広島県の山中で島根県立大1年、平岡都さん(19)=島根県浜田市=の遺体が見つかった事件で、平岡さんが消息を絶った先月26日から3週間の今月16日、平岡さんが帰ろうとしたであろう帰宅路を、同じ時間に私もたどった。平岡さんはその時、どんな思いだったのか--。【広沢まゆみ】
あの日、ショッピングセンターの防犯カメラに平岡さんが退店する姿が映っていた。その姿を頭で追って店を出た。すると、すぐに警察官から呼び止められた。目撃証言を根気強く集めているのだ。
約200メートル歩くと国道9号だ。ここまでは車も多かったが、国道を横切って川沿いに入った住宅街は人もまばらで、防犯カメラ付きの建物もない。この道ならほとんど人に出会わないかもしれない。
やがて神社の参道になり、鳥居をくぐると約150段の長い石段が延びる。街灯が頼りだが、両脇が林で、人の気配は消えた。しかし、捜査本部によると、平岡さんは普段、この付近を通っていた。
「一人で歩くのは怖かっただろうな」。体感治安の悪さと暗さに足がすくむ。風が吹くと林がざわめき、何かあって叫んでも、近くの民家に届きそうにない。石段を上り切ると境内で、建物のかげに人を引きずり込むスペースもあった。
その先には舗装された山道が数百メートル続き、寮まで1キロ余りの上り坂だった。山道ではすれ違う車も少なく、歩く人はいなかった。山道の終点は国道9号の高架と交わる。道が広くなっているのに人けがなく、トラブルがあっても国道の走行音で音がかき消されてしまうだろうと思った。
寮まで2キロ弱。長い上り坂のせいで約40分かかった。「バイトで疲れた体でこんなきつい道を帰っていたなんて……」。海外留学を夢見て努力をしていた平岡さん。私と4歳しか違わない。そんな平岡さんが非道な犯行で青春を奪われたのはやり切れない。
この日、ルートの5カ所で検問に遭遇した。何としても犯人を捕まえてほしい。心から願った。
2009年11月19日