厚生労働省がニートと呼ばれる若者の自立・就労支援として続けてきた「若者自立塾」が、行政刷新会議の事業仕分けで「廃止」とされた。国に運営を委託された各地のNPO法人代表らは仕分け人と官僚の攻防をネット中継で食い入るように見つめ、結論に肩を落とした。
自立塾では学校や社会でつまずいて人とかかわれなくなった若者が3カ月間の合宿で仲間や自分と向き合い、生活・就労訓練を受けながら社会へ踏み出していく。廃止の主な理由は「コストに対し成果が小さすぎる」だった。
全国28カ所で事業費約3億円、確かに昨年度も1200人の定員に490人しか来ていない。でもそれは自己負担が大きいためとも言われてきた。モデルとなった米国の制度は全額公費だが、自立塾は約30万円払うと知り、あきらめる親もいるという。
修了者の8割以上はニート状態を脱し、就労率は62%。決して低くない。通所型の事業のほうが利用者は多いが、合宿型の塾は日常生活すらままならない若者の「最後のとりで」と呼ばれ、親子関係に問題を抱えた家族が親離れ、子離れする機会にもなった。巣立った若者たちは納税者となって社会を支えている。スタッフとして残る人もいて、塾が雇用の場でもあった。
「むしろ問題は修了後の受け皿の乏しさ」と、千葉県で自立塾を運営する二神能基(ふたがみのうき)さん(66)は言う。「自立イコール幸せ、という希望がなければ若者は来ない。いま社会に出てもワーキングプアになるしかないのが現実です」
刷新会議もニート対策の重要性は認める。ならばもっと有効な代替案を示すべきだ。ただし人を育てる事業の成果はそう簡単には表れない。
毎日新聞 2009年11月18日 0時05分
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