【エルサレム前田英司】イスラエル政府は17日、東エルサレムにあるユダヤ人入植地「ギロ」で、新たに住宅900戸を増設する計画を承認した。中東和平交渉の再開が暗礁に乗り上げる中、イスラエルの入植活動に反発するパレスチナがさらに態度を硬化させるのは必至だ。この増設計画には米国も難色を示していた。
イスラエルはエルサレムを「永久不可分の首都」と主張し、67年の第3次中東戦争で占領・併合した東エルサレムでの住宅建設を「入植」とみなさない。最大紙イディオト・アハロノトによると、ミッチェル米中東特使は16日、ロンドンでイスラエル当局者と会談した際、ギロの増設計画に懸念を示していたが、これをはねつけた形だ。
AP通信によると、パレスチナ解放機構(PLO)のエラカト交渉局長は、増設承認が「(イスラエルとの)和平交渉の再開が無意味であることを示した」と非難した。一方、ギブス米大統領報道官は「交渉再開をますます困難にする決定であり、失望している」と述べた。
パレスチナは入植活動の「完全凍結」を交渉再開の前提に掲げる。「頼みの綱」のオバマ米政権がイスラエルの譲歩を引き出せずに行き詰まる中、自治政府内では最近、イスラエル占領下のヨルダン川西岸と東エルサレム、ガザ地区を領土とするパレスチナ国家の承認決議採択を国連安全保障理事会に求める動きが強まっている。
AFP通信などによると、アッバス自治政府議長は17日、訪問先のカイロで記者会見し、和平交渉の停滞に言及したうえで「現状維持は解決策でない。だからこそ(国家承認に)動く」と強調した。
ただ、米国や欧州連合(EU)は「交渉を通じた解決」を求め、パレスチナの一方的な国家承認の動きには反対している。イスラエルは「我々も一方的な手段で対抗する」(リーベルマン外相)とけん制した。
毎日新聞 2009年11月18日 10時41分(最終更新 11月18日 12時41分)