「来るべき政府との戦いに備え、新たな武器を購入した」
アフガニスタン北部バグラン州プルハムリ。ここに支部を置く政治組織「イスラム協会」のサロジディン幹部(36)が言い放った。
イスラム協会は、アフガンに侵攻した旧ソ連軍と戦ったムジャヒディン(イスラム戦士)の集まりで、93年に内戦が本格化した時に大統領だったラバニ氏が総裁を務める。旧北部同盟のタジク人司令官、マスード将軍(01年9月暗殺)も所属し、先の大統領選ではマスード氏の側近だったアブドラ元外相の最大の集票基盤だった。決選投票をボイコットし、2期目のカルザイ政権を「非合法」として対決姿勢を強めるアブドラ氏。その支持勢力の動きは、新たな不安要素をもたらしている。
プルハムリは、中央アジアからの北大西洋条約機構(NATO)軍の輸送路が合流。さらに首都カブールと周辺地域の電力の8割を支えるタジキスタンからの送電線が経由する戦略的な要所だ。バグラン州では反政府勢力タリバンがNATO軍やインフラ設備を狙って攻撃を活発化させており、カルザイ政権はこの地域でタリバン側との「対話」を急いできた。
一方、サロジディン氏は武器購入について「DDR(武装解除・動員解除・社会復帰)と引き換えに政府から渡された現金などが資金源になった」としたうえで、「調達先はタリバンと(反米闘争でタリバンと連携している軍閥)ヘクマティアル派だ」と明言。「敵の敵とは利害が一致する場合もある」と語った。
イスラム協会としては、米国がアフガンからの「出口戦略」を模索し始めた今、内戦の再来をにおわすことでカルザイ政権を揺さぶる狙いがある。サロジディン氏は「我々はDDRに応じたのに、政府と国際社会は最多民族のパシュトゥン人地域に開発の重点を置きすぎた」と不満の原因を吐露した。
戦争の長期化と大統領選の確執が呼び水となった新たな混乱。和平合同委員会のユーサフィ事務局長は「和平実現には地域開発も含めた総合的な事業が必要だ。国際社会はこれまでの戦費と命の損失を振り返り、戦闘より和平に金を使う効果を考えてほしい」と訴えた。【プルハムリで栗田慎一】
毎日新聞 2009年11月22日 東京朝刊