藤原あすか(大橋のぞみ)は小学4年生、9歳の少女。藤原家は両親と小学6年生の兄・直人(鈴木宗太郎)の4人家族。父・裕治(勝村政信)は海外単身赴任中。
今日はあすかの10歳の誕生日。楽しみなはずの誕生日。しかし母・静代(木村佳乃)は仕事を終え、夜遅く家に戻る。誕生日のことも忘れ、あすかを目の前にしても「産まなきゃよかった」と言い放つのだった。あすかは息を飲んだ。あすかは自分ののどを激しくつまんだ。もう既に何度もつまんで赤黒いアザになっているのどを。「ママひどいっ!」と叫ぼうとしてがくぜんとする。あすかはこの日から声を失ってしまったのだった。
静代はそのことに気付かぬまま、仕事や直人の勉強のことを気にかけるばかり。
あすかの異変に気づいた小学校担任の黒沢修(田中裕二)が静代を呼び出す。黒沢は、しゃべれないのにあすかが必死に母親に愛されるようないい子になりたいと口を動かしていたと静代に伝えた。しかし静代は一向に娘の悲鳴に耳を傾けようとはしなかった。職場でも年下ながら仕事上先輩となる星なつき(星野真里)に、仕事上の問題を指摘されるにとどまらず家庭の問題にまで口出しをされ、静代はいらだちをつのらせるのだった。兄の直人もあすかが「生まれて来なきゃよかった」と必死に口を動かす姿を目撃し衝撃を受け、あすかの味方になることを心に誓うのだった。
あすかは長野の祖父母の元で暮らすことになる。長野の風景―空の青さ、季節ごとに色づく山、草花のゆれる野原、小さな生き物が息づくあぜ道・・・そして祖父・道夫(伊東四朗)、祖母・正子(加賀まりこ)の愛、そして近くに住む孤独な老人・野々宮大悟(三國連太郎)の優しさに包まれて、あすかの心は少しづつ安らいでいくのだった。しかし声はなかなか戻らない。そんなある日、あすかは静代の日記を見つけてしまう。そこにはあすかが知らなかった静代の心に大きな影を落とす悲しい生い立ちがつづられていたのだった・・・。 |