅井春夫 (立教大学教授)
主 催ポルノ被害と性暴力を考える会
後 援日本ユニセフ協会、東京都社会福祉協議会、全国女性シェルターネット、株式会社福祉新聞社
賛同団体 売買春問題ととりくむ会、ポルノ・買春問題研究会、社会福祉法人森の会・広域地域ケアセンターバオバブ、社会福祉法人けやきの杜、性を語る会、社会福祉法人わしの里・大浜工房、特活)ちゅらネット、社団法人セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン、人身売買禁止ネットワーク、NPO法人みのり会、ウィメンズカウンセリング京都、NPO法人SEAN、NPO法人女のスペース・おん、社会福祉法人子どもの虐待防止センター、全国婦人保護施設等連絡協議会、東京都社会福祉協議会児童部会、東京都社会福祉協議会婦人保護部会、日本キリスト教婦人矯風会、特定非営利活動法人女のスペース・ながおか、救世軍本営、東京母親大会連絡会、特定非営利活動法人博多ウィメンズカウンセリング、特定非営利活動法人男女平等参画推進みなと、WESTらいず、ECPAT/ストップ子ども買春の会、多摩でDVを考える会、社会福祉法人ベテスダ奉仕女母の家、社会福祉法人慈愛会、社会福祉法人愛隣会(母子生活支援施設:氷川荘、知的障害者更生施設;目黒恵風寮、知的障害者通所施設;あゆみ園、児童養護施設;目黒若葉寮、のぞみ保育園)特定非営利活動法人アーシャ、PEACE暴力防止トレーニングセンター、特定非営利活動法人フェミニストカウンセリング神戸、特定非営利活動法人サバイバルネット・ライフ、女性サポート・おおさか、FTCアドボカシーセンター、認定特定非営利活動法人ウイメンズハウスとちぎ、特定非営利活動法人フェミニストサポートセンター・東海
お問い合わせFax024−548−8324(担当:中里見)

その他

※「理論社問題」に対するアクションは、上記「ポルノ被害と性暴力を考える会」によるもので、APPのアクションではありませんが、同会にAPPメンバーも参加しているため、同会独自のHPが設けられるまでのしばらくのあいだ、便宜的にAPPのHP上に「理論社問題」に対するアクションのページを設けます。

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