【萬物相】大声で泣き叫ばない日本人

 2004年、新潟県でマグニチュード6.8の大地震が発生した。1995年の阪神・淡路大震災に比べると、やや弱い地震だったが、死者は68人、負傷者は約4800人に達した。この地震で、当時2歳の皆川優太ちゃんが、母親、3歳の姉とともに車ごと崩れた土砂の下敷きになったというニュースに接し、日本中がハラハラしながら見守り、母子の救出を願った。このとき、優太ちゃんの祖母がメディアのインタビューに対して語った言葉が印象的だった。「元気に家を出て行った優太が、お母さん、お姉ちゃんと一緒に、元気な姿で帰ってくるのを待っている。皆さんに迷惑をかけ申し訳ない」

 韓国人ならこんなとき、大声を上げて慟哭(どうこく)し、周りの家族が支える姿が、リアルタイムで放送されるものだ。だが、日本人は、自らに振りかかった不幸を嘆く前に、他人が自分たちの不幸を案じ、気を遣ってくれることに対し、すまないという気持ちを見せる。イラクで武装勢力に拉致された香田証生さんが、生還を願う多くの日本人の願いもむなしく殺害されたときも、家族は「迷惑をかけ申し訳ない」という声明を発表した。

 「他人に迷惑をかけない」という鉄則は、日本人が幼いころから学ぶ社会生活の第一の基本原則だ。他人に不快感を与え、他人に心配をかけ、気を遣わせることを、すべて「迷惑」と表現する。日本人のこうした態度は、葬式の場でも見られる。韓国の葬式では、周囲の人たちが喪主に対し、大声で泣くよう迫る。そうすることが、故人の魂を慰め、肉親を失った悲しみを表現する方法だと信じているためだ。だが、日本の葬祭場ではそのような様子は見られない。自らが悲しみを背負ったことに対し、周囲の人たちが心配し、慰めてくれること自体が「迷惑」だと考え、悲しみをさらけ出さないことが美徳だ、とする考えが根底にある。

 今月14日、釜山市の室内実弾射撃場で起きた火災で命を落とした日本人観光客の遺族たちが、悲しみを抑えようと努める様子が報じられた。楽しみにしていた海外旅行に出かけ、その旅先で、業者のずさんな管理や施設の不備によって火災が発生し、不慮の死を余儀なくされた。遺族にとってみれば、どれだけ悔しく悲しいことだろうか。ところが、日本人観光客の遺族たちは、沈痛な表情を浮かべながら、ひざをついて冥福を祈ったり、家族同士で座り込んで涙を流したりする程度だったという。

 火災で日本人観光客が犠牲になったことに対し、韓国政府がすぐに謝罪したことは、見事な対応だったと思う。立場を変えて、日本を訪れた韓国人が7人も、不慮の事故で命を落とした場合、どんな状況が展開されるかということを考えれば、その思いはなおさら強くなる。日本人観光客の遺族たちは、悲しみをあらわにし、怒りをぶちまけることをしなかった一方、領事館を通じ、要求すべきことはしっかり要求したという。

金泰翼(キム・テイク)論説委員

朝鮮日報/朝鮮日報日本語版
関連記事 記事リスト

このページのトップに戻る