<リプレイ>
● 『『イラッシャイマセー!』』 どぱらたたたた。 マシンガンの嵐が飛ぶ。 実に威勢のいい従業員さんたちである。 熱烈な歓迎を受け、子供達も嬉しそうに「うわあ!」とか「避け、避けーっ!?」とか声を上げて喜んでいる。 ちなみに、従業員さんは宇宙服ルックだった。 あと従業員さんは地縛霊だった。
● 墜落したスペースシャトル。 怪獣に完膚なきまでに破壊された防衛軍基地。 そんな物が散見する、アミューズメントパーク……の、跡地。 面積だけは無駄にある広場の真ん中に、能力者たちはいた。 「昔は閉園後の遊園地って怖かったけど、お化けの正体がゴーストってわかると、意外と平気になるわねー」 なんて気軽に嘯く七転・火蜂(真夜中の雀蜂・b50473)だが、微妙に笑顔が引き攣っている。 「ねーさゆりん、アメリカの遊園地ってやっぱスケール大きいのかしらー」 「みたいね。行った事ないけど」 あ、会話できる。 そんな些細な事に、なんだか妙に嬉しくなってしまう能力者達だった。 だって前回が前回だし。 幸いなことに、今回はさほど緊張してはいない様子。 ならばと、三郷・砲子(空洞貫通・b62366)は、小粋なジョークを試みる。 「サユリは雷属性の左を持っているんでしょ?」 「?」 怪訝そうなサユリを観察する、轟・雷(雷霆の娘・b50947)の双眸。 サユリのフード。 ピンクの水玉。 ……うん、まあ。 ねえ? 話を戻そう。 「こういう昭和の近未来モノは好きなんだけどな」 苦笑するのは津軽野・林(流浪の三味線ギタリスト・b17700)だ。 『過去が夢見た未来科学』VS『現在に希望をもたらす先端科学』。 そして、件の敵というのが、 『『ヨウコソオコシ下サイマシター!』』 こいつらである。 強力な残留思念から発生したゴースト――その数は8。 「……今回、数が多い、ね」 最後衛、サユリの隣に立つ風嶺・桜花(使役ゴーストの名前はとりさん・b04465)が、小さく眉根を詰めた。 「……とりさん、サユリ、皆、頑張ろう、ね」 頷くサユリに、風宮・渉(風と月のエアライダー・b65488)は、ある決意を固めていく。 (「ボクがしっかりしないと……」) 初めての高難度依頼。 正直に言えば、不安だ。緊張だってする。 それでも、サユリだって緊張しているはずなのだ。 逆巻く風のインフィニティエア。 同時、弦元・すず(プリズムシャドウ・b28534)の周囲にも、リフレクトコアが展開する。回復を本分とする彼女の常套手段だ。 「サユリさん、まずは」 「分かってるわ」 遮るサユリの声は……なんだろう、どことなく得意そう。 「貴方達を見て学んだもの。まずは攻撃力の増強を図るために、強化エンチャントを施す――」 そこで言葉を切って、皆を見る。 「のよね?」 「おー!」 この子、学習してる……! つまり戦術。 定石とも呼ばれるものだ。 実戦経験の乏しいサユリにとって、必要不可欠なものである。 それは非常に喜ばしくて、褒めてあげたい所なのだが……、 「残念だけど、今回は少し違う」 ぴたり。 サユリの動きが停止した。 どういうこと? 無言のプレッシャーが注がれるのを感じながら、如月・夢(夢喰い・b35493)が説明する。 「相手の数が多いから。それに」 妖獣を見て、 「全体回復を持っている敵もいる。だからまず、範囲攻撃ができる人は」 「最初に範囲攻撃を……それから自己強化をかけてもらいたいんです」 うまくすれば、回復で妖獣の動きを御せるかもしれませんから、と。 言葉を継ぎ、柔和な笑みを見せる天宮・羽衣(双月を見守りし第三の月・b43783)。 基本はあくまで基本。 状況に応じて、最適な戦略を組み立てる。これも大切なことだ。 「大丈夫ですよ。敵は多いけど、こっちは13人もいるんですし」 キラリと眼鏡のレンズが光る。 笑顔の羽空・ひなた(幸せの運び手・b57477)は、あくまで気軽に、原稿用紙の束を握る。 それは林も同様だ。 夢も悪夢の馬を顕現させ、はっと気付いた様子のサユリが、彼らに倣って右腕を構え――、 「先手必勝!」 『……!?』 第一撃目から全力で。 広範囲を巻き込む攻勢アビリティの連続が、迷うことなく敵陣へとぶち込まれた。
● 策が成った、と言うべきか。 『クコケー!?』 読み通り。妖獣どもが慌てた動きで、バッサバッサと回復役に回っている。 ……なに、構いはしない。 「――ッ」 羽衣が鋭く、宇宙服へと詰め寄って。 ……本来野蛮なハズの行為を、美しいと感じてしまうのはどういう理屈か。 それほどに、彼女の剣筋は淀みなく。 また、軽やかに踊った刀身は、凛とした涼やかさに満ちていた。 敵は多い。 けれど。 「油断しなければ、必ず前回と同じ結果が得られるはずです。皆さん!」 「うん、頑張ろう! おー!」 元気よく返事を返して、火蜂が後に続き、 「ってそういえば今日は前衛だった……!」 速攻で涙目に。 だって前衛である。超至近である。普段は後方支援に徹する彼女のこと。そりゃあ多少ビビリ入るのも仕方がない。 『コールドスリープ一名様ゴ案内デース!』 『『ヨロコンデー!』』 「うわーん役割的に仕方ないけどやっぱり怖いー!?」 ドゴス、と。 割と容赦ない一撃は、しかし宇宙服のものではない。 砲子だ。虎紋覚醒から繋げた震脚の衝撃が大地を揺るがす。 ――『機を見るに敏』という言葉がある。 この時の雷がまさにそれだ。砲子の攻撃を受けた宇宙服にすかさずにじり寄り、火蜂が呪詛呪言を叩き込むのに合わせて、逆側から斬りつける。 ――必勝を期すは、友から借り受けた長剣『架刑の二』。 なるほど名剣である。 この一時、闇に染まった純白の刀身は、快音と共に易々とゴーストを斬り払ってのけたのだから。 「大丈夫ですの?」 「なんとかー……」 まずは雑魚を狙い、敵の頭数を着実に減らしていく。これも定石の一つ。 無論、それを黙って看過するほど、敵も甘くはないようだが。 敵陣最奥。 この、廃墟と化した遊園地を支配する、強大なゴーストが。 その忌まわしき姿を誇示せんと、胸を張り、居丈高に腕を振り上げる! 『ピガー!』 「……」 『……ガピ?』 安っぽかった。 浪漫あふれる、むしろ浪漫しかないような威容が。 チュイーンと音を立てて目から光線を発射した。 で、そのままの状態で首を振る。 当然ビームもついてくる。 阿鼻叫喚。 わー!? とか叫びつつ回避したり防御失敗したりモロに食らって存外な容赦のなさにワナワナ震えたりしながら、何とか立ち直って武器を構え直す能力者達。 「く……いま回復します!」 呻いて、渉は浄化の風を発動する。 本来なら攻め手に加わるつもりだったが、そうも言っていられない。パラノイアペーパーの代償、アンチヒールを解除する目的もある。 そうだ。 全体回復は、何も敵だけの専売特許ではない。 こちらにも、信頼の絆で結ばれた有能な癒し手がいるのである。 夢が張り巡らすサイコフィールド。 すずが奉じる赦しの舞。 ともに背を預けるに足る、頼もしい後方支援。 「落ち着いていこう、サユリ」 癒手の一人、『夢喰い』の夢が言う。 「大丈夫。みんな、あなたを信頼してるから」 「……。そ」 目を瞑るサユリ。 相も変わらずそっけない。 「私の役目は……一緒に依頼に行く人たちが、明日も普通に学校に行けるように、回復でバックアップすること」 癒手の一人、『プリズムシャドウ』のすずが尋ねる。 「サユリさんは、自分自身をどんな役回りだと思う?」 「それは」 右手をフードに伸ばし。 「見てれば、分かるんじゃない?」 ほんの微か、右目が見える程度に、めくった。 「――サユリさん、それ」 極小の、文字列。 奇妙に整然とした文字の洪水が、彼女の眼を高速で流れている……! 「これが私の――科学人間の、2つ目の力」 『高速演算プログラム』。 使用者の行動、その全てを最適化。最小化。そして高速化するアビリティ。 「ただの自己強化よ」 冗談めかして、小さく肩を揺らす。 「これでいいのよね? 私の記憶違いでなければ」 「あ……定石」 「そ」 状況は加速する。 それこそ、プログラムに頼るまでもなく。
● 「ふさ吉先生のハートフルメルヘン!」 わー♪ と笑顔で拍手する皆さん。 以下あらすじ。 昔々ある所に、呪われた黒猫がおりました。 黒猫は赤頭巾少女に出会い、旅に(中略)なんと、呪いが解けたのです! 全8話(弾数)にわたる超大作である。 ただし画力は棒人間。 「ふさ吉」 呼ばれた林が振り返れば、サユリがぺらぺらと何かを捲っていた。 「結構おもしろい」 「あ……そ、そっか、ありがとな?」 「うん」 ……。 いやいや。 ずるいですよー! などと抗議して、ひなたも原稿を押しつける。 「ふふふ……サユちゃんを主人公に少女漫画で仕立ててみました」 とまあ大変なごやかな風景ではあるが、一応まだ戦闘中。 戦闘開始直後から、ひたすらに連打連打のパラノイアペーパー。 ボスにはとんと当たらなかったが、雑魚に対しては十二分。 「右側の宇宙服ぽいの2体巻き込んでGO!」 「もきゅーっ」 元気よくパチパチ火花を発動するモラさん。 サユリの電撃も空を走り、続けざま、桜花の雑霊弾が同じ標的を狙い撃つ。 「これで最後ですね」 砲子の白虎絶命拳が炸裂した。 最後の宇宙服が消滅する。 じりじりと範囲攻撃で削り、その間に単体攻撃を一点集中。各個撃破を繰り返す。 ……どうやら、競り勝ったのは能力者達の方であったらしい。 「サユリの攻撃も俺の攻撃も、威力は弱いが意味のある一手だからな」 頑張ろうなと、林は笑顔で。 「……とりさん、頑張って」 主の期待に応えんと突撃する。 渾身の体当たりによろめく妖獣。 だが回復はしない。そんなものはもう捨てた。 代わりとばかりに広げる翼は、雄々しく、纏う炎を猛らせて。 『コオオオ、ケェェ!』 特攻した。 ――孤立する者を狙う妖獣の特性。 換言すれば、孤立している者がいない場合、誰を狙うか分からないという事。 「砲子さん!」 「!?」 避ける間もない。 散々ボスの攻撃を受け続けた体力では、とてもじゃないが耐えきれない。 即座に夢が前衛の穴を埋めるが、 『ガガガピー!』 全身を打ちのめす衝撃に、すずが一瞬、息を詰まらせる。 「……!」 見れば。 ロケットの勢いで飛んできた巨大な腕に、体を鷲掴みにされていた。 回復手は動けない。 烈火の如く突進してくる妖獣たち。 迎え撃つは雷と羽衣。 大気を焦がし、轟然と迫りくる炎の魔鳥を、瞳を鋭く引き絞り――、 銀の髪が踊る。 鮮やかな回避運動。 防具の特性を最大限に利用し、羽衣が紙一重で回避に成功。 ついで、 「――っ! なんとか、止めましたわよ」 雷も、苦痛に顔を顰めながらも、その刃で受け切った。 後先考えない力の代償。へなへな倒れこむ妖獣を見て、桜花がサユリに声をかける。 「……鳥が瀕死だ、ね。……サユリ」 「残りの技、使ってもいいぞ」 フォローするから、と。 林の言葉に顔を上げる。 力強く頷く能力者達。 ――頑張れ。 「……言われなくても」 前に出る。……予想していた事だ。最後の技は、きっと近接攻撃だろうと。 「これが」 だが次の光景は、果たして想定の範疇か。 彼女の拳を覆うように。 螺旋を描いて展開する、あまりに緻密な文字列の渦。 誰が知ろう。これこそがあらゆる『怪異』、一切の『非常識』に厳然たる停止を命じる、『詠唱停止プログラム』だと。 全ての『常識外』を強制停止させる拳を、豪快に――! 「三つ目の、力……!」
すかっ。
豪快にからぶった。 かすりもしなかった。 「……」 はーーずーーしーーたーー!? 現実は非情である。 見せ場だからって成功するとは限らないのである。 なんかサユリが両手で顔を覆って「うわーうわーうわー」とか全力落ち込みモード突入しているのだが、それはそれとして瀕死の妖獣はモラさんとひなたにサクッと仕留められていた。 残りの鶏を血祭りに上げていく仲間を苦笑で見守り、渉は励ますようにサユリに言う。 「相手の隙を見極めて撃つ……」 自分も先輩から教わった事を、伝えようと。 「たとえ破れかぶれに思えても、確実に当てていくんです!」 ボクもまだまだ未熟ですけどね、なんて照れたように微笑んで。 という心温まるエピソードを台無しにすべく、地縛霊ロボット風味が猛威を奮う。 『みゅおおお〜〜ん』 すげえ頭悪そうな擬音とともに、怪音波がとりさんを襲う。 が、いくら見た目アレでもボスはボス。 瞬時に混乱したとりさんが、能力者に突撃を――かける直前。 「以合成神」 消える。 ゴースト合体。 いまや使役ゴーストと一つになった桜花は、充溢する力に、喉を震わせた。 「央華、見参――!」 持てる力の全てを以て、あのふざけたゴーストを打倒する! バチィ、という音。 魔弾の着弾を視認して、林が『若狭』を握りしめる。 反撃の熱光線。その威力は絶大だったが、すずとひなたが即座に癒す。 もはや砲台と化した火蜂が呪詛呪言をぶち込むのと、夢が漆黒の駿馬を奔らせるのがほぼ同時。 よろめいた敵の体を、猛烈な上昇気流が空中に固定する。 『ガピー!?』 「今です、サユリさん!」 ゆらりと、右腕を構える。 名もなき技に、新たな名を。 我が事のように頭を捻り、皆が目を輝かせて提案してきた数多の名前。 それを――満を持して宣言する! 「さゆりんパルスほ――!」 「「!?」」 え。 マジで? よりにもよってソレですか。 いいんですか? いいんですかそれで!? 後悔しませんかサユリさーん!? 「……冗談よ」 「ですよね」 口にしてから恥ずかしくなったのか。覗く頬が仄かに赤い。言わなきゃいいのに。 ……未曽有の危機は脱した。 コホンと小さく咳払いして、サユリはちらりと、視線を火蜂に。 え? と目を丸くしたのも束の間。その意味を即座に悟り、 ともに呼ぶ、その技の名は。
「「ライトニング、ヴァイパー!」」
雷の蛇が突き進む。 着弾。 食い破り、 貫いた。 『ピ――ガ、ガガガ……!?』 ぐらり。 仰向けにぶっ倒れ、最後の地縛霊が消滅した。 ……。 さすがに爆発はしなかったね!
● 小さく詰んだ瓦礫を前に、静かに合掌。 「……想いが、天に還りますよう、に」 しばしの沈黙の後、顔を見合わせ、帰途につく能力者達。 安堵に頬を綻ばせて、お疲れ様と笑い合う。 「閉園する前に来たかった」 なんて呟きながら、難しい顔で古いブリキの玩具と睨めっこ。 「日本の遊園地もいいよー」 その時はまたお弁当、どう? 指を立てた提案に、 「考えとく」 やはり、そっけない返事だった。 ――第二段階、完了。
新たなアビリティが判明しました! NEW! 新たなアビリティが判明しました! NEW! アビリティの名称が一つ決定しました! NEW!
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参加者:10人
作成日:2009/11/20
得票数:楽しい7
笑える5
カッコいい1
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冒険結果:成功!
重傷者:三郷・砲子(空洞貫通・b62366)
死亡者:なし
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